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第五百六十八話

「……」

「どうしたんだ?秀星」

「いや。回収班が作業するとき、ほかの物体に触ったりするのかな?って思って、食器棚の裏に新品のエロ本を置いておいたんだよ」

「ほうほう」

「明らかに位置がズレてるんだけど……」

「ハッハッハ!」

「しかもDVDの袋とじが開封されてるんだけど、めっちゃきれいに」

「「……」」


 ラターグが爆笑するなか、エーベルとライザーは複雑な表情である。


「まあ秀星君。こういう回収班は大体神兵がやるんだけど、彼らも人間だからね。まあそこのところは許してあげなよ」

「俺としてもどうでもいいけどな。正直なところ」


 秀星はエロ本をとりあえず保存箱の中に入れておいて、ソファに座った。


「さてと、これからどうするかだねぇ。基本的に、ギラードルのやり方には反対するってことになったけど、そもそもどこに拠点を構えているのかもわからないし、そもそも送られてくる神が毎回多いんだよなぁ」

「基本的には迎え撃つしかないけど、対処療法にしかならない。せめてどこにいるのかがわかればいいけど……」


 ラターグがとりあえず方向性を提示するが、エーベルが言う通り、そのゴールがまだどこにいるのかほぼわかっていない。


「思えば、これまで攻めてきた神は、全て拠点の場所を知らない神。または、記憶処理を受けている神だったな。拠点の場所だけは分からないように送り付けてきているし……」

「情報操作に関してはかなり徹底してるな。しかも場所が全然特定できないし……そもそも全知神しか知らないんじゃないかってくらい情報が全然なかった」


 ライザーと秀星としても、これまで戦ってきた神の状態を思い出して、らちが明かないといえる状態だ。


「どう思う?」

「おそらく、しばらくの間これが続くと思う」


 神々が何かを計画しているときに『とりあえずやっておこう』と思うことはいくつかある。

 その中の一つは、『言葉で勘違いさせて神を送り付けて、それを捕縛させて間引きする』ことだ。

 計画にはゴールがあるが、そのゴールにたどり着いたとして、不適切な人材ばかりになっていると計画が始まらない。

 ギラードルは『財政出動派の政府』を作ろうとしているわけだが、ビジネスセンスでしか運営できないものが内部に多数いたら、政府の無駄を削ろうとして緊縮財政になる。


 そして、ギラードルが『反緊縮派』であるということは、全知神レルクスから聞かなければわからないことだった。

 他のどの情報源を見ても、ギラードルの思想は分からなかったのである。

 まあどうせ世界征服でも考えているんじゃないか。といった漠然としたことを考えていたが、それが達成した後で何をするのかがわからなかったのだ。


「ギラードルの派閥の中でも、ギラードルの意見に正面から賛成することができる子は少ないだろうねぇ。いや、認めたくないって言いかえた方がいいかな」

「?」

「神ってね。天界でデフレになってても、基本的に問題が発生するわけじゃないんだよ。圧倒的な『技能』があるわけだから、天界にいる人間の意思なんて全部無視しても、自分たちだけはその技能において圧倒的な優先権があるから……ごちゃごちゃいうのはやめようか。簡潔に言えば、たとえデフレだろうと何だろうと、地球なら神器を持ってる子が強いでしょ?天界では神がいる。ただそれだけの話」

「ふむ」

「要するに、ギラードルの政府がもしも天界全てに発展と幸福をもたらした場合、今までの神は、『デフレを長期間放置し続けた無能』の烙印を押されるんだよ。ていうか押されてもいいと思うけどね」

「ラターグも放置してるよな」

「僕がそんな評価を気にするタイプに見えるかい?ただでさえ、一兆年単位でベッドでダラダラゴロゴロしてるんだ。常識的に考えて終わってるでしょ」

「開き直ったバカが最強だってことはよーくわかった」

「ブーメランだね」

「ああ。しかも特大だ」


 秀星は溜息を吐いた。


「話を戻すと、ギラードルは現在、自分の思想に合わないものを優先的に送り付けてきてる……秀星君、ちょっと来てるみたいだから適当に捕まえておいてくれない?」


 ライザー以外の三人が、神の接近に気が付いた。

 というわけで、ラターグがそういって、秀星は頷く。


「ちょっと運動してくる」


 秀星はリビングから出て行った。


「で、これからどうするべきだと思う?」


 ラターグがあくびをしながら言った。


「今は、とりあえず襲撃や暗躍を考えている神を倒すしかない。それと同時に、ギラードル様がどこにいるのかを調べることが必要だ」

「……その場合、情報収集はライザー君がやることになるね」

「え?」

「だって、神々に対する感知力も撃退能力も、この四人の中で最下位だよ?」

「……」

「まあ、そうなるのも無理はないと思うけど、とりあえず情報収集能力はちゃんとあるでしょ。君はそっちから攻めていくべきだね」

「……わかった。ただ……神々を相手にするとして、僕には何が足りないんだろうな……」


 ライザーがちょっと落ち込んでいる様子だ。


「才能もあるし、間違った努力をしていないし、運も特別悪いわけじゃないと思うけどねぇ」

「じゃあ、いったい何が……」

「……『常識』だね」

「常識?」

「神を相手にするうえで何をすればいいのか。知識でもなく知恵でもなく、常識が足りないね」

「……常識って何なんだ?」

「知識や知恵っていうのはね。『自分が言葉にできること』を並べただけなんだよ。常識っていうのは『なんとなく』で決まってるあやふやなものだから、神にだって言葉にすることはできない。『なんとなく』に根拠なんてないしね」

「だから、その『なんとなく』の部分がわかるようになれば……」

「まあ多少は何とかなるんじゃない?あくまでも多少だけどね」


 ラターグはそれを言うと、ゴロンとソファに寝っ転がった。

 どうやら、話すのは終わりらしい。

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