第五百六十三話
ラターグが電気神のところに来て、ラターグがスマホで連絡すると、『それじゃあ離れようか』という感じで移動した。
「さてと、秀星君。君に一つ重要なことを教えておこう」
「なんだ?」
「電気神が平等神の派閥ではない。ということだよ。五穣年前だけどね」
「参考にならないだろ」
即答する秀星。
ライザーは『秀星は穣という単位のことを知っていたのか』と変なところに驚いていたが、それは置いておこう。
「ただ、派閥ってどこの辞書にも書かれてないし、俺にもわからないんだよなぁ……」
「僕は金の動きだけで判断してるけどね」
「……資本主義なんだな」
「そうだね。ここ数兆年くらいデフレしてきてるけど」
「あ、そうなの?」
「日本と同じでバブル後に緊縮財政やってるから」
「あっそ……期間長すぎじゃね?別に俺には関係ないけど」
秀星はそれを聞いただけで『天界に希望を持つのやめよう』と思った。
「しかし、神の派閥か……電気神が平等神の派閥に加わる可能性は?」
「ゼロとは言わないけど……基本的に低いと思うなぁ」
「その低いと思う理由は?」
「基本的に神って、第一印象から変化することがほとんどないんだよね。だから、基本的に、一度派閥に入らないと決めた神の下には来ないんだ」
「なら……派閥の頂点に立ってる神同士で結託した結果、本来指示を受けないと決めた神に一時的に従うっていうパターンは?」
「頻繁にあるね。ああ、秀星君は、今回の裏にいるのが平等神だけじゃないって考えてるわけか」
「ああ。他にも神がいるなら、それらの問題は丸ごとクリアできるだろ」
「だね。そうか……派閥を作れるほどの他の神ねぇ……」
思い出すように唸るラターグ。
ただ……一瞬だけ眉がよったので、心当たりはあるようだ。
「ふむ、まあ、この話は置いておこうか」
露骨に話をそらし始めるラターグ。
これに対してはライザーも訝しげな眼を向けるが、ラターグはそういう視線や他人の考えをスルー出来るタイプなので、追及しても意味はない。
「さて、秀星君。気分を変えてダンジョンにでも行こうか」
「いや、話を変えるのヘタクソすぎだろ」
「フフフ。ヘタクソだろうとなんだろうと、話を変えることができればいいのさ」
「腹の中にいろんなものを抱えてなかったらそんなセリフ出てこねえぞ」
「秀星君はこういう話をするときちんと突っ込んでくれるからいいねぇ。僕、君みたいなのと話すのは大好きだよ」
「俺は嫌だ」
「……」
ライザーは『変な話に突っ込まれたなぁ』と思い始めたが、こうなるのがなんだか既定路線になっている気がしなくもない。
というより、秀星はそういう部分がイライラするのだ。単純に相性の問題だろう。
秀星の周りには、常識がない(本当の意味で)人間が多すぎる。
そのため、突っ込みスキルが低下すると話がまとまらないのだ。
そもそもまとまると思っている秀星が間違っている可能性もあるが。
「さてと、というわけでダンジョンに行こうか!」
「はぁ。わかったって……」
そして秀星は折れるのが速い。
……で。
「おりゃああああああ!」
「zzz……」
「ラターグ。お前から誘ったんだろうが!寝るんじゃねえ!」
ダンジョンでもラターグと秀星は絶好調であった。
「zzz……ふがっ、ん?いっぱい魔石集まったの?」
「集まってますよそもそも俺一人でいいんですからねぇ!」
モンスターを発見する感知力、攻撃速度。
ラターグが寝ている場合、秀星とライザーで比べることになるのだが、この二人で比べると秀星の方が断然強いので、ほぼほぼ秀星しか動いていない。
「秀星君って苦労人だよね」
「一連の騒動が終わったら家から叩き出してやるからな……」
メラメラと燃え上がっている秀星。
「うぅーん!さてと、僕もそろそろ動こうか。モンスターどこだろうなぁ……おうっ!」
突如、地面から出てきた槍がラターグのケツにぶっ刺さる。
「「……」」
汚いものを見るような目を向ける秀星とライザー。
「お。おおおお……」
ジャージ姿でケツを抑えて悶絶するラターグ。
出てきた槍はそのまま鎮座しており、最高神にダメージを与えた罠として賞を贈ってもいいと思った秀星だが、まあいいとした。
「なにしやがんだゴルア!」
珍しく怒った様子で槍を蹴って砕くラターグ。
最高神のため、単なる蹴りでも鉄の槍が普通に砕ける。
「くっそおおおおお。こんな初歩的な罠にこんな形で引っ掛かるとは……」
秀星は『くっそざまあねえな!』と思っていた。
「いつつ……秀星君。めちゃくちゃいい笑顔だね」
「当然だ」
秀星は『実は録画してるからな。弱み握るためにあとでコピーしておこっと、沽券にかかわるし』などと考えていた。
ラターグ、哀れである。




