第五百四十一話
「ふっふっふ、秀星君。僕はすでに、破壊神をとらえてきたぜ!」
「人の家のソファでダラダラしてなかったらまだ説得力はあるんだけどな」
「まあまあ、君のチームメンバーである雫ちゃんも同伴だったし、君が知っている神の一人である創造神ゼツヤも一緒だったからね、証人はいっぱいいるよ」
「そうか。まあ、あんたはうそをつく場合は話題を選ぶからな。今回は違うだろうなって思ってたけど」
「それは何より」
基本的に堕落しているので動きたくはないラターグだが、今回は弱みを握られている上に、前金もたっぷりもらっている。
そのため、働かなければならないのだ。
ラターグとしては、『別に時間ギリギリでも問題ないと思うんだけどなぁ』などと考えていたが、雫が頼んできたのでそれに合わせて動いたというだけの話である。
「しかし、ゼツヤもいたのか。神がそろいすぎだろ」
「とはいっても、秀星君も神が相手となるときついでしょ」
「まあそうだな」
「それをしなくてもよくなったと思えばいいんだよ。それに、僕と違って創造神ゼツヤはちゃんと動く神だからね」
「あんたはちゃんとは働かないのか」
「フフフ……人が動くと書いて、働くと読む、僕は神だからいいのさ」
「この家から叩き出すぞ」
「勘弁してください。養ってください」
「神々の面倒な部分が終わるまでな」
「それはどうも」
秀星は溜息を吐いた。
「そういや、雫には話したって言ったな。どこまでだ?」
「神がいるってことさ。ただ、雫ちゃん。『一般人がビルをシャカシャカするよりは神の存在のほうが現実的』って言ってたよ」
「むしろ神にこの現状はどうにかならないのかと祈りたくなるレベルだもんな」
ろくなことをしないギャグ担当の二人である。
まあわかっていたことだが。
「雫かぁ……まあある程度いろいろ耐性があるだろうな」
「そういうことみたいだね。思ったより驚きが少ないみたいで驚いたよ。おかげでちょっと拍子抜けな感じになった」
「破壊神との戦闘はどうなったんだ?」
「僕が終始いろんなものを堕落させて、最終的に本人を堕落させてジエンドだよ」
「……やっぱりお前とは戦いたくないなぁ」
「最高神だからね。ちゃんとやれば強いのさ。まあ僕に限らず、みんな本気を出したがらないけどね」
「ていうか、『最高』とか言ってるけど、複数人いるんだな」
「あくまでも枠組みでしかないからね。まあ、だからこそ絶対なのさ。ていうか最強の神は『全知神レルクス』一択だし」
「天界の実力のバランスって、シンプルだけど残酷だよな」
「その通りだ」
「破壊神の話に戻るか……ああでも、創造神ゼツヤも一緒にいたのなら、ダンジョンの中で何が起こっても大丈夫か」
「そうだね。ダンジョンくらいは特に意識しなくても作れるし」
「そうか……なら、俺から指摘することはないさ。最後に一つ質問だ」
「何かな?」
秀星は真剣な表情でラターグに聞いた。
「次の神は誰だ」
「さあ、だれだろうね」
しかし、ラターグの方も、まだ答える気はないようだった。




