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第五百四十話

「お、いたいた」


 サクサクドントコ進むのではなく一気に転移した三人。

 ダンジョンの中でもかなり開けた場所が存在し、そこでは、一人の大男が座禅を組んでいた。

 身長三メートルはあると思われる、上半身がタンクトップ一枚で、筋肉の鎧を身にまとっているかのようにムキムキである。

 下半身にはビチパッツンな状態になっているジーパンがあった。

 もう少し身長が低ければ、筋トレ帰りのおっさんなのだが、残念ながら身長がちょっと異常すぎる。


「あの人が目的の人ですか?」

「そうだよ。ギッタギタのメッタメタにしに来たのさ」

「表現が雑……」


 というわけで、ラターグ、雫、ゼツヤの順番で部屋に入る。


「やあやあフバル君。随分と久しぶりじゃないか。元気にしてたかい?」

「……ラターグか」

「君たちが何を企んでいるのかは……まあ何となくわかってるんだけど、とりあえず捕まえに来たのさ」

「なるほどな。お前が出てくるほど、天界が弱っているわけか」


 大男、フバルは立ち上がった。


「フフフ、君は立ち上がると大きいね」

「お前は相駆らわず貧相な体をしているな」

「やかましいわ!」


 先に煽り負けたのはラターグだった。


「さてと、『破壊神』である君はいろいろ油断できないからね」

「油断しているようにしか見えないが」

「……まあそうなんだけどね」


 認めるんかい。


「え、あの、破壊神って……」

「ああ、あいつは神様の一人なんだよ。そして、僕とゼツヤもそうなんだ!」

「へぇ……そうなんですね」

「あれ、神の存在とか信じてるの?」

「一般人がビルをシャカシャカするよりも神の存在の方が現実的ですね」


 確かに。

 ていうか安いのか高いのかわからんな神の存在。

 そもそも最近、秀星は神器という名前を剣の精鋭のメンバーに使うようになったし、雫は一度過去に戻って、過去の自分に移り変わったほどだ。

 神の存在など今更である。


「さてと、そろそろ戦うかい?まあ、隠れて威嚇してるから君がこっちに来ないだけなんだけどさ」

「……いいだろう。我々の正義を遂行するだけだ」

「正義ねぇ……それに対しても秀星と後で語っておきたいね」


 戦うといっておきながら、お互いに構える様子はない。


 だが、次の瞬間……。


 ダンジョンは崩壊した。












「……!?」


 雫は驚愕した。

 一瞬、目の前の全てがバラバラになったような、そんな光景が目に焼き付いたのである。

 だが、瞬きを一度すると、それらすべてが元に戻っていた。


「破壊神の力、やっぱりすごいねぇ」

「神の力を何も持っていない少女を守りながら、私の二万連撃を防ぐお前もお前だ。ついでに言うと、再構成不可になるまでバラバラにしたダンジョンと全く同じものを即座に作り出すゼツヤもな」

「上位神であるアンタの攻撃の被害個所の再構成はやや面倒なんだけどな……」


 スケールが違いすぎる。


(神って……もうちょっと倒せそうな希望があると思うんだけど……何これ)


 神殺しという概念があるのだ。

 神というのは倒せるはずだ。

 そもそも、批判も革命もされない権力が存在して、いいことになった歴史など存在しない。

 だからこそ、圧倒的な象徴であろうと、神は倒せる。

 そう思ったが、雫は完全にその価値観を放棄した。


「でもまだまだ甘いねぇ。今のって結構本気出してたでしょ。隠れて三十兆個くらいいろいろやってたけど、秀星君も本気出せばそれくらいするからね?」

「あの男、やはり別格だな」

「僕らを理解しようとしているんだ。まあ……『最新式の神器』だからね。下位神が作った神器と言ってもバージョンが違うさ」


 それを聞いて雫は『神器にも世代ってあるの?』と思ったが、さすがにそれを深く追及することはない。


「私が本気を出そうと、お前に勝てないことは分かっている」

「じゃあどうするんだい?」

「お前にとって想定外の、破壊を引き起こす」


 フバルの目が一瞬光った。

 しかし……ラターグの力の方が、はるかに速かった。

 気絶するのではなく、目から、表情から、全身から、ありとあらゆる活力が抜けて、地面に倒れる。


「はい、堕落完了」


 ニヤニヤとフバルを見下ろすラターグ。


「ククク、秀星君のように、神器以外の力も混ぜて戦うならともかく、神の力をただ使うのなら、より上位の格式の神に勝てるわけないでしょうに……」

「それしかないんだろう。神々の多くは大体そんなものだ」

「それもそうだね」


 雫がここで復活した。


「あ、あの……どうしちゃったんですか?この人」

「ああ、気絶すらしてないし普通に起きてるよ。ただ、『堕落した』だけでね」

「……普通に意識もあるんですか?」

「うん」


 とてもそんな風には見えない。


「堕落っていうのはね。単純に『面倒だ』って思う力でしかないんだ。でも、それに支配されたら、もう何も動かない。知ってるはずなんだけどねぇ……」


 ラターグは溜息を吐いた。


「さてと、このダンジョンでしておく後始末がいろいろあるし、さっさとそれをしますか……」

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