第五百三十二話
堕落神ラターグ。
最高神の一人であり、文字通り、堕落を象徴する神であり。本人もかなり堕落している存在である。
基本的には天界の自宅でのんびりしているはずなのだが……。
「面倒なことねぇ……ていうか、あんた暇なのか?」
「僕の職業は自宅警備員だからね。昨日の夜から職場が変わっただけさ」
「ここまでくると清々しいな」
「ハッハッハ!……ただなんていうんだろう。本当に自宅警備員を名乗りたいくらい、君の家って襲撃されるんだよね」
「まあ、みんなが喉から手が出るものがいろいろあるからな」
そもそも、世界樹商品を販売しているゆえに存在する莫大な金を狙っているものは多いだろう。
隠し持っているまだ見ぬ商品を狙っている可能性もあるし、秀星本人もかなり多くの秘密を抱えているため、忍び込んで何かを手に入れたら、それを使って莫大な情報金を得て豪遊することだってできるだろう。今なら、『朝森秀星から情報を盗んだ唯一の人物』としてたたえられる可能性だってある。
「ただ……だからと言って、あんたが来るとは思ってなかったな」
「でしょうねぇ……僕だって来ることになるとは思ってなかったよ」
「しかし……あんたが来るってことは、それはそれなりに面倒なことになるってわけか」
「僕は最高神としての強さと、数多くのサブカルをあさってきた経験からテンプレを把握してるからね、たまに神々が下界に降りてきて大失敗するけど、あいつらテンプレ知らないからなぁ……なんで、せっかく魔法だとかモンスターだとか、そういったファンタジー要素がプンプンするのにその手の小説を読まないのかね?」
「俺が知るか」
この堕落神、一応実力だけはすさまじいのだ。
「……で、面倒なことを持ってきたって言ってたな」
「うん。近いうちに、とんでもなくやばいのが現れるんだ。それまで僕はこの家に居候させてもらうよ」
「……全知神レルクスとかはなんて言ってたんだ?」
「まあ君の家なら居候先の候補としては申し分ない。とは言っていたね」
「要するに、俺の家に住むかどうかは確定していないわけだな。叩き出していいか?」
「困ります!」
「困れ」
相手が最高神だろうか容赦のない秀星。
顔なじみゆえになおさらだろう。
「はぁ……なんでこんな奴が来たんだろうな……」
「あの、秀星、声色から察するに、僕が後天的にこうなったような言い方だけど、僕は最初からダラダラしてるからね?」
「尚更追い出したくなった……」
「ハッハッハ。まあ、君に迷惑はかけないよ。この家、部屋余ってるからそこを使うね」
「庭に焼却炉があるけど」
「言っておくけど、焼却炉の炎なんて僕効かないからね?」
「そうだった」
スペックだけは高いやつである。
「さてと、それじゃあそろそろ僕は寝るからね。君も明日から学校だろう?早く寝た方がいいよ」
「エリクサーブラッドの影響で睡眠は必要ない」
「まあまあそういわずにね。オリディアちゃんが暇そうにしてたし、一緒に寝てあげたら?」
世界樹の化身であるオリディア。
莫大な年数を生きた神獣のはずだが、肉体年齢に引っ張られたのだろうか。
「……あんたにペースを握られるのは正直嫌なんだけどな」
「本気で来ない限り僕には勝てないんだし、まあそんなもんじゃない?第一、僕の場合はほとんどの敵は神々なんだし、君とはスケールが違うよ?」
「……はぁ」
秀星は溜息を吐いた。
「さてと、それじゃあ僕は寝るから、お休み」
「ああ……」
ラターグはそのままリビングを出て行った。
「堕落神ラターグが来るか……どのルートになっても面倒なことになるな」
正直なところ、憂鬱である。
堕落しきったうえで様々なサブカルに触れている堕落神は、そのテンプレの把握量も尋常ではない。
成功、もしくは妥協点と言える未来が何となくわかっているはずだ。
だが、そのレベルに達してくると、天界としても最終手段の神である。
「……そういえば、最高神が出てくるのって、基本的に下位や上位の神が何らかの失敗をした時だったはずだが……すでに誰かが失敗したのか?だとすれば、いったい……」
正直、考えることが多すぎてなかなか寝付けない秀星であった。




