第五百三十話
秀星と高志がぶつかったことで、結果的には更地になった。
お互いに出せる出力がおかしいというか、まあ誰が何と言おうと『なんだか結局こうなった感』が出てくるのだが……。
「おりゃ!」
雫が弓を引くと、彼女の周辺にまがまがしい形状をした様々な武器が出現。
そのまま矢を放つと、大量の武器とともに秀星に迫る。
「よっ」
秀星はプレシャスを一閃してすべて切り落とす。
そして、そのままプレシャスを自分の頭上に構える。
そこに、羽計の剣が降ってきたのでガード成功。
「完全に死角だったはずだが……」
「それは常識人基準だな」
反応している間に羽計が離れた。
秀星は視線を横に向ける。
「『旋風刃・炎竜咆哮』!」
「『神風刃・竜巻一刀!』!」
母子がそろって技を使ってくる。
(椿の方はまだ風っぽいけど、風香の方はもう風属性からかなり離れてきてるな)
旋風刃とは一体何なのだろうか。
だが、それを考えたのは一瞬だ。
横から入ってきた高志の拳を、プレシャスを振り上げて対応する。
「だんだん連携が上がってきてるな……いや、連携っていうか、自分が攻撃できるタイミングを見極めるのがうまくなってきたっていうか……」
「それでも全然当たらねえけどな」
「まあそれはご愛嬌ってことで」
さらにプレシャスを振って、高志を追っ払う。
そして、横から切りかかってきた羽計の剣をはじいて、背後から来た雫の射撃を切り落とす。
この時点で、チーム高志は全員が思っていた。
『こいつの目、いったい何個あるんだろう』と。
そう思えるほど攻撃を防ぐ秀星。
「どうした?俺はまだまだやれるぞ」
「そりゃそうだろうな!」
攻撃の手が止まったチーム高志に対して、確信犯のようなニヤケ顔で言う秀星。
さすがの高志も若干うざいと思ったようだ。
「むう、このままだとどうにもならないですねぇ……」
椿が刀を構えなおす。
「というわけで、ちょっと全力を出しましょう」
次の瞬間、椿の周囲に、膨大な風が出現する。
「なるほどね。じゃあ、私も」
風香の周囲にも膨大な風が発生。
「あー……なるほどね」
秀星はプレシャスを構えなおした。
「『儀典旋風刃・天意冥轟』!」
「『儀典神風刃・破天矢車』!」
風香が上段に構えると風の刃が出現し、それを振りおろしてくる。
椿が刀を水平に構えると竜巻が出現し、それを放出してきた。
やろうと思えば一太刀ですべて打ち消せるのだが、あえてそうはしなかった。
秀星は即座にその場を離れた。
「え、うわああああ!」
「ちょ、こっちまで来るのか!」
椿の風の刃は、確かに秀星だけを狙ったものだ。
だが、椿のほうは、それを制御できていない。
(……)
秀星はチラッと椿を見る。
目を爛々と輝かせており、少なくとも冷静ではない。
(……ふーむ、無邪気な悪さが出てきてるなぁ)
特訓のメニューがしっかりしていないのか、守れていないのか。
いずれにせよ、雫と羽計はここで退場である。
「フフフ。行きますよ!『儀典神風刃・神憑り戦線』!」
椿が刀を地面に突き立てる。
すると、風でできた刃が何十本も出現する。
「『儀典旋風刃・災禍二式』」
風香が刀を自分の前で手首を軸に一周させると、椿が出現させた風の刃に、炎属性が追加された。
「……風香のほうもやや冷静じゃないな。雫と羽計が椿の風に巻き込まれたことに気が付いてないみたいだし……椿の荒れに影響されてるのかね?」
何が起こっているのかいまいちわからない。
ただ確実なことは一つある。
「秀星~。早くどうにかしてくれ~。俺が吹き飛んじまう~」
情けない声を出しながら地面にへばりついている一家の柱はとりあえず放置でいい。ということだ。
降り注ぐ炎の刃をプレシャスを振って切り落とす。
「ムフフ、お父さんはやっぱり強いですね!」
「そりゃそうだ」
「小細工も効きませんし、本気で行きますよ!」
そういうと、椿の周囲に八つの門が出現し、砕け散った。
その門の中から、大量の風が椿の刀に収束する。
「なら、私も……」
風香も同様だ。
八つの門が出現し、砕けて、風が刀に集まっていく。
「『儀典旋風刃・絶技』」
「『儀典神風刃・絶技』」
二人とも、刀を上段に構える。
「『八王天命』!」
「【八王天命】!」
振り下ろされる二本の刃。
秀星は、『規模なら椿、質なら風香だな』と思いながら、プレシャスを構える。
「『ジェネシスアーツ・サルビア』」
一閃された軌跡に、花が咲いた。
未来の妻と娘が放った風はいともたやすくその役割を終えるが、秀星の一閃はその勢いがとどまることはない。
二人は、その一閃に巻き込まれて、身にまとう障壁を消滅させた。
「……ふう、助かったぜ。秀星」
「別に父さんを助けたわけじゃないけどな」
「そーかい。まあ俺はいいけどよ」
「……で、やるか?」
「……」
「……」
「……俺、ちょっと興が冷めてるんだが」
「実は俺もだ。まあ、今はそれでもいいや」
「だな。俺も、『今』はまだ本気を出したくねえからよ」
そういうと、高志は腕輪をトントンとたたいた。
障壁がなくなり、そのまま退場する。
「んー!……さてと、俺も戻るか」




