第五百二十六話
森の中でチーム高志とチームアステルが衝突する中。
生成空間の都市エリアにて、残る二つのチームが激突していた。
チーム基樹とチーム来夏である。
そして、いずれにしても少数精鋭チームゆえの連携のだめさ加減はすさまじいので……。
基樹VS来夏
美奈VSジーク
標 VS草太
凛名VSアレシア
優奈VS美咲
とまぁ、このような形になっていた。
「オラアアアアアアア!」
来夏が大剣を振り下ろす。
それに対して基樹は、黄金の剣を下から振り上げて相殺した。
だが、それだけで、発生した衝撃が近くにあったビルを全壊させる。
「むぐっ、なかなか頑丈だぜ」
「こっちは手がしびれてきた……」
少なくとも一億年という経験を持つ元魔王ですら、何度も打ち合うと腕がしびれてくるほどの威力。
しかも、スキル『悪魔の瞳』により、理解することはできなくとも、どこに何があるのか、ということが超広範囲で分かるので、来夏から逃げることは困難だ。
しかも追いかけてくる速度も尋常じゃない。
逃げる気は毛頭ない。
ただ、戦術として撤退を選択することすら不可能である。
「むふふ、こうしてビルが壊れると、ごみが増えていいのう」
「植物が全然ないから面倒なのが増えてるだけだなぁ……」
そんな壊れるビルを見て、白いワンピースを着たのじゃロリの標と、植物が近くにないことを嘆く草太。
それぞれ得意分野があるのだが、あまりにも環境との相性が両極端である。
基本的に植物を集めて、それをもとにして戦う草太と、ごみを直接分解して魔力に変換して戦う標。
戦う場所が都市エリアになってしまうと、相性の差は圧倒的だ。
「フフフ、おりゃ!」
「うおっ!」
巨大な魔力の塊を作り出して、それをぶん投げる標。
草太は薬草をかじって、自らの魔力生成量を一時的に強化して、同じものを作って相殺する。
「フフフ。そっちもいろいろ仕込んでおるのう」
「まあ、最近は森の中でしか戦ってないけど、これでもいろいろ対策しておかないとまずいからね」
だが、魔力の弾を打ちあっていた二人の間を、鋼と雷の剣が貫通する。
「「うひゃあああああ!」」
似たような悲鳴を上げる標と草太。
魔力の塊がすべて爆散するほどの威力だったのだ。当然驚く。
「むむむ。全然通りませんねぇ」
「ユニハーズを抜ける前よりも強くなっているな。美奈」
美奈が鋼の剣を生成し、ジークが雷の剣を生成して、それをぶつけ合って戦っていた。
なお、ジークの本来の戦闘手段は、雷で自分の神経を強化するというものなので、一応今も使っていると思われるが、基本的に美奈に合わせている形だろう。
鋼と雷が衝突すると、そのまま爆散するかのようにはじけているのだが、これは単にそれぞれが付与している魔法の効果により発生している現象なので、あまり化学は関係ない。
「……」
「……」
派手なことをバンバンやっている中、アレシアと凛名の間では膨大な量の斬撃がぶつかっていた。
しかも、超遠距離バージョンである。
アレシアの持ち前の超能力により射程の概念が拡張され、凛名は振った剣から斬撃を飛ばして対応している。
お互いに集中しているのか、黙々と斬撃を放ち、回避し、迎撃している。
「おりゃ!」
「にゃ!」
手甲をつけて殴る優奈と、ポチと融合して槍を振るう美咲はなんだか平和であった。
ほとんどお互いの実力を知っているということもあるが、平和であった。
多少周りに影響することはあっても、基本的に一対一が成立しているこの状況。
悪くはない。
お互いの自力がどれほど出るか、といった勝負が繰り広げられているのだから、悪いことなど何もない。
だからこそ、空をはしった一筋の流星は、よく目立った。
「あれってなんだ?」
基樹はそう言った。
みんなも空を見上げた。
その流星が気になったのだ。
来夏がぽつりと言った。
「あれ、高志だぞ」
「!?」
一体どういうことなのだろうか。
一体、何があったのだろうか。
困惑する両チーム。
自業自得というとなんだか違う気がするが……。
まあ、あれだ。
貧乳にたいして邪推は禁物なのである。




