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第五百十九話

 エリクサーブラッドを持つ秀星に、疲れるということはほぼあり得ない。

 常にベストコンディションを維持するという機能を持つゆえに、疲れ、疲労という言葉は、ベストコンディションに不必要だからだ。

 言い換えれば動き続けることができるというわけなのだが、人間である以上、失ってはいけない疲労というものが存在する。

 もちろんそれは精神のストレスの話だ。

 戦闘中ならばエリクサーブラッドはそれらを一時的に排除するのだが、戦闘ではない場合、今回の宇宙鬼ごっこや、高志や来夏のギャグなど、戦闘中というわけではない精神的なストレスがたまる部分もある。


 要するに。


「あー……ダルい」


 三つの重要部品を回収した秀星は、思いっきりぐったりしていた。

 それはもう、この上ないくらいに。

 戦闘になればスイッチが入るのだが、そういうわけではないのでぐったりしている。


「あーくそー。未来の俺、いったい何考えてんだ」


 わざわざくそ長いパスワードを考えなければ、セフィアが短時間でパスワードを確認できていたはずだ。

 こういう時、大体口は高志か来夏に向いているのが秀星のパターンだが、こればかりは未来の自分に対していろいろ思うところがあった。


「秀星様は何でも短期間で解決してしまいますからね。そうさせないために、未来の秀星様が動いたのでは?」

「速く終わるんならいいじゃん」

「何らかの原因があると考えらえます。個人的には原因というよりは制限だと思いますが」

「制限ねぇ……確かに、未来の俺、『アイテムマスター』の力を完全に使えてる気がしないな」


 使用中、使用後のデメリットはともかく、少なくとも使用することに関してはさまざまな制限を無視し、防壁を貫通するのがアイテムマスターという力だ。

 ということを、秀星は思い出した。


「なあ、思ったんだけどさ」

「はい」

「USBメモリをつかんで、アイテムマスターの力を使ったら、使えるのかね?」

「実験しますか?誰かに空の文書データでもいいので保存してもらい。パスワードを設定してもらえば、あとはそれを使って実験すればいいだけの話ですので」

「……いや、いいよ。なんか発狂しそうだし」


 思えばカギだって普通に開けられるのだ。

 セキュリティ会社の人たちには申し訳ない話になるかもしれないが、『鍵がかかっているドア』であったとしても、『ドアを使う』ことで、鍵を開けることができるのだ。

 パスワードや鍵もどきでロックされている魔剣などを使った経験があるので、鍵を持っていなくてもこの方法は通用する。

 そして、異世界では治安が悪い部分があるので、まだ神器を持っていなかったころ、セキュリティアイテムをふんだんに使ってガチガチに固めた後、自分で鍵を叩き壊すという暴挙に走ったことがある。

 まあ、普通に開けられたので問題はないのだが。


「……『アイテムマスター』としての基本性能を忘れてるとか、ダサすぎるだろ……」

「私も忘れていましたね。秀星様にとって、『アイテムマスター』の力は、『神器を使うため』に使用することがほとんどなので、ほかのもののために使うことを忘れていました」


 秀星とセフィアの思考は常にリンクしている。

 まあ、秀星が考えていることをセフィアが理解するもので、その逆はないのだが、秀星がそのような思考にとらわれていると、その思考を把握し続けるセフィアにも影響があるということだ。


「パスワードがガチガチにかけられたメモリ。俺、普段なら一瞬じゃん。神器を使ってプロテクトかけても瞬殺だからな」

「そうですね。神器というのは、下位の魔力に対する優先、優位という特性を持っていますが、秀星様のアイテムマスターは、『オリジナル・エッセンス・スキル』……『OES』と呼ばれるもので別口ですから、神の力の優位性が関係ないものになりますから」

「あーダセェ。何年も付き合ってきたスキルなのになぁ……」


 未来の自分の手によって、初心に返される秀星。

 このタイミングでこの思考を取り戻せてよかったとは思うのだが、未来の自分のやり方にイライラするのであった。

 単なる復習不足である。

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