第五百五話
「……なんだか、とても特殊な流星が見えたような気がしたけど、気のせいかな」
カラスの大軍を次々に斬り倒しながら、英司はそうつぶやいた。
「……英司様。現実逃避していませんか?」
そして、そのカラスの大軍に雷を落としながら、ハルヴェインがそう返した。
英司の表情は、苦虫を噛み潰したようなもの。
どうやら図星のようだ。
「まあ、僕、研究者だからさ。正攻法を見つけ出して、欲張れば必勝法まで発見してから一気にガッとやりたいわけさ」
「それが、あの二人がいると、本当に物理的にガッと片づけてしまいますからね」
「だよねぇ……まあでも、そんな中でも全く分からないって訳じゃないんだけどね」
「そうですね」
あくまでも研究者である。と言うことがどういうことなのかと言うと、『カラスを一匹一匹、全て鑑定している』と言うことである。
大量の敵を倒す場合、一々鑑定して、さらにそのデータを比べるという作業は正直気が遠くなるレベルであり、そもそも技術的に現実的ではない。
中には鑑定を阻害する個体だっているのだ。そんな中で、正確な情報を集められるかどうかと言う疑問が出てくるのは当然だろう。
だが、英司はその個別の鑑定を可能とする。
「出てくるモンスター。後半はモンスターの強さが抑えられてて、数を優先するようになってきたね」
「はい。巨大なモンスターである。ということが優位な条件ではないということが明確になったことで、数を揃えに来た。といったところでしょう。死亡数がカウントされているような、そんな『個別コード』を判断するのに役立つ魔力が、モンスターから漏れだしています」
「まあ、その魔力、今はシャットアウトしてるけどね」
「はい」
英司が魔法を使った。
それによって、今いる島にはとある結界が張られている。
先ほど言った『死亡数のカウントをやりやすくするために作られた個別に判断できる魔力コード』が漏れないようにしている。
「まあ、この魔法その物は延命措置にしかならないけどね」
「そうですね。モンスターの死亡数を積み上げるのが向こうの目的で、実際にその死亡数の減少を抑えるということができていませんから」
「そう言えば、向こうはどうなってるんだろ。クジラとモグラがうじゃうじゃいて、死亡数も圧倒的だと思うけど……」
英司は魔法を使って、視力を強化する。
秀星たちの方を見る。
「……どうですか?」
「モンスターの死骸を保存型の魔法具にいれてら。多分あれ神器だな……」
秀星はそこまで鑑定しているようには見えない。
だが、モンスターの死骸をそのままにしておく理由もない。ということだろう。
捨て置くよりも、とりあえず確保しておいた方がいいと判断できるのなら、それでいいと考えているのだ。
「……ていうか、クジラとモグラの壺もなくなってるなぁ……さっきの流星はやっぱり壺だったわけだ」
「……あの大きさの壺を、人間が投げ飛ばせるのですか?」
「やってるのが高志だからできるんでしょ」
英司はカラスが出てきている壺を見る。
次々と出てくるカラスを見ていたが、その後、空を見上げる。
まあ、あれだ。
カラスたちはとてもいやな予感がした。
「あ、何か必死になったね」
「やはり、宇宙空間では何もできないということですね」
鳥は、空気がなければ翼を羽ばたかせることはできない。
宇宙空間に放りだされれば、たとえ生きることが出来たとしても、いどうすることはほぼ無理なのだ。
ただし、そう言う種類の話をカラスたちが主張したいと思っているとは、英司もハルヴェインも、微塵も考えていないのだが。
「さてと……僕らも放り投げちゃおっか」
「ハハハ。結局、力こそすべてですねー……」
何のためにいろいろ考えてたんだろ。と思う英司とハルヴェイン。
とはいえ、細かいことは大体暴力で解決できるのが真理というものだ。力こそすべてなのは昔から変わらない。
「よし、やるか」
魔法を使って、膂力を絶望的に上昇させていく。
それをみたカラスたちは、今までで一番大きな悲鳴を出す。
本当に、宇宙は嫌のようだ。
「バイバイ。カラスさん」
星が一つ増えた。




