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第五百三話

 イライラしてきた。

 秀星と基樹、そして英司はそんな感じである。

 どれほど大量に出てこようと、全てにおいてほぼ一撃で終わる。

 だが、だからと言って問題が何もないというわけではない。


「……なあ、思ったんだが、あの壺、宇宙まで投げ飛ばせばいいんじゃね?」

「おお!来夏、それは良い案だな!」


 良案というより妙案だが、そんなことを話しながら喜びあっている高志と来夏を見ていると、『なんか、空は青いなぁ』と思ってくるのだ。全く関係はない。

 なお、転送魔法をガチで使える沙羅はあらあらうふふと微笑むだけである。


 ちなみに、モグラは泳げる。

 餌のために仕方なく泳ぐので本業ではないが、泳げる。

 そのため、海に壺を持ってくると聞いても、何も文句は言わなかった。

 それに加えて、『最終的に、海ならば別に問題はない』と考えていた部分もある。

 だが、『宇宙』は別だ。

 クジラに取ってもそうだ。

 宇宙は別なのである。


「……お、顔色が変わったなぁ、何か知らねえけど、宇宙に放り込めば向こうに取って都合が悪いみたいだぜ?」

「だけどよ、宇宙でも増え続けたら最終的にやばいことにならねえか?」

「なんで?」

「だって、結構大きいモンスターがワラワラ出てくるんだぜ?」

「大丈夫だろ。宇宙って広いし」


 確かに広い。


「おーい秀星!基樹!宇宙にツボを放り投げるぞ!」

「「え!?なんていった!?」」


 火力要員の二人が『何言ってんの?』と言っているような声を出す。


「宇宙ですか。久しぶりに行きたいですねー」

「久しぶりに?椿ちゃん。宇宙に行ったことがあるの?」

「別荘が月面にありますからね」


 未来で遂にやりやがったようだ。あの男。


「うふふ。未来では秀ちゃんも宇宙デビューしてるのね。お母さん楽しみだわ」

「いや、転移魔法で一瞬で行けるだろ」

「今行っても楽しくないもの」


 文明に染まりすぎたようだ。この母親。


「ただ、宇宙にツボを放り投げるって言ったあたりから、アイツらの真剣さが上がったな。理由はわからんが、宇宙に放り込まれるのは向こうにとって都合が悪いらしい」


 高志はクジラとモグラの様子の変化を見逃さない。


「で、具体的にどうやって放り投げるんだ?」

「そりゃアレだよ。ガッと持ってギャッと投げるんだよ」


 意味不明。


「なるほど、わかったぜ」


 ほんまか?


「というわけで、俺達はクジラの壺を回収してくるぜ」

「レッツゴー!」


 高志と来夏は海に飛び込んでいった。


「げ、元気だねぇ」

「おじいちゃんは未来でも元気ですよ。髪もまだサラサラです」

「うふふ。まあ、二十年後でもあの人はまだ五十代だし、当然ね」


 そんな五十代がいてたまるか。


「え……今、高志さんって三十代なんですか!?」

「そうよ」

「とは言っても、二十年後のお父さんは三十七歳ですからね〜。十五歳の娘がいるのは早いって思われますよ」

「まあ、それはそうだよね」

「髪サラサラですよ」


 それはエリクサーブラッドの影響である。


「お母さんは……未来では老けてますね。イダダダダ!」


 額に青筋を浮かべてアイアンクローを極める風香。

 なかなかの握力である。誰に似たんだか。


「うふふ、私は?」

「おばあちゃんはかわってないですね」


 風香は『なんでや!?』と言いたそうな視線を沙羅に向ける。

 が、沙羅は何も言わない。


「……朝森家って不思議ですね」

「その朝森家に、嫁に来る人が今からそんなことを言っていると疲れますよ」


 沙羅がそう言うと、水面から高志と来夏が出てきた。


「あれ、もう引き上げたんですか?」

「いや、クジラが邪魔だったからまだ無理」


 当たり前である。


「お父さんと基樹おじさんが抑えている間になんとかしないと不味いですよ!」

「大丈夫だ。問題ない」


 それは大丈夫ではないフラグである。

 風香はなんとなく、金髪のカツラを持ってきたほうがいいような気がしてきた。

 とはいえ、モグラやクジラは出てくるが、堕天使は出てこないので多分この二人なら大丈夫だろう。

 秀星や基樹も大丈夫なのだが、ここまでその無問題の根拠が異なる例はたいへん珍しい。


「というわけで行ってくるぜ!」

「レッツゴー!」


 また潜っていった。


「……数分後に帰ってきそうですね」

「まあ、ここで死ぬ運命ではないので大丈夫でしょう」


 風香はそれを聞いて、『え、沙羅さんって神様なの?』と一瞬思ったが、泥沼に入りそうなので聞くのはやめておいた。


 結論。

 シリアスにはならない。安心せよ。

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