第五百二話
「さてと、隕石を見ようと思ったら新しい魔力の行き先があるとは思わなかったぜぃ」
英司は海の上を走って、ユニハーズたちが活動している島から離れていた。
眼鏡をかけているところを見ると、特殊な鑑定を可能とする状態であることは分かる。
その鑑定を行うことで、魔力を見ることが出来た。ということだ。
「さてと……あの島かな」
遠くからでも緑が溢れていることが分かる島だ。
英司たち『エボルート』は、基本的に多種多様な島を調べているため、その島の情報もすでに持っている。
「ふーむ……ああいった化け物が出てこれるような大きなものってあったかなぁ。僕、そんな物体に見覚えがないんだが……」
エボルートの調査は地中まで及ぶ。
しかも、先ほど基樹が戦っていた深さよりもさらに奥まで調べるため、そんな大きなものがあれば気が付かないということはほぼあり得ないのだ。
「……いや、そもそも、あんなでかい壺、地中でも海でも、あったら強烈に目立つはず。僕たちが何年も調査をして情報を手に入れている中で、それらを一つも発見できなかったと考えると……壺があるから隕石が来たんじゃなくて、壺を送りつけやすいから隕石が来た。とも考えられるわけか」
結局のところ、何が真実なのかが分からない。
「えーと……こっちはカラスみたいだね」
大きなカラスが空を覆い尽くそうというレベルで飛び立っている。
「これはまた面倒だ。ハルヴェイン!」
「はい」
英司が呼ぶと、すぐ後ろで、浮遊魔法で飛んでいるエルフの青年が出現。
いつものことだ。
「なーんか敵さんがめんどくさそうだからね。いくつか任せるよ」
「わかりました……本当に多いですね。何なんでしょう。あれ」
「僕もまだよく見てないからわからないけどね。一つ言えるのは、放置するのはマズイってことさ」
英司は鞘から剣を抜き放つと、島には上陸はせず、そのまま空中に飛び上がる。
そして、一匹のカラスに剣を振り下ろす。
首を一刀両断すると、地面に墜落して動かなくなった。
「あれま、再生能力とかそういうのは持ってないのか」
『再生不可』の付与をすることもできるのだが、あえてしていなかった。
それでも通用したところを見ると、どうやら面倒な耐性は持っていないようだ。
「単にでかいやつを大量に呼ぶだけか。まあ、それでも面倒っちゃ面倒だけど、目的がわからないなぁ……」
メガネのブリッジを押し上げて、機能を変更する。
次の瞬間、英司の視界に、大量のクジラとモグラに囲まれて混沌とした状態になっている秀星と基樹が見えた。
「……あいつら何やってんだろ」
英司はげんなりしたが、二人を見ていて、『面倒なのが増えた』という点に関して口喧嘩になっているだけで、出現しているモンスターはしっかり倒しているのを確認する。
「ふーむ、二人とも、何か特別な付与をしているようには見えないなぁ」
あまりにも、倒しやすすぎるのだ。
これもなかなか面倒である。
「いくら大量に出せるからって、大きいだけだと意味はないんだけどなぁ……まだ裏があるのかな?」
剣を真横に一閃して、数百のカラスを一気に斬り刻む。
そして、ハルヴェインが出した雷に全員が焼かれて墜落して行った。
「英司様」
「ふーむ……ハルヴェイン。この状況、どう思う?」
「……私個人としては、いくつか裏があるのは間違いないでしょう。私個人としては、『これができなかったらこれ』というように、どこか保険をかけているようなものに見えます」
「だよなぁ。この場合だと、『大量に大型モンスターを出しても成果がなかったらこれ』みたいな感じで、裏があるってこと?」
「誘導されているのか、それとも単に私たちの深追いなのかは不明ですが、私としてはそう考えます」
「まあ、現在持っている情報だけで考えるとそれくらいだよねぇ」
「英司様はどう思うのですか?」
「んにゃ。まだハルヴェインが言ったこととほぼ変わらないね。保険をかけてるって話だけど、じゃあその保険って何?って聞かれても、僕もわかんないからなぁ」
「敵の方針に対して、ある程度の予測は必要だと思いますが……」
「まあ最悪、受けに回ってもいいんだけどね。ただ、最初に秀星が大量に倒し始めちゃったから、敵さんもそれに乗ってると思うけど」
いずれにせよ情報が少ない。
「今、考えていい可能性は、『死体を利用して何かしようとしている』『大型モンスターの死亡カウントを一定数貯めたい』くらいかな。両方の可能性も否定できないけどね」
「……頭に入れておきます」
「まあでも、最終的には秀星に一刀両断してもらえばいいだけのことだよ。その死体の研究はさせてもらうけどね」
もう一度剣を振って、数百のカラスを一網打尽にする。
ハルヴェインが竜巻を発生させて、まとめて処理していった。
「まあ、予測させてくれない敵って僕は好きだけどね。後が楽しみだし」
「……同意はしませんよ」
「別にいいよ」
剣を構えなおして、カラスの群れに向かって飛ぶ英司であった。
その表情は、満面の笑み。
後を楽しみにしているということと……もしも拍子抜けするような最後だったら許さない。という、二つの感情を隠しもしない表情であった。




