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第四百九十五話

「で、秀星。隕石はどうだったんだ?」

「ただの発信器だった」

「そうか。なら問題ねえな」


 高志たちのところに戻ってきた秀星。

 当然、高志が聞いてくるわけだが、秀星は簡単に返した。

 高志は納得している様子。


「……いや、もうちょっと深く説明してくれない!?」

「そうです!未来でもお父さんは秘密主義であまり話してくれないんですよ!」


 風香と椿がそう言ってきた。

 正直、椿の発言が一番刺さる。

 未来の自分のことだが、それでもそうなんだろうな。と思う。


 人は、自分のことはわからないものだという。

 秀星にだって自分でわからない部分はある。

 だが、その場合は指摘されるわけだ。

 ただ、指摘されるところで直すことはないので、言われた通りの人間で有り続けているだけである。

 バカというのは説教ではなく環境でしか治らないのだ。


 そのため、秀星が未来で秘密主義でほとんど話さないというのは、とても説得力があるのだ。まさかこの年になって娘に言われるとは想定外だったが。


「……わかった。説明しよう」


 と言っても、アステルと話したこと以上の話はしない。

 そして全員、秀星が宇宙空間で隕石を確保したということに対してツッコミすらない。

 それが普通だと思っているわけではないが、秀星ならなんとかできるだろう。という暴論的な理屈である。


「外から飛んできた、宇宙のモンスターが使ってる発信機ねぇ」

「なかなかスケールが大きい話だね」

「お父さんなら普通ですね!」


 普通として片付けていいのかどうかはともかく、誰も悲観した様子がないのはさすが朝森家といったところである。


「フフフ。面白い話をしてるわね」

「あ、おばあちゃん!」


 沙羅が帰ってきたので、椿が反応。

 ただ秀星は……いや風香も気になっていると思うが、沙羅が担いでいる袋が気になった。

 まるでサンタクロースが背負うようなバカでかい袋がパンパンになっているのである。


「母さん。そのでかい袋は?」

「全部この島で使ってるお金よ」

「……さいですか。保存箱の子機を渡したはずなんだが」

「こういうのは見せつけながら持っていくのが効果的なのよ」


 そのうち後ろから刺されるのではないだろうか。

 何となくそう思うが、刺されたとしてもあまり意味はなさそうだ。


「さて、これでいっぱい買い物して帰るわよ」

「母さんって使うときも規模やべえな」

「フフフ、経済の活性には消費が必要なのよ。溜め込んでても仕方がないじゃない。秀ちゃんも、世界樹の商品を販売してがっぽり稼いでるんだから覚えておきなさいよ」

「おお、世界樹の商品ですか。正直、あれがあるだけでお父さんの資産がすごいんですよね」

「そうなのか?」


 高志はあまり世界樹云々に興味はなかったようだ。


「はい!それに加えて、お父さんにしか運営できないくらいサービスが豊富なので、お父さんにしか運営できないんですよね」

「……他の人間が運営したことがあるかのような言い分だな」

「はい、ありますよ」


 あるんだ。


「当時のすごい販売網を持っているところだったと思いますが、その組織に一度、運営権を渡したことがあるんですよね。裏の事情があっただけ、とお父さんが嫌そうな顔で言っていたので、好ましい相手ではなかったと思います。ただ、まあ運営は無理でしたね」

「だろうな。俺が運営してた頃のサービスの差と完全に比較されてズダボロだっただろ」

「はい。まず、商品がお店にほとんど並びませんでした」

「でしょうね」


 世界樹があるのは浮遊島だ。

 現在、科学的な分野で勝負するならば、大量に一度に運び込むのは船を使うべきだが、それは不可能なので、できる限り保存用の魔法具を積んで、飛行機で行くしかない。

 中には通常の鑑定を受け付けない厄介な果実などもあるため、分別も困難。

 さらに言えば、適切な扱いをしないと、有害なものを撒き散らすものもある。

 秀星はそれらをすべて分別し、有害なものに関しては、現在販売していない。

 他のもので十分やっていけるからである。


「そして売れたとしても、購入者が襲撃してきたりする場合が多かったんですよね。防犯レベルが足りてなかったんです」

「だろうな」


 セフィアが販売とアフターサービスを行っているが、セフィアは神器で、なおかつ他の神器を使って強化し、数々のサービスを揃えているからこそ安全なのだ。

 そんじょそこらの防犯レベルでは、強者が出しゃばってくると簡単に強奪される。


「そもそも商品が並ばず、購入できたとしても、扱いの難しい危険なものが混ざっていたり、それが希少なものであれば、店側が用意した護衛すら突破して奪われていました。極めつけは……そもそもの末端価格の急上昇ですね」

「だろうな」


 先程から『だろうな』しか言ってないが、実際そうだと思う秀星。

 どんな産業であれ、仲介する人間が多くなれば金額は高くなり、仲介する距離が増えれば時間もかかる。

 小売店やスーパーなどを完全に廃止し、倉庫で圧倒的に在庫を抱えてトラックで直送する通信販売が儲かるのだが、これはそういう理由である。システムの構築は天才にしかできないだろうが。


 秀星の場合、セフィアにすべて任せており、そもそもセフィアは秀星の所有神器なので経費は掛からない。

 そして、世界樹で手に入る果実は保存箱の子機に入れると、すべての子機でそれらを共有できるので、輸送費も輸送時間もかからない。

 人件費がかからないのだ。

 これが強い。


「最終的にクレームが殺到して、お父さんの所に戻ってきましたね」

「まあ、そうなるだろうな」


 難しいことなど何もない。

 ただ、神器を持ってるやつが自重しなかったら強い。

 それだけのことだ。


「あ、おばあちゃん。これから何を買いに行くんですか?」

「全部よ」

「おお!とても楽しみです!」


 秀星と風香が『え、マジ?』という表情をしている間に、沙羅と高志、椿は市場を歩いて行った。

 どうやら、珍しいことではないようだ。

 ……謎である。

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