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第四百八十八話

 パッと見た感じの印象は、『幼い』であった。

 さすがに小柄な椿ほどではないが、十七歳の女としては平均くらいの風香のような身長である。

 外見としては中学生といったところか。

 Tシャツにジーンズ。そして上からジャケットを羽織ったスタイルで、パッと見た感じ、『強さ』があるかと言われるとそうでもない。


 もちろん、鑑定スキルだとか、他にもいろいろある秀星からすると、外見から判断されるような強さではないことは十分わかるのだが。


「……新道英司か?」

「そうだよ。朝森秀星君。まあ、ハルヴェインを連れてるし、分かると思ってたけどね」

「ハルヴェインも久しぶりだな」

「そうですね。世界樹の騒動以来ですか」


 オリジンエルフであるハルヴェイン。

 遺伝子そのものが呪われていたエルフたちを、完全に世界樹から切り離して放置している秀星だが、その後どうなっているのかは確かめていない。

 ハルヴェインの様子を見る限り、彼が何もしていないというわけではなさそうだが、いずれにせよ、秀星はこの場で追及しようとは考えなかった。


「しかし、この場所に沙羅さん以外のユニハーズの人が来るのは珍しいね」


 英司が高志を見る。

 高志はニカッと笑った。


「まあいいじゃねえか。たまにはよ」

「そうだね。まあ、君には散々驚かされてばかりだし、今更君が何を言っても驚かないけどね」

「そうかい。まあ俺も、孫の頼みは聞くってことさ」

「……え、どういうこと?」


 英司がすっとぼけたような声を出した。

 すると、椿が秀星の肩から降りた。


「初めまして!二十年後の未来からやってきました!朝森椿と言います!」

「……二十年後……そして、孫?」


 英司は秀星と椿を見比べる。


「……まあ、この単語が並ぶってことはそういうことなんだろうけど……意味不明だね」

「フフフ、高志が壊した重要なものの確保のために未来からやってきたみたいですよ」

「やっぱり原因は高志さんか」

「やっぱりってなんだよ」


 英司は否定も訂正もしないので、おそらくずっとこんな感じなのだろう。


「……そういえば、中央に向かってるってことは、まだ持ってきたものを売ってないよね。どこにあるの?」

「秀星君が収納型の神器をもってるから。そこに入れてるよ」

「なるほど、そういうわけか。いつもは中央に直接転移してきて、鑑定部屋に物資を直送してくるから、このあたりを歩くことすらないもんね」

「そのせいで方向音痴になってきてるから痛い!」


 高志の脇腹に沙羅の裏拳がめり込んだ。

 そのまま吹っ飛んで路地裏に頭から突っ込んでいく高志。

 ギャグのような飛び方である。

 まあすぐに帰ってくるだろう。


「英司さんもものを売りに来たんですか?」

「椿ちゃん。おじいちゃんが飛んでいったのはスルーなの?」

「?……よくあることですよ!」


 教育方法を間違えているかもしれない。


「……まあ、僕たちもいろいろ売りに来たよ。というか、この町では実際に場所をとって店を開くか、中央に売っぱらって換金するかの二択くらいしかないしね」

「英司のところの『エボルート』は情報だしな」

「情報?」


 物資ではないのだろうか。


「ああ、沙羅さんに直接転送されてこの島にいるわけか。この島の周辺には、3日もあれば全部回れるような島がいくつもあるんだ。そして不思議なことに、要素が全部バラバラなんだよね。そこを探索して、その情報を売るのが僕たち、『エボルート』だ」

「ってことは、拠点は船か」

「大型じゃないけどね。まあそんなもんだよ」


 秀星はエボルートの『情報を売って金を得ている』という方法を聞いて、確かな実力を感じた。

 そもそも、情報という概念には実態がないのだ。

 写真などは撮ってくるだろうが、この島のレベルを考えると、カメラ程度ならいくらでも欺ける。

 そんななかで『情報』を武器にできるということは、それだけ実力があるということだ。


「それにしても、みんなからいろいろ聞いてるけど、秀星君は実物を見ると期待以上に強いね」

「そうか?」

「うん。戦ったら面白いことになりそうだって思ったよ。まあ、ここでそれを言っても仕方ないか」


 英司は左腰につっている剣を鞘ごと渡してくる。


「さて、これ。抜けるかな?」


 試すような視線で聞いてくる英司。

 秀星は剣を受け取って、柄を握った。

 グッと引っ張ったが、抜けない。


(……なるほど)


 とあることを理解した秀星は、もう一度試した。

 ちょっと工夫すると普通に抜けた。


「ほー。そんな短時間で抜けるとはね」

「これ、すごいな」


 秀星は素直にそう思った。


「そりゃそうさ。僕の愛剣だからね」


 フフンと胸を張る英司。

 秀星は無言で剣を鞘に収めて返した。


「で、何がわかったのかな?」

「その剣。モンスターだろ」

「正解」

「「えっ?」」


 風香と椿が同時に驚いた。


「まさか初見で見抜いてくるとは思わなかったよ」


 面白いことものを見つけたような目で秀星を見る英司。

 だが、別に秀星からすれば特別なことは何もない。

 『アイテムマスター』である秀星は、本来、使おうとする段階で発生する『制限』を無効化し、使うことができる。

 いまではほとんど神器にしか使っていないが、基本的には自動発動であり、自動的にプロテクトを解除して使うことが可能なのだ。

 だが、英司が持っていた剣は、一度目では抜けなかった。

 剣のように見えるが、実はモンスターだというのならば、『アイテムマスター』が定義している『道具』ではないので、使えない。というだけの話である。

 もちろん、モンスターだとわかれば工夫できるので、それをして抜いただけだ。


「それじゃあね。多分数時間後にはまた会うと思うよ」


 そう言って、英司はハルヴェインを連れて去っていった。


「なんだか、不思議な人だね」

「あの見た目で、父さんと同い年だからな」

「「「そうなのっ!?」」」


 秀星の言い分に、風香、椿、高志が驚く。

 そう、人は見た目によらないものなのだ。

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