第四百七十四話
外見を見ればボロボロだが、使われている技術は高い。
しかも魔法的な技術がふんだんに使われている。
というのが、秀星のぱっと見た限りでの判断である。
「……なんだか、とっても大きいね。これどうやって引き上げたんだろう……」
雫が呟いているが、他のメンバーの言葉を代弁していると言っていいだろう。
「力任せに引っ張り上げたに決まってるだろ」
来夏がそう言った。
秀星としても反応のしようがない。
もちろん、沈んだ船という『物体』は、そこに存在するわけで、特に引き上げられることに対しての抵抗魔法がかけられていない場合、圧倒的な力があれば引き上げることは可能である。
圧倒的な力があれば、のはなしである。
あるのならニュートン先生も許してくれると思うのだが、ではその力を人間がどのように捻出するのかという話である。
来夏と高志は一応、人である。
「まあ、とりあえず、探索しようぜ!」
というわけで、内部に入っていった。
★
基本的に、活動するためのチーム分けは変わっていない。
要するに、秀星はアステルと組んでいるわけだが、今回はそれに加えて、エイミー。千春。ジークの三人と組むことになった。
機関部を見ておきたい。とのことである。
「……で、ここが機関部か」
船が進むための動力部となる場所。
いったいどのように動いているのかが気になったのだが……。
鑑定スキルを持っている秀星と、理解することができる眼を持っているアステルは、その状態をほぼ即座に把握した。
「……エネルギーの無駄遣いだな」
「ああ。確かに」
「「「?」」」
二人は理解したが、残る三人はわからなかった。
「どういうこと?」
「魔力を中心にして動いているということはわかるが……」
一応、初見でわかっている部分はあるようだ。
「異常に魔力の入力部分が大きい、が、魔力を保存していたであろう容器が周りに一切見当たらない。そして無駄に大きな排出口。ここまでそろってるとな……」
「膨大な魔力を持つものがその魔力を入力し、船全体にあるスクリューや、方向を変換する制御装置などを動かしている。ということだ。船全体に魔力がいきわたった後、ここに戻ってくるようにできている。無駄に排出口が大きいのは、その戻ってきた魔力を制御し、自分の体内に戻すことで、再度利用しようとした、ということだろう」
要するに。
「魔力量特化の魔戦士を、ほぼ燃料扱いしてたってこと?」
「だな。ある程度の魔力操作技術を仕込めばいい。第一、膨大な魔力を持っている奴は、その魔力を制御できずに体外に漏らしているものが多くて、魔力というものをほかの魔戦士よりも認識しやすいからな」
「燃料扱いとはいうが、魔力操作は精神状態と密接にかかわる。正直、その船の中ではVIP待遇だろう」
「だが、燃料扱いするという考えがある以上、薬漬けにして廃人にするという意見があったのではないか?」
さすがジーク。恐ろしいことを平気で言える。
……その辺のバールで空間跳躍するのとどっちが恐ろしいだろうか。
「研究段階ではあっただろうけど、ここまで大きな船を動かすとなれば、かかわっている事情も深いものだと思う。魔法が発展して科学が発展していない場合、魔力というものを一番操作できるのは、人の『脳』じゃなくて『精神』だからな。廃人にしたら……効率は六分の一まで減少する」
「秀星がその廃人計画にかかわっていたとしたら?」
「今の俺がその研究にかかわっていたとしても、精神状態の安定を選ぶかな。そっちのほうが断然効率がいい」
「そもそも、秀星がかかわっていた場合、魔力量が膨大にあるんだからそれを利用すればいいだけの話だがな」
「反論できません」
秀星の魔力量は一般人より断然多い。
確かに、普通に機関部にいるほうがいいだろう。
「しかし、材質からするとずいぶん昔だが……作れるものなのか?」
「昔の人間が神器を取得できなかった。なんてことは俺も考えてないよ」
「それもそうだな」
疑問が生まれては解決され、それが続いている。
ただ、その話が尽きる様子はない。
どうやら、来夏と高志の二人がひっぱりあげた船は、謎が多そうだ。




