第四百六十九話
羽計と美奈は、凛名と共に行動していた。
「なぜ私は、食料調達をしているんだ……」
「まあ、凛名さんの普段の活動に交じる感じですからね〜。必然的にそうなると思いますよ〜」
山菜を集めている羽計と美奈。
後ろに背負ったかごには大量の山菜が詰まっており、それだけで随分と重そうだが、二人は難なく背負っている。
魔戦士というのは基本的に魔力を使って身体能力を強化し、そして優れた魔戦士になれば、日常的に魔力を扱える。
籠はものすごくおもそうだが、本人たちにとってたいしたものではないのだ。
「まあぶっちゃけ、必要ないですね。拠点内の地下栽培で十分足りますから」
「ならなんで尚更……」
「すべてが集まるわけではないからですよ。このあたりは多数の種類が少しずつ存在する状態ですからね。隠し味を取りに来るときは必須です」
「そういうものなのか?」
「そういうものですね〜。お父さん結構食べることに関しては雑ですけど」
どうやら食文化は強さにはあまり影響しないようだ。
「そういえば、ユニハーズのメンバーって、どんな感じで集まったんだ?」
「むむ?どういう意味ですか〜?」
「いや、あまり人が住んでいるように見えないからな。拠点らしい拠点も見えないし」
「あはは。この島では、見えるような拠点はすぐに狙われますよ。みんな隠しているわけです」
「全体でどれくらいの人数なんだ?」
「この島にある拠点を本部としている組織限定ですが、だいたい十万人程度でしょう」
「多いような少ないような……」
「ですが、すごい人たちが集まってますよ」
「なるほど」
高志たちが強いことは、羽計としても十分にわかる。
そんな人たちが拠点を据えてまで活動しているとなると、平均レベルは高いはずだ。
「それにしても、他種類が少数ずつか。中には手に入らない場合もあるんじゃないか?」
「定期市がありますので、そこで売ったり買ったりします」
「え……日本円は……」
「使えるわけないですね。この島独自の硬貨を使っていますよ」
「この島独自って……」
「やっぱりお金があると便利ですからね」
「偽造したりできるんじゃないか?」
「鑑定スキルを持っている人が店番に立ちますし、そうでなくとも、コインに対して抜群の性能を持つ鑑定スキルを発揮する機械もありますから」
それを人はコインメックというのではなかろうか。
「あと、コインをお兄ちゃんにみせたことがありますけど、お兄ちゃんにも複製は不可能とのことです」
「秀星でも無理なのか。すごい技術だな」
決して戦闘だけで一位というわけではない秀星であっても無理となれば、相当のものだろう。
「そういえば、明日が定期市の日ですねぇ。お母さんが自重してくれるといいんでずけど……」
「交渉がうまいのか?」
「弱みを握った場合はそれを平気で使うのでほぼ脅しですね。ユニハーズの資産はそれなりに多いですよ」
「……」
羽計、絶句。
「お、ありました。これがいい感じに売れますからね」
美奈がキノコを拾い上げた。
「地域ごとで取れるものが全く違うということか。ほぼ特産品扱いだな」
「そういうことです。なので、頑張って拾いましょう!」
羽計は『なんだか村人になった気分だな』と思いながらも、山菜を集めていた。




