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第四百六十七話

 当然のことだが、『それぞれやることをやろう』という設定だとして、アジトの中での仕事がないわけではない。


 全員が戦闘能力を有しているので強いわけだが、だからといってアジトのことを放置すると、どこかで崩壊する。

 そもそもユニハーズは人が少ないが、アジトはかなり広い。

 別空間で拠点を作っているゆえに広さ、深さの制限がほとんどないからだ。

 少数が小時間で確認を行って対応できるシステムを構築するべきであり、そう言う点では、このユニハーズのアジトは良くできている。


「さて、ここがライフラインを確保している設備になる」


 ジークは、エイミーと千春を連れてアジトの中を案内していた。

 非常にメカメカしい場所ばかり案内しているので美しさからは離れたものだが、同時に、技術者である千春と、機械を使って戦闘を行うエイミーにとっては学ぶものが多いようだ。


 戦闘に使うものばかりを見ても、少々分かりにくい部分がほとんどだ。

 その反面、ライフラインの確保と言う『分かりやすく定まった目的』の機械は、言うならば『単純さを極める』ことでその性能を向上させるので、『技術』がみえるのである。


「へぇ、こうなってるんだ」

「すごい設計ですね」


 千春とエイミーはその機械と、設計図を見ている。

 専門の記号やら用語が盛り沢山であり、傍目には何が書かれているのかわからない。

 ついでに言えば、ジークも何が書かれているのかわからない。


「あの、これって誰が書いたんですか?」

「今はもうユニハーズを抜けたメンバーが書いたものだと言っていたな。圧倒的な技術を持っていて、沙羅さんが弱みを握って連れてきたと言っていた」

((大丈夫なの?それ))


 二人としては若干不安である。


「とはいえ、今はもうその弱みの証拠は潰されてなくなっているから、その人も抜けたそうだがな」

「でも、なんだかすごいわね。私達だと、技術的に再現不可能なレベルだし」


 再現不可能といえど、参考にすらならないわけではない。

 まあそもそも、できないからと言って研究を放棄などしていたら、魔法具の開発などやっていられないのだが。


「そういえば、ジークさんって、エインズワース王国の王子なんですよね」

「まあ、母親は違うが、弟が国王をやっているくらいだしな。その通りだ」

「なんでユニハーズに入ったんですか?」

「すごく大雑把に言えば、父親の借金だ」

「……じゃあ、エインズワース王国の前国王も、ユニハーズに所属していたんですか?」

「いや、所属はしていなかったようだが……エインズワース王国の主要な収入源である魔石産業の構築にブレがあってな。その時の修正のためらしい」


 エインズワース王国は魔石の鉱山から魔石をほって、それを輸出することで多額の資金を得ている。

 言うならば、『魔力』を売っているようなものだと思えばいいのだが、この量が圧倒的に多いのがエインズワース王国だ。


 今では発電所の燃料として、環境への影響が少ない新エネルギー源となっている。

 もともと雷属性の魔法が存在するので、その管理方法も確立されており、秀星たちが進級した四月までに、かなりの工場ができたようだ。


「魔石鉱山ですか……そういえば、新エネルギーとして期待されていて、石油産出国が黙っていないって聞いたことがありますけど……」

「それは過激派の被害を受けたものたちや、魔石しか見ていないものたちの偏見だな。石油は、魔力と根本的に無関係でありながら革命をもたらしたものだぞ?ならば、魔力そのものと合わせたり、魔法と一緒に使うことで、さらなる効果を出そうとするものがいても不思議ではないだろう」

「あ、その発想はなかった」

「石油産出量が一位のアメリカでは既に研究が大詰めだ。魔石の鉱山でなりたっている国々は、アメリカの外交官と必死に交渉中だぞ。まあ、アメリカの方の交渉力が強すぎてボロ負けしているようだが」

「アメリカって強い……」

「ちなみに、日本で有能な研究者がアメリカに流れているのも変わらないぞ。秀星が世界樹商品の販売をすることで一時的に売上トップとなる国が日本になったが、もうそろそろ抜かれるだろうな」


 そういえば、とエイミーは思い出す。


「魔石産出国がアメリカに絞られそう。と言ってますけど、実際、エインズワース王国との関係ってどうなるんですか?」

「気になるんだな」

「私がアメリカ人で、アレシアがエインズワース王国の王女なので……」

「なるほどな……安心しろ。アメリカはエインズワース王国をなめていないからな。特に、前国王が抱えていた官僚たちがバカにできない」

「あ、なるほど、なんとなくわかりました」

「……ねえ、機械の話はしないの?」

「あ。ゴメン」


 最初は機械の話だったのに、いつのまにか政治的な話になっていた。

 まあ、正直なところ、女子が二人いればそりゃそうなる。

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