第四百六十六話
秀星が気になるといった草太の話だが。
第三班に割り当てられたユニハーズとして、彼は雫、アレシア、風香の三人と行動していた。
「ハッハッハ!時々思うけど、秀星君はこんなかわいい子たちと一緒に行動していて何もないなんてすごいね!」
糸目でへらへらした雰囲気の草太だが、彼が持っている袋の中には、日本の本州で売りさばけばそれだけで大きな資産になりそうなものが多数そろっている。
さすがに、秀星が管理している世界樹から獲得できるアイテムたちには及ばないし、数だって圧倒的に少ないので商売などできないが。
「そうなんだよねぇ。基樹君は美奈ちゃんと交際してるって言ってたけど、まあそれはそれとして、秀星君って綺麗なメイドさんがいるけど、恋愛とかって聞いたことないなぁ」
呪いの装備である剣を構えながら、雫はそういった。
「確かに、それ相応に剣の精鋭に所属してから長いですが、あまり浮ついた話は聞きませんし……」
アレシアとしても気になるところだ。
というか、自分の祖国であるエインズワース王国までいって、実際に戦闘の指南までしてもらっているのに、何も発展しなかったのだ。
もうここまで来ると、恋愛など全く考えない方向でどうにかするしかないだろう。
まあ、秀星という男は頼りにはなるが恋愛対象としては続かないのが現実といえば現実だが。
「……思えば、妹には彼氏がいて、姉には夫と息子がいるんだよね。一つの家族の中で、この差は何なんだろう」
風香がつぶやいて、それを聞いた三人は『ああ、確かに』と思った。
姉と妹にはすでに相手がいるのに、男の秀星には相手がいない。
確かにメイドはいるが、交際相手としてはちょっと違うし、そもそも秀星もセフィアのことを恋愛対象としては見ていないだろう。
「まあ、ここで話しても答えは出ないだろうね」
草太はそう言って、近くにあった薬草をちぎってとった。
「……そういえば、草太君は薬草採取が担当なの?」
「そうだよ。そして、任務成功率が100%なのは僕だけなのさ!」
「ごめん、他の人がやってること知らないから比較できないね」
「あ、サーセン」
というわけで、更に薬草を拾う草太。
「……特別な薬草をめちゃくちゃ集めてるんですね」
「そーだね。だって、普通に取れるものなんて、わざわざ行く意味ないよ。だってアジトで栽培してるもん。結果的にガーデニングみたいになったけどね」
「では、あの草原は……」
「僕と高志さんで植えました。高志さんは八割で」
かわいそうに。
「特別な薬草ばかりを集めている僕だけど、薬草採取だからといって舐められたりはしないよ。特にここではね。まあ、ここに来る前は馬鹿にされてたんだけどね」
当然のことだが、採取するということは、それがある場所まで行かなければならない。
しかし、秀星のように転移をほぼ無条件で使えるようなものでなければ、誰もが苦労せずに手に入れることができるものしか採取できないだろう。
そもそも、日本の本州は開発が進んでおり、あまり採取に適した場所はない。
「まあ、普通に薬草採取であっても、僕にしかできないことがあるから、食い扶持がなくなるわけじゃなかったけど」
そう言って、草太はその辺の薬草をちぎった。
三人に見せる。
その薬草は、とてもキラキラと光っていた。
「……一体、何が……」
「薬草をちぎるときにうまく魔力を流し込むと、品質が上がるのさ。これが最高品質だよ。ちゃんと相手を選んで売れば、一枚で千円くらいになる」
「薬草って、普通なら一枚で五円から十円くらいだよね」
「まあ、そんな相場だから、こういったことができると金になるわけさ」
そう言って、草太はその薬草を袋に入れた。
「……ねぇ、思ったんだけど、モンスターが全然出てこないよね」
「そう言われるとそうですね」
「タイミングが悪かったのかな?」
森に入ってから、まだ一度もモンスターに遭遇していない。
当然だが、普通はありえないことだ。
「……フフフ」
首を振りながらウンウンと唸っている三人を尻目に、草太は微笑むのだった。




