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第四百五十三話

 組織と言うものは、『トップが崩れる』か、『絶対負けないと思われていたやつの敗北』によって意味をなさなくなる。


 そもそも、『襲撃』というものが『集団』で行われる場合、そこには理由がある。

 襲う方だってタダではないのだ。きちんとコストを支払っている。

 だからこそ準備を整えているのだが、裏から物資を確保するとなると制約が多いので、失敗は厳禁なのだ。

 『アーク・テーゼ』がトップの二人の脱落によってその意味をなさなくなったのは明白である。


「ふう、やっと酔いがさめたぜ」


 高志はベンチに座ってぐったりしている。


「そういや秀星、襲撃があったような気がしなくもないんだが、結果的にどうなったんだ?」

「……」


 秀星は『マジで本当に覚えてないのか?』という目線だったが、残念なことに高志は大まじめである。


「……どうしたんだ?秀星」

「いや、本当に何も覚えてないんだなって思っただけ」

「俺は酒を飲むとああなるんだよなぁ……秀星もそうかもしれないから気を付けろよ」

「エリクサーブラッドでアルコールが効かない」

「あ、お前の場合はそうなるわけね……」


 親子でずいぶんと違うものである。

 だからこそ、高志が話すのは、『絶対に同じ部分』の話だ。


「まあでも、俺とお前で同じって言う部分もあるだろうな」

「例えば?」

「恋愛関係」


 高志の言い分に秀星は黙った。


「俺もよく分かってないんだが、朝森家の男って、大体、愛するにしても愛されるにしても長続きしないんだ」

「……なんとなく分かる」

「もちろん、『恋愛』が直接は影響しない愛……例えるなら家族愛か?そう言ったものはしっかりあるんだが、異性を引きつけ合うような恋っていうのは長続きしない」


 秀星は腕を組んで考える。

 のだが、高志はただしゃべるだけ。


「秀星。お前もいろいろなやつを助けたはずだ。だが、恋愛的な意味で何かを勝ち取った記憶はあるか?」

「いや、憧れとか、頼りになるとか、そういった好印象はあるけど、恋愛的なものはないな」

「まあ、あまりにも俺たちがあっさり片付けるのも理由にはあるけどな。だって、『自分のために本気で頑張ってくれた』なんて思われたことねえぞ。俺」

「それもそうだな」


 誰かのために行動することがない。ということはありえないが、それに対して本気で取り組んでいるかとなると、秀星は首を横に振るだろう。

 そうなれば一瞬の感情など、変な落ちどころを見つけて勝手に消える。


「何らかのスキルの副作用もあるって考えてるけどな。ただ、その余計な部分は沙羅には通用しなかったみたいで、俺は普通にデート行ったけどな」


 そういって笑う高志。

 秀星は、この男がまともなデートコースを選べるとは到底思えなかった。


「……デートってどこに行ったんだ?」

「海底神殿」


 ほらね。


(いや、予想の斜め上だったわ。なんでそんなところに行くんだよ)


 なかなか意味不明だ。

 海底神殿に行こうと言われたときの母さんの心境が知りたい。

 が、聞いても話してくれそうにない。

 ただ、一般的なデートコースを決めるとなったときに、最高に参考にならないことは理解した。


「そういや、来夏も夫とデートに行ったりして最終的に結婚したっていってたな」

「……」


 確か来夏の場合、初対面が告白という意味不明な状況だったはずだ。

 一応デートはやったわけか。


「来夏どこに行ってたんだ?」

「香港」


 夜景が最高じゃないか。来夏ってそういうの選べるのか。

 ただ……デートコースに海底神殿を提案する男と、香港を選ぶ女って会話が通じるのだろうか。

 非常に気になるが、おそらく解説されても理解できないのでスルー。


「話戻すけど、お前もいい相手を見つけたほうがいいぜ」

「そんな内容だったっけ?」

「多分」


 秀星も高志も首を傾げるが、正確に戻したところですぐに変わるので意味はない。


「ま、恋愛に関してはしっかりやれよ。女ってのは怖い生き物だぜ?たまに海外で猛牛を相手にしているような人がいるけど、そう言う奴らも大体、一番怖いのは女っていうくらいだからな」

「……父さん。いろいろな人を敵に回してないか?」

「父さんはそうして生きてきたのさ」


 キラッと決める高志。

 秀星は自分で振っておいてなんだがスルーした。


「まあ、細けえことはいいや。そういや最近、『OES』ってのが発見されてるらしいな」

「ああ、魔力とは違う別の形の力だと俺は思ってる」

「いろいろあるとは思うが……秀星。お前は、最強のOESって何だと思う?」


 秀星は腕を組んで考えた。


「……『なんの制限もなく、自由に神器を使えるスキル』じゃないか?」


 それを聞いた高志の返答は、もちろん、『爆笑』であった。

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