第四百五十一話
「うわああああ!た、助けてくれええ!」
「ヒイィ!何なんだよこいつら!」
「じ、神器が全く通用しねえぞ!」
「馬鹿な。こ、こんなことあるはずが……」
アーク・テーゼのメンバーは、その殆どが神器持ちである。
トップの二人に至っては最高神の神器を使用しており、圧倒的な基本性能が存在するのだ。
上位神や下位神の神器を構成員は持っているわけだが、神器であることに変わりはなく、通常の魔法と比べてしまうと、『優先順位』で必ず勝てる。
だがしかし、その『通常の魔法』に対してのみその優先順位を発揮するのが神器であり、秀星やアトムが近年確認している『OES』に対しては発揮されない。
細かいことをごちゃごちゃ言っても仕方がないので、何が起こっているのか簡単に説明すると……。
「ハッハッハ!かかってこいやあ!……ウプッ」
「だっしゃこいやオルア!……オエッ」
まだ酔っ払っている二人が無双していた。
この文だけ聞くとあまり大したことがないように聞こえるのだが、暴れているのは高志と来夏である。
バカ二人である。ビルをシャカシャカしたりお手玉したりするのだからバカ認定でいいだろう。
「うええ、気持ちわりぃ」
「エチケット袋どこに入れたっけなぁ」
調子に乗って樽でイッキなどするからこうなるのだ。
さて、それはそれとして……。
「くそ、こんな奴らがいるなんて聞いてねえぞ」
「どうする。このままだと、生成装置も本も手に入らねえぞ」
まさかすでに片方がぶっ壊れているとは夢にも思うまい。
「あ、彼らの目的は生成装置と本だったんですね」
エイミーが装備をときながらそう言った。
「あれ、たしかに生成装置ってぶっ壊れてなかった?」
「図書館も、一撃で爆破できるように設計されてるって聞いたけどね」
千春が言って、雫がそれに反応する。
ちなみに千春。来夏と高志が来たあたりから、整備用の道具に手入れを始めている。ぶっちゃけめちゃくちゃ余裕である。
だが、それを聞いたアーク・テーゼの面々は溜まったものではない。
『じゃあ、一体俺たちはなんのために襲撃しているんだ?』
全員がそう思ってしまうわけだ。仕方のないことである。
こういう状況……というより条件だと、とりあえず撤退したのち、人質を使うのがいいだろう。
魔法社会が表になったことで、犯罪者も主張しやすくなったのだ。
大きく公表すれば、政府は人質を助けることを優先しなければならないので、交渉で有利になるからである。
……秀星のようなやつがいると、人質がきちんと人質になってくれないわけだが、それはこの際おいておこう。
「さてと、次はあいつらだな」
高志と来夏が襲撃者たちを見る。
青ざめる襲撃者たち。
襲撃者たちがそれ相応の覚悟をしているのか、悪いことをしている自覚があるのかどうかはともかく、『やりたくないくたばり方』というのはある。
メットをぶち割られる程度ならまだいい。
だが、そのうえでゲロをぶっかけられるのはさすがに勘弁である。
そのため、彼らがとった行動は……。
「総員退避!」
「「「「うおおおおおおお!」」」」
敵前逃亡であった。
ちなみに、すでにゲロをぶっかけられた奴は見捨てることにする。
気にしていたら何をされるかわからない。
「「まてえええええ!」」
そしてバカ二人が追いかけてくる。
……異常な速さで。
「「うわあああ!」」
「「あっはっは!」」
強く、自分勝手なものは笑う。
弱く、ただ悪いだけのものは蹂躙される。
世界の真理である。




