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第四百三十八話

「さて、乱戦になっている部分がそれなりに多い。と言ったところか」

「その様ですね。それでいて、既に退場された方も多いようです」


 地下に広がっている空間が広い今回のマップ。

 その深部では、宗一郎と聡子の二人の生徒会長がいた。


 宗一郎が神器の鎧を身に纏っており、聡子も扇子を持っている。

 さらに言えば、かなり広い空間になっているのだが、明らかに破壊の痕があるので、すでに何度も衝突しているようである。


「さて、そろそろ、なんでバトルロイヤルをしようとしたのか聞かせてもらっていいか?」

「あらあら、何かあると?」

「あると思われても仕方がない立場だということは分かっているだろう」

「フフフ。最高会議の五人の一人ですし、そう言うことにしておきましょうか。簡単に言えば、バトルロイヤルをしようという案は、秀星さんのお母さんである沙羅さんからのお願いです」

「秀星の母親から?」

「はい。まあ、沙羅さんから聞いている理由としては、『備え』だそうですよ」

「備え。か」


 要するに、何かが来る。ということなのだろう。

 そしてその何かのために、今回のバトルロイヤルで得られるものが必要。ということだ。


「秀星の母親が何を考えているのかわかるのか?」

「いいえ、私には全く分かりませんよ。ただ、私が知る限り、嘘を吐いたことはありませんから」

「要するに詐欺師ではあるのか」

「そういうことです」

「肯定していいのか?」

「あとで怒られそうな気がしなくもありませんが、まあいいとしましょう」


 どうやらそう言うことらしい。


「このバトルロイヤルで得られるもの……か」

「このバトルロイヤルで得られるものの全貌は見えていませんが、沙羅さんが備えと言ったのですから何かあるのでしょう。とはいっても、こちらの基樹君とそちらの秀星君の対決でどのようになるのか。と言う状況になると思われますが」

「だろうなぁ、出力があって派手、なおかつ守る部分はすべて守って攻防を仕掛けることを徹底しているのはあの二人くらいだ。私のでもあそこまではやらない」

「そうでしょうね。それは私も同様です」


 そう言った空気だが、宗一郎にはまだ気になることがあった。


「先ほどから気になっているんだが」

「なんでしょう」

「何故、沙耶を胸に抱いているんだ?」


 来夏の娘である沙耶。

 首もすわっており、普段なら思いっきりはしゃぎ回っているところだろうが、今は聡子の胸でおとなしくしている。


「作戦会議中に窓から入ってきまして。女子生徒にもみくちゃにされた後で私のところに来ました」

「……元気な子だ」


 実の母親よりも母性が強いのだろうか。


「来夏さんは全身汗だくでも沙耶ちゃんを抱きしめますからね」


 地獄である。将来絶対に嫌われる。

 というか、聡子がやってくるのに合わせて来るあたり、すでに嫌われている可能性がある。


「ところで、私は沙耶ちゃんと抱きしめたままでも戦えますが、どうしますか?」

「……すでに『悪魔の瞳(ラプラス・アイズ)』が使えるから面倒なんだよな」


 宗一郎の神器は、同じ神器使いが相手でも戦術を左右出来る種類の性能を持っている。


 なお、高出力の攻撃は確かに普段からしているのだが、気配を消して奇襲するのはもっとも効率がいい。

 成功率が高ければ尚更だ。

 秀星のように脳を強化する神器を持っていないゆえに宗一郎本人の処理能力は高くはなく、基本的には『ショートカット』の項目を作っているのだが、バトルロイヤル形式なので、最高神の神器を持つ聡子を処理するために、いくつかの奇襲パターンを作ってショートカットを組み上げてしまった。


 それはそれでいいのだが、宗一郎に取って想定外だったことが二つ。

 まず、聡子が沙耶を連れていたこと。

 そして、沙耶の『悪魔の瞳(ラプラス・アイズ)』が、宗一郎の神器の隠蔽を突破すること。


 スキルは特別なものであっても遺伝する可能性がある。という情報は、玉石混交だがいくつものデータが飛び交っている。

 宗一郎としては、『法則は見つかっていないが、概ね遺伝しやすいとみていい』というものだ。

 沙耶が来夏のスキルを使えることそのものに疑問はない。

 ……すでに使えるというのが意味不明だが、あの来夏の娘なので普通ではないだろう。


「なんでスキルで神器を突破できるんだか……」

「可能性としては、OESだからなのでは?それに、あなたも本気の隠蔽を使っている訳ではないでしょう」

「それもそうだな」


 奇襲戦法を考えてきたのに、全然うまくいかない。

 他の方法ももちろんあるのだが、聡子が相手だと効果が薄い。

 もともと、聡子の神器のせいで出力が大幅に落ちるのだから当然だ。

 それに加えて、最も効率がよさそうな奇襲すら完璧に見破られるとしたらどうしようもない。


「正直……面倒だ」

「私も、沙耶ちゃんがいなかったらいろいろ考えているところですが、沙耶ちゃんはすごいですもんね~」

「う~」


 沙耶が急に、聡子の右側に手を伸ばす。

 聡子は右側を見る。

 そして、水の弾丸を発射。

 隠していた銃口の魔法陣が砕け散った。


「だから何でばれるんだ……」

「これに関してはどうしようもありませんよ。フフフ」


 沙耶、強い。本当に赤ん坊か。

 そう思っているのは、もちろんお互いである。

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