第四百二十六話
「あいつらは遊びに来たのか。それとも暴れに来たのか……エネルギーはどこから捻出してるんだろうな全く」
秀星はマシニクルを向けて、割れた空間を修復する。
割る方も割る方だが、治す方も治す方である。
それはそれとして、高志と来夏の鬼ごっこがなかなか終わらなかったので、空間が至るところでひび割れまくっていた。
ちなみに女子更衣室はおろか、女子用のシャワー室にまで被害があったので、高志は何度かラッキースケベに遭遇しているはずだ。しかもかなりやばいジャンルに。
まあ、あとで制裁が待っているのだろう。
もちろん、秀星は女子更衣室には入らない。そもそも、女子生徒から報告を受けて初めて知った。
ので、マシニクルの付属装備を渡して、ひび割れた空間に向けて撃てば修復できると説明して行かせた。
驚いた様子の声が聞こえたので普通に成功しているようである。まあ当然だが。
もちろんすぐに返しに来ました。
修復用の波動しか出せないように設定していたのだから持っていてもあまり意味がないということもあるが。
「父さん本当に何やってんだ」
バールで空間をぶち割った場合、行き先はランダムになるようだ。
それはいい。
だがそれでも言いたい。ランダムなら使うなよと。
「そもそも、ランダムがどうとか言ってるけど、ひび割れてつながった先が全て学校の敷地内になっている時点である程度コントロールできてるんだよなぁ」
ランダムというのは文字通り結果が決められないことだ。
ただし、投げ方によってサイコロの目をずっと『1』にし続けることができるとするならば、今回のこれも同じである。
まあ、本人も絞れているようで絞れていないようなので、サイコロで言えば、特定の数字の二つか三つを出そうとしているようなものだろう。実際はもっと複雑だが。
「しかもいろいろやりだすし……隠れんぼにあっち向いてホイか」
いずれもスキル的に来夏が有利だと思っていたら、意外と接戦だった。
最も、高志は勘だが。
「さて、修復はこれで終わりか……そういや今日は学生たちが視力検査をやっていたような……」
ちなみに秀星はスルーされた。
「……ん?父さん。壁に張り付いてなにやってんだ」
窓ガラスから高志が覗き込んでいた。
秀星はちょっとだけ聴力を解放。
かなり音が耳に入ってくるが、聞き分け能力がすごいのでちゃんと聞こえる。
『はい、じゃあこれとこれ』
どうやら担当の先生は二つを示したようだ。
早く終わらせようという魂胆が見え見えである。
『えーと……』
見ているのは男子生徒のようだ。
小さいのだろうか。若干唸っている。
だがここで、高志叫んだ。
『頑張れ!緑色の髪の嬢ちゃんの胸と一緒だぞ!』
『ええと……右が2つ?』
『私の胸はEじゃなくてFです!……あっ……』
こんなやり取りが聞こえた。
「風香、かわいそうに」
まさかクラスメイトの前でカップ数を暴露とは。
『ウヘヘ。風香ちゃんの胸は大きいんだねぇ』
『雫ちゃんのは私より大きいでしょうが!』
『言ってて悲しくないのか……』
『私には遠い世界の話ですね』
そんな声も聞こえる。
とりあえず秀星はスマホを取り出してコールした。
一回でつながる。
『はいもしもし、秀ちゃんどうしたの?』
「父さんがセクハラしてる」
『……………………………………………………わかったわ』
とても長い間があったが、秀星は気にしないことにした。
「さてと、ひび割れた空間の修復のあとは……はぁ?『ねじった空間の修復』って……」
宗一郎からのメールによると。
『どうやら高志が、『隠れるところがないのなら、空間をねじって壁にすりゃいいんだよ!』と言いながらねじったようなので戻してほしい』
とのことである。
ちなみにねじった結果は『余計に目立った』である。当然だ。
「……とりあえず直しに行くか。放置しても仕方ないし」
そう言いながら歩き出す秀星。
今日も沖野宮高校は平和である。
高志と来夏さっさと帰れ。




