第四百二十四話
授業参観がスタート。
魔法学校の授業といえど、専門用語が多いかとなれば分野による。
そもそも秘匿傾向にあった魔法は、特殊なライセンスがないと入れないサーバーなどで情報収集するわけだが、有名な魔戦士のスキルだとかそういったものではない限り、『ちゃんと意味が定まっている』ということは少ない。
ファイアボールだとかアイスランスだとか、シンプルなものの場合はだいたい同じだ。
しかし、厨二チックな名前になってくると、同意語的な問題が出てきてわけがわからないのだ。
一つの文をどこで切るかによって意味が変わることなど日本語ではよくあること。
まあ、そんなことはいい。
そもそも魔法学校の役目は『生徒の前提を揃える』というものだ。
普段関わらない魔戦士と共闘する場合に混乱を招かないために教えるのである。
なので小テストもバンバン出る。雫にとっては地獄である。
そこもいい。
問題なのは……。
「魔法を使って戦う場合、その多くで注意するべきなのは場所取りだ。一般的に普及していて、人工物、自然に影響なく攻撃魔法を使う場合、魔法使いっていうのは『中距離爆撃』って感じになる」
真っ白の霧のようなもので狼の形をしたミニチュアを作ってフヨフヨ浮かせて、その近くに黒い霧を使って魔法使いのミニチュアのような何かを出現させて説明する秀星の姿がそこにあった。
そう、彼は今教壇にたっているのだ。
担任教師は本日出張である。
(なんで俺こんなことやってんだろうな……)
秀星はそんなことを考えていた。
「秀星!俺は魔法なんて使わなくてもワンパンだぜ!」
「父さん。授業の邪魔をするな」
相変わらずバキバキの白装束で教室の後ろにいる高志。
周りにいる保護者はドン引きである。
なぜ母さんが来なかったのか。
答えは簡単。
高志のギャグ補正が強すぎて復活が早い上に、スーツに着替えさせてもいつのまにかいつもどおりの白装束になっている。これは本人の意思に関係なく自動である。
そういえば父親の高校の同級生での集合写真でも一人だけ白装束だったような気がしなくもないが、秀星は思考を放棄した。
「父さんは放っておいて……で、その中距離火力の魔法で、パーティーを組んで立ち回る場合、普通に使うだけだと威力が足りない。付与でも何でもいいから、威力を上げることが必要だ」
「秀星!弱い魔法でも弾幕作戦を決行すればいいと父さんは思うぞ!」
「うるさい。指摘は間違ってないけど」
「なら大丈夫だな」
「免罪符になるかバーカ」
嫌になってきた秀星だが、どう言っても治らないので仕方がない。
ちなみに、一度窓の外から放り投げたのだが、掃除用具入れのロッカーから出てきたので諦めた。
「弾幕作戦だが、確かにザコモンスターを殲滅するのには使えるが、弱い魔法を完全に制御して、連続で打つ必要がある。あと根本的な問題だが、その低威力の魔法が効かないようにバリアを張ってくるモンスターもいる。特殊な付与がないと削れないバリアを使ってくるやつもいるから、弱い魔法だけを使うのなら、徹底的に『器用』になるべきだ」
「あーわかるな。そういうやつがひとりいると結構楽だぜ」
「父さん。授業参観であって授業参加じゃないから黙っててくれない?」
言ってることは間違っていない。
間違っていないのだが、なぜそれを授業中にペラペラしゃべるのか……。
とりあえず監視カメラで撮ってるから後で記録映像を母親に送っておこうと思う秀星であった。




