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第四百二十三話

「秀星!暇だから来たぞ!」

「……」


 参観日。というものをご存じだろう。

 学校に親が来て授業を見るのである。

 子としても嫌だが親としても面倒だろう。

 別に行くことを強制されることはほぼないが、授業参観の後に何かしら保護者会のようなものを設けることで『授業参観は実質おまけ』みたいな状態のところもあるかもしれない。

 というより、『魔法学校になる前の沖野宮高校』はそういう状態だった。


 だがしかし、魔法学校となった後では話が違う。

 誰もが、『魔法学校の授業って具体的に何やってんの?』と思う人が多いのだ。

 学生の中には元から魔戦士だったものが多い学校でも、学生としては一般科目の勉強をするだけで、魔法関係は独学。

 教科書を実際に使って授業をするのは機密指定された領域であるメイガスフロントくらいで、ほかの学校ではそうではなかった。


 さらに言うと、基本的に魔法学校の中は機密部分が多く、外部からの干渉はかなり難易度が高いのだ。

 誰がどう見ても武力なので当然。

 結果的に、『魔法学校の授業の実態』を知る者は少なく、子供がどのような勉強をしているに限らず、親の世代は知らないというパターンが多い。


 だが、沖野宮高校は、魔法学校となってそれら専門の資料が図書館にも並び始める中、通常通り授業参観が行われる。

 アトムたち最高会議からすると、『秀星がいるうちにいろいろ無茶をしておきたい』というのが本音だろう。

 ぶっちゃけてしまえば、これはすべて『実験』なのだ。


 まあ、そんなことはどうでもいい。


「父さん。授業参観だから『来ること』は否定しない」

「ふむふむ」

「けどな。なんでバキバキの白装束でくるんだよ!しかも頭にハチマキ巻いたまま!」


 秀星の父親である高志が沖野宮高校に降臨した。

 のは別にいいのだが、『リクルートでいいからスーツで来いや!』というのが秀星の本音である。

 想像しただけでも、スーツ姿で並ぶ保護者の中にこんな一昔前の暴走族みたいなのがいたら目立つことこの上ない。


「……この人が、秀星先輩のお父さんですか?」


 そして秀星にふらーっとついてきたのは剣の精鋭メンバーではなく奏である。

 相変わらずかわいらしい雰囲気でひょこひょこついてきた。

 的矢がハラハラしながら遠くからこちらを見ている。


「おう!俺は朝森高志!秀星の父親だ!」

「あ、ぼくは上月奏といいます」

「ほう……女みてえな顔してるな」

「……よく言われます」

「まっ、がんばれよ」


 だが、ポンポンと奏の頭をたたいて、そのまま撫でる高志の顔は笑顔である。


「ん~♪」


 奏も気持ちよさそうにしている。


「やっぱり秀星先輩に似てます!」

「そりゃそうだ。俺は父親だからな!」


 手をぱっと放す高志。


「あ……」


 名残惜しそうに頭を触る奏。

 本当に男なのだろうか……。


「で、秀星、お前のクラスの教室ってどこだ?」

「三階の一番北側」

「……あれか?」


 一つの教室の窓を指さす。


「逆」

「あっちか。よし、確認したぜ。ドアぶち破りながら突撃した時に関係ないクラスだったら迷惑だからな」

「関係あるクラスでも迷惑に決まってんだろ!」

「いいんだよ細けえことはな」

「今から自分がやるって言ってることだぞ!」

「……さっきの発言が冗談だとは微塵も思わなかったのか?」

「思わなかった」

「お前は俺をなんだと思ってるんだ?」

「来夏みたいなやつ」


 的を射ているのか、来夏に失礼なのか、どっちだろう。


「その来夏って誰だ?」

「俺が所属してる『剣の精鋭』のリーダーだ。魔法とスキル無関係のバールで空間跳躍できる」

「あ、俺もできるぞ」

「マジで!?」

「俺以外にもそんなこと出来る奴いるとはなぁ」


 会話を聞いていた奏が絶句している。


「え、あの……バールってそうやって使うものでしたっけ?」

「違うぞ。金庫をぶち破るときに使うんだ」

「違うわ!土木工事だろ!」


 強盗犯のようなことをいう父親である。


「……そうだな。金庫なら秘密で合鍵作成して開ける方が速いし」

「そういう問題じゃないだろ。ていうかやったことあんの?」

「俺が言う金庫は銀行にあるのじゃなくてダンジョンにあるものだぞ」

「え、ダンジョンって宝箱はあるけど金庫ってあるの?」

「あるぞ。カスダンジョンでもラスボスフロアの奥の隠し部屋にある」

「あ、回収する前にダンジョンが機能停止するな」

「それが原因で手に入らないことが多いんだけどな。まあ、中身もかすってパターンがそれなりに多いけど」


 言いかえるならちょっとした臨時収入である。


「とにかく、俺は参観日に授業を見るからな!というわけで先に行ってくれ。もうすぐ授業始まるぞ」

「……突撃してくるつもりか?」

「フフフ……」

「実はこの会話、母さんにつながってるぞ」


 秀星は『通話中』と表示されているスマホを取り出す。


「すみませんでした!」


 変わり身の早い父親である。


「ふう……奏、行くぞ」

「え、いいんですか?」

「そろそろ母さん来るかもだから」


 というより、授業参観には母さんが来て父さんが来ない可能性もある。

 理由は語らずともわかる。


(参観日ごときになんでびびらなけりゃならんのだ)


 秀星は内心でも実際にも溜息を吐くのだった。

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