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第四百二十二話

「チキショウ……」


 秀星はぐったりしていた。

 なんだか鈴を鳴らして『チーン』と響いていそうな感じになっている。


 植林というか植森していた様子の高志たちだが、秀星が吹っ飛ばしたであろう樹の中に、母さんが植えたものがあるのでは?という高志の言葉を聞いて、秀星は『!?』と思うよりも早く、転移魔法を起動して本州に帰った。

 具体的には、自分以外の転移を拒む結界を張った自宅に。


 驚いたのは……帰るとすでに母さんがいたことである。

 本当に驚いたのだ。

 自分以外の転移を拒む結界とあるが、秀星は実力的に世界一位であると同時に、世界樹商品の販売を行っているため秘密も多く抱えている。

 もちろん、重要な書類はもっともっと深いところに保管している訳だが、自宅そのものはそうではなかった。

 が……。


『なあ母さん。どうやってはいったの?俺以外の人が転移で来れないように設定しておいたはずなんだけど……』

『フフフ。答えは簡単よ。私そのものの情報を私ではなく秀ちゃんに変えたのよ。こうすれば、秀ちゃん以外の存在を拒む結界でも入れるでしょ?』

『……』


 分かりにくいと言う人に対して簡単に説明すると、

 『A以外は通さない』

 『自分はBである』

 『なら自分をAと言うことにしよう!』

 これを有言実行である。


 だが実際のところ、秀星はそういった『情報改変』の対策もしていたのだが、何故かそれが働いていない。


『ウフフ。お母さんは秀ちゃんが考えていることは全部わかってるんですからね』

『……森吹っ飛ばして申し訳ございませんでした』


 秀星が異世界から帰ってきて初めての土下座が炸裂した瞬間であった。

 子供にとってはどんなことだろうと関係ない。

 普段怒らないお母さんが怒ると怖いのである。

 だが、他人の怒りとは違い、母の怒りと言うのは自分の心の中に直接攻撃してくるのである。

 だからどうにもできないのだ。

 こればかりは、エリクサーブラッドでも理解できない精神領域の話なので防御不可能である。


『ウフフ。素直に謝れる良い子に育ってよかったわ。でも、これからはやった瞬間に謝りに来なさいね?』

『はい。ショウチシマシタ』


 母親の目は笑っている。

 だが、その目の奥にあるなんだか形容できない感情が、秀星にはあることが分かるだけで何なのかが分からない。

 純粋に恐怖である。

 母親は子供のことを把握しているものだが、母親に育てられた子供の方は母親のことなどわからないのだ。

 これは母親が理性的であればあるほど分かりやすく出て来るのである。


 要するに何がいいたいのかって?

 秀星にも勝てない人はいるということだ。

 神器があろうがなんだろうが、母は強い。

 それだけである。

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