第四百十八話
「なあ父さん」
「なんだ?」
「拠点に案内するんだよな」
「そうだな」
「なんで俺たち山頂にいるの?」
高志についていき、ドントコ進む秀星。
通り道の傾斜がきついな。と思っていた矢先に、なぜか山の山頂に着いた。
標高は四千メートルくらいである。
「……迷子になったぜ!」
グッドサインとともに宣言する高志。
「……そういや方向音痴だった」
「フフフ。甘いなぁ秀星。そんな大事なことを忘れるなんて」
「お前が言うな。で、どうするんだ?」
「……テヘペロ♪オグッ!」
なんだかキモウザかったので腹に一発入れておいた。
悶絶する高志。
「フフフ。いいパンチだったぞ秀星。さすが俺の息子だ」
「俺、父さんのパンチ見たことないんだが……」
「母さんのは見たことあるよな?」
「ある。父さんが二百メートルくらい飛んで行ったな」
「母さん凄いだろ」
「凄いが、それを常識だと思って過ごした小学校低学年は白い目で見られ続けたぞ」
「サーセン」
現在の秀星はほとんど常識が通用しないくらい成長したが、最初からそうだったわけでは無論ないのだ。
小学校低学年となれば、魔法社会の関係者であっても本腰を入れる前。
まあ、魔法社会であったとしても、基本的に殴っただけで人は二百メートルも飛ばないが。
「こういう時は電話して何とかしてもらうのさ」
「父さんよくスマホ紛失するよな」
「大丈夫だ」
高志はポケットに手を入れた。
そして取り出したのは……ちょっと多めの『砂鉄』だった。
「……スマホ?」
「いやばらばらになりすぎだろ。ていうか待って、マジでなんで砂鉄がポケットに入ってんの?」
「さあ?」
「さあって……じゃあ結局、スマホはないんだな?」
「……そうだな。狼煙でもあげるか」
そして本当に狼煙を準備し始める高志。
秀星は無視して、自分のスマホとマシニクルと取り出して、マシニクルからコードを引っ張ってスマホに接続して、スマホの登録番号から電話を掛ける。
コールは一回でつながった。
「もしもし」
『あら秀ちゃん。久しぶりね』
若い女性の声が聞こえた。
「……あ、母さん?俺だけど、ちょっと迷った」
『今どのあたりにいるの?』
「山頂。傍で父さんが狼煙をあげてる」
『その辺に埋めておきなさい』
電話からその声が聞こえてきたと思ったら、秀星の目の前に大型のスコップが転送されてきた。
「わかった。で、ちょっと信号弾でも何でもいいから打ち上げてくれない?」
『その必要はないわ。秀ちゃんがいるところから南東にまっすぐ二百キロ進んだら拠点よ』
「わかった」
『ふふっ、秀ちゃんが大好きなカツカレーライスパン作って待ってるからね』
通話終了。
さてとりあえず……。
「……なあ秀星。なんで穴掘ってんだ?ていうかそのスコップ。何回か見たことあるんだけど」
それは何回か埋められているということにならないだろうか。
とりあえず人が一人入りそうなくらいの穴ができたので、高志の白装束の襟首をつかむ。
「え、あの……秀星?いったい何をするつも……待て待て待て待て!いくらなんでも実の父親を埋めるってどういうことだおい!」
抵抗してきたので強引に穴の中に押しこんでいく。
「うるさいバカ親父。三日くらい穴の中で暮らして反省しろ」
「ハッハッハ!父さんが三日くらい穴の中で過ごしたくらいでバカさ加減が治るわけあるまい!」
「やかましい。後で山ごと蒸し焼きにするぞ」
「そんな怖いこと言わないで!」
まあ、とりあえず埋めることができたので、手をぱんぱんとたたいて、そのまま南東に向かって一直線に走っていく。
「結構深い森だな」
「頑張って植えたからな!」
「え、父さんたちが作ったの?」
「一本一本大切に植えたんだぞ。全部大きいし、あいつら面倒な作業を全部父さんに押し付けてくるからめんどくさいのなんのって」
「頑張ったんだな」
「おう、で、秀星。南東ってどっちだっけ」
「いま俺が走ってる方角だ」
「方向音痴じゃないんだな。母さんに似たなお前」
「……」
そのとき、秀星のスマホに着信が。
母さんからだ。
「はいもしもし」
『秀ちゃん。南東じゃなくて北西だったわ』
真逆じゃねえか。
「……母さんは方向音痴じゃない的な話してたんだけど」
『ウフフ。昔はそうだったんだけどねぇ。父さんとヤったあたりからちょっと方向音痴になっちゃったかも』
「相変わらず遺伝子が強いなこのクソ親父」
「子供三人の頭髪の配色、父さんと一緒だからな!」
『まあそんなわけだから、待ってるわね』
通話終了。
「……ひょっとして俺も方向音痴なんじゃなかろうか」
「安心しろ。方向は間違ってないからな。人生は間違えまくってるかもしれないが」
「余計にダメだろ」
「安心しろ。父さんは『俺が進む道が俺の道』みたいなノリで生きてこれたからな」
「……だめだこりゃ」
というわけで逆走することに。
「で、なんでもういるんだ?」
「え、その話、いま掘り返すのか?」
「穴掘っただけにな」
「まあいいけど……そりゃ穴に埋められて即効性のコンクリでならしたくらいじゃ父さんは止められないぜ」
そういってグッドサインをする高志。
もう一回どこかで埋めたほうがいいだろうか。
まあ時間の無駄なので進むことにしよう。
「とりあえず拠点に行くか。カツカレーライスパン作って待ってるみたいだし」
「お、そりゃいいな。ていうか、どうやってつくってるんだろうな。アレ」
さて、そんなことを話しながらも、秀星たちは再び走り出した。




