第四百十五話
何らかの事情聴取を行ったうえで、それが秀星に連絡が回ってくる時がある。
そういうときは、大体意味不明なことが発生した時である。
「……作ってるところが分からない?」
『ああ。確かに君が言った通り、不良品であることに間違いはない。だが、このタイプの製品を作っているのがどこなのかがまだ分かっていない』
「……珍しいこともあるもんだなぁ」
『製造そのものは既存の魔法しかかかわっていないのは分かっている』
「だろうな。なんか普通に作れる程度の技術しか使われてなかった。となると、製造されている背景にOESがかかわってるってことだな」
『私もそう考えている』
「……多分、他にもいくつか作ってばらまいてるんだろうな。で、おおもとの奴らはばれてないから調子に乗って今も作っているわけか」
『結果的に今もそれが続いているようだね』
隠蔽系のOES。
それを使っていろいろ悪いことをしている組織がいるということだ。
鑑定や探知を行う魔法は確かに存在するが、OESを認識することができないものが多い。
前にも話したが、既存の魔法による鑑定・探知系魔法は、既存の魔法を発見することを目的として作られているため、OESを探知範囲外にしているだけである。
あくまでも『隠蔽力としての強度』という視点で見るとそうでもない場合がほとんどである。
ただし、魔法的な視点で、これまでしなかった見方をしなくてはならないとなると、はっきり言って『発想力』の問題である。
「捜査が難航してるみたいだな」
『そうだね。これまでしなかった見方をするとなると、これがほとんどの人間にはできないんだ』
「だろうなぁ……で、わざわざ電話で俺に言うってことは、俺にもその新しい見方をして捜査してくれってことだろ?」
『そういうことだ』
「俺の方は大体突き止めてるぞ」
『速いね』
「いや、別に難しくなかったぞ。俺は他の人間が出来ないレベルで物量作戦が可能だからな。セフィアに思いっきり出動してもらって、『隠蔽によって認識できなかった空間』だけをしらみつぶしに当たったらなんかいた」
『君、逆説好きだね』
「結構いろんな発見があって面白いぞ。こういう業界では尚更な。ていうか、アトムもやろうと思えばできただろ」
『まだ大した事故も事件も起こしていない連中に対して大量の人材を派遣できると思うかい?この日本で』
「無理だな」
『そういうことだ。後で場所のデータを送ってくれると助かる』
「わかった」
『それじゃあまた。最近忙しいからね』
通話終了。
「……新学期って忙しいんだな。俺は暇だけど」
秀星はそうつぶやくと、データを送信してあくびをするのだった。




