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第四百話

「……都市だな」


 どうやらパーティー制度が設けられたらしい沖野宮高校。

 そのパーティー申請をしておくと、こういった『現実ではない場所を使うイベント』では、そのパーティー単位で転移することが可能で、後はほぼ全てランダム配置らしい。


 まあ最も、今のところパーティーなど関係なく、敵側で参加する秀星に取って、あまりそのパーティー制度は意味が無いわけだが。


「スマホのマップを見て思うけど、細かく設定されたエリア分けがされてるみたいだな……」


 無論、都市と言ってもバトルフィールドなのでかなり入り組んだつくりになっており、絶望的なほど商業に使いにくそうだが。


「……あ、コール来た」


 番号を見て、秀星はコールに応じて出た。


「……宗一郎。どうかしたのか?」

『なんだか孤独を感じる位置に出てしまってな』


 コメントに困る。と言う感想は心の中で封印し、秀星は通話を続けることにした。


「……一体どこだ?」

『壁がレンガで作られた洞窟のようなところの最奥だ』

「(ラスボスかよ……)俺は商業に使えなさそうな入り組んだ都市の建物の一つだな。高いところに今いるけど、そもそも都市が広くないから周りがよく見えるぞ」

『いいなぁ……場所交代するか?』

「やろうと思えば物理的に可能だが?」

『そういやそうだった……まあ、今のままでもいい』

「……それにしても、敵側になった生徒同士なら通話できるんだな」

『それすらできなかったら孤独じゃないか……』


 ちょっと呼べばセフィアが出て来る秀星とは違うのである。


『……あ、なんかマスコットが出てきた』


 マスコット・セフィアのことだろうか。


『……しばらくはコイツと戯れるか』

「既に精神が病んでないか?」


 秀星の疑問に対する返答はなかった。

 そのまま通話が終了したからである。


「……敵側になった生徒は十人もいない程度か。みんなこんな感じなのかね?」


 思えば、魔戦士と言うのは基本的にパーティーを組んで行動するものだ。

 秀星も、ソロでダンジョンに潜ることはもちろんあるが、それ以上に雫達が一緒に入ろうと寄ってくるし、何よりセフィアがいるので基本的に一人になることはない。


「……思ったより、魔戦士って孤独慣れしてないんだな。セフィア」

「このタイミングで私を呼びますか……」


 もちろん呼べば来てくれるセフィア。

 しかし、その表情は『あいっかわらず空気読まんなこの人』と言っているかのようである。

 この場にはもともと秀星しかいないので空気も何もないのだが、何とも言えないアレである。


「良いじゃん呼んでも」

「まあ別に構いませんがね。ところで、これからどうするおつもりで?」

「最初の方はふらふらして置いていいんじゃないかな?だって丸一日使って行われてるイベントだからな」


 しかも平日を使っているという学生には優しい設定である。


「まあでも、中盤以降はそれ相応に動いた方がいいかなぁ……」

「あやふやですね」

「しっかりしたこと決めたくなかったから宗一郎と毒にも薬にもならない話をしていたわけだからな」


 秀星は封筒をぴらぴらと振った。

 どう動けばいいのか、という指令がかかれたものである。

 というか封筒には『指令』と書かれている。

 秀星は封筒を開けて中身をとりだした。

 半透明なファイルに入った半紙である。

 素晴らしい文字で『臨機応変』とかかれていた。

 かなり達筆であり、有名な先生にかかれたことがかかれている。


「指令がこれしか書かれてないって……一体何考えてんだろ」

「……どうしようもなかったのでは?」

「言いたいことが分からんわけじゃないが、これじゃ責任放棄だろ……」


 秀星としてもこれは想定外だった。

 なんと、『規格外すぎて規制不可能』というのが委員会の結論である。


「多分、俺達みたいなレベルになると、委員会が想定する程度のことなら大体何でも出来るからな。禁止しても他で代用できるから『してほしくないこと』よりも『してほしいこと』が優先的に書かれてると思ってたんだよ俺は」

「禁止事項を列挙していけば辞書が作れそうですからね」

「まあ、そう言う部分があるからさ。そういう『してほしいこと』を書いていてほしいと思ったわけだ。なんだよ『臨機応変』って……」

「……『状況に応じて適切な行動を取ってください』と言うことなのでは?」

「いやまあそうなんだけどね?それであってると思うけどね?適切って何?」

「……さあ?」


 セフィアもお手上げのようだ。

 そもそも、秀星はこのイベントがどのような意図で作られたものなのかを教師陣から聞いたわけではない。

 似たようなことがメイガスフロントで行われているので羽計の意見を参考にしてはいるものの、まさか公式の魔法学校の第一世代である今、そんな長い歴史がある学校と同じことをしたところで意味がない。

 この世代独自の意見と言うものがほしかったのだ。

 だが、秀星個人は何も聞いていないのである。


「まあ、誰かが来るまでは待機か」

「都市は危険。と言った情報が流れたらどうするのですか?」

「そうなったら離れていくとは思うが、別にそれはそれでいいと思うぞ。自爆特攻しても俺が相手だとそんなに意味ないし」

「それもそうですね」

「……普通にお茶でも飲んで待つか」


 イベントは十二時間を超える。

 最初から何ともフルスロットルな学校だが、こう言うのも悪くはない。


(皆なにしてんだろうなぁ……)


 さすがに敵側に回るという指令を受けて、情報も出回れば、ありとあらゆる作戦会議から締め出される。

 あえて聴力も落としておいたので、本当に何をしようとしているのかはわからない。

 とりあえず確定なのは一つ。

 しばらく暇。ということである。

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