第三百九十五話
オリジナル・エッセンス・スキル。OES。
その存在を決めて、そしてそれを奏が持っていると分かった以上、調べておく必要はある。
とはいえ……。
「むふふ、奏ちゃんかわいいねぇ~」
「雫お姉ちゃん。くるしい……」
雫に正面から抱き付かれて、大きな胸で顔面を抱きしめられている奏を見ていると、なんだかどうでもよくなって来るのだから不思議である。
そう言えば一つ忘れていたことがあった。
「おい奏。一体ここで何しグギャ!」
「雑魚の癖に調子乗るなヘブッ!」
「奏の癖にいちゃついてんじゃア゛ア゛ア゛アア!」
間が悪いと言えばいいのか……。
いじめの主犯格である三人組は、秀星たちがいる二年一組の教室のドアを開けると同時に、秀星たちが進級してからよく学校の校舎の中を徘徊しているマスコット・セフィアの正拳によって撃墜されてしまった。
ちなみに最後の一人は彼らのリーダーである。
殴った個所は彼の沽券のためにも言わないでおくが。
この学校はイジメ禁止である。
ちなみに、イジメに関して考えたり、暗躍するのは構わないが、実行はダメ、という判断基準である。
もれなくマスコットによる制裁が付いてきます。
一撃で墜落したいじめっ子たちだが、そのままマスコットに引きずられて教室を出ていった。
「強いね!」
「どうせ調子に乗ってるやつがたくさん入って来るだろうから、これくらいはいれておいても問題はない。って感じらしい。ちなみに、新設された公式の魔法学校にはすべて配備されているぞ」
マスコットたちはいじめっ子を片付けた後、ドアの角からひょこっと顔を出した。
そして、奏に向かって手をひらひらと振った。
マスコットゆえに、頭が大きく手足が短い。
なんだかかなりほほえましい感じだ。
「あ、ありがとう」
とっても素晴らしい笑顔で、小さく手を振って、礼を言う奏。
マスコットたちは顔を一気に真っ赤にして、逃げるように走っていった。
「……(チラッ)」
秀星は窓の外に視線を向けた。
するとそこでは……セフィアが鼻血を流していた。
その横ではオリディアがセフィアを不思議そうな目で見ていた。
(アイツら何やってんだ)
二人がいることそのものに疑問はない。
そもそも家でジッとしているわけがない。そこまで育ちは良くないのだ。
(それにしても……なんとなく分かった)
おそらく、奏が持っているであろうOES。
鑑定スキルに載らないので詳細は分からないが、おそらく『感情の波のようなものを防御不能付きで送信するもの』であると考えられる。
単純にばらまくのではなく、直接相手に送信するスキル。
そのため、感謝の念を受けたマスコットたちが過剰に反応し、そして感覚を共有するセフィアの最高端末にも影響はあった。
しかし、他のすべてのものに影響はない。
秀星と行った決闘では、抱きしめられたり頭を撫でられたりしたことで、歓喜の感情が爆発し、そして秀星に直接送信。
しかも、OESゆえに神器が持つ防御機能が全て通用せず、そのまま秀星に届けられたということだ。
(ただ……直接送信しているだけで、『増幅』の機能はなさそうだな)
ここから分かるのは……。
(まあ、うん。奏はめちゃくちゃ素直な子だってことだな)
秀星はそう結論付けると、スキンシップを再開した雫達を見るのだった。




