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第三百八十八話

 魔法社会の露見から激動の数か月が過ぎた。

 魔法と言うものが世界に取って普通なものになり、それに応じて、様々な技術の中に魔法が混じったものになっていく。

 その『シェイクラッシュ』が続いたのである。


 ちなみに、『魔法』にかかわる上での花形は『魔戦士』という印象がそれなりにある。

 ただし、ほとんどのものが『魔法を混ぜた既存の概念の研究』……言いかえるならスポーツ、芸術、医療などの部分に取り組むことになるのが現状だ。

 当然のことだが、現存する『モンスターが存在する区域』というのは、世界の二割の人間によって管理するに適応した数に抑えられている。

 関わることが出来る人数が五倍になるからと言って、全員が魔戦士になれるわけではない。


 しかし、それでも大いに盛り上がるものだ。

 アトムたちとしても、『まずは致命的ではない失敗をさせた方が抑えやすい』と言う意見を持っているので、この流れは悪くない。


 『魔法と言う存在が裏の社会に広がっている』のではなく、『魔法があることが普通になる世界』


 さて、どうする?


 ★


「おー……初々しい感じだな」


 秀星は学校の屋上からグラウンドを見下ろしていた。

 そこには、真新しい制服を身に纏った『新入生』がいる。


「デュフフフ、かわいい子が多いねぇ」


 秀星の隣では、ジュルリと唾を飲みこむ雫がいる。

 生き生きとした表情だが、雫のことなのでその頭は煩悩オンリーだろう。


「自重できんのかお前は。考えていることが顔に全部出ているぞ」

「アハハ……でも、新入生の皆、表情が生き生きしてるね」

「日本列島の中で、『公式の魔法学校の第一世代』ですからね。好奇心が隠しきれないのは当然だと思いますよ」


 羽計、風香、エイミーの三人も、いろいろ言いながらも、新入生たちに対して思うことはあるようだ。


 エイミーが言った通りだが、『九重市立沖野宮高校』は、『公式の魔法学校の第一世代』として、全く新しいカリキュラムが組まれることになった。

 新しい設備も投入される予定である。

 スペース的な問題についてだが、魔法により重機が強化されるので、前後左右だけでなく上下に新設することが普通よりも楽になっている。


 アトムたち『最高会議』が本当に裏で頑張ったようで、いくつかの学校が公式の魔法学校になっている。

 沖野宮高校が選ばれた理由としては、『既にほとんどの生徒が魔法を取得しているため、新入生のやんちゃに耐えられるから』である。

 アトムたちのことなので、秀星たちの存在を考慮し、さらに宗一郎という神器使いが生徒会長を務めているということを考えれば、どのみち逃げられない運命だろう。


 ちなみに、『公式の魔法学校の第一世代』は全て、『既存の学校の再編成』により発生しているが、沖野宮高校は唯一、校長先生が変わっていない。

 良い意味で『強者の優秀な傀儡』なのが『原因』である。


「そう言えば、『剣の精鋭』がいるから、新入生はかなり厳選して素質がある人を選んでるって聞いたよ」

「私も聞いた。暴れても制御出来るからだと思うがな……」

「厄介者を押し付けられたような気がするのは気のせいでしょうか」

「文字通り厄介者を押し付けてきたと思うよ。ただ、元々魔戦士だった子は少ないみたいだけどね」


 そもそも、二割と言うのは多いか少ないかとなれば微妙な部分である。

 一クラスが四十人だとすれば、五分の一なので八人が該当するという程度だ。

 それで『多い』と思うのならそれで結構だが、『もともと通っているほとんどの生徒が魔法にかかわっている』というのはレアケースなのである。

 上級生がしっかりしている学校、と言う点において、沖野宮高校はやはり候補に上がりやすいわけだ。


「まっ、新入生が何を考えているのかはわからないけどな」

「秀星君はどんなふうに動くつもりなの?」

「俺か?……そうだな。『俺に憧れているやつの前でダサいことはしない』ってことを気を付けるくらいだろ」


 新入生が入って来るまでの間で、秀星が『嫌いなこと』を学校全体に叩きこんでいる。

 言いかえれば『調教』なのだが、それはそれとしよう。

 とにかく、カツアゲや脅迫など、ダサイことはしないように躾ている。

 新入生が誰についていこうとするのかは知らないが、なんせ最初だ。重要だと思ってかかわるのは当然である。


「そういえば、入学式の生徒会長からの挨拶。宗一郎は糞めんどくさそうな顔してたな。仮病で休もうとして英里に鈍器で殴られてたけど」

「いつも通りだね」


 雫が頷いた。

 確実に毒されているが、それは来夏がいるので今更だ。


「さて、元気な奴が多いと面白いんだけどなぁ……」

「秀星君がいるからそんじょそこらの個性だと埋もれるだけだもんね」

「人をそんな『濃い奴』扱いするな」


 全員から『その否定は無理がある』と言った種類の視線を向けられるが、秀星は無視。


「まあでも、ぶっちゃけ楽しみだよ。新入生の厳選はアトムもかかわってるみたいだしな」


 魔法学校の公式化に加えてルールを整備し、そして新入生も厳選している。

 ほとんど、アトムが決定にかかわっているだろう。


(本当の意味で、アトムが作った舞台みたいなもんか。まあ、脚本家の頭がおかしいだろうし、ピエロとして楽しむとしますかね)


 一番余裕があるのは秀星である。

 黒い笑みを浮かべながら、秀星は新入生を見下ろすのだった。

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