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第三百七十二話

 神獣の亀と秀星が戦った映像は何度も再生されたようだ。

 最も、戦った亀が『神獣』だという情報はあまり広く伝わったわけではないのだが、アトムがどこかの筋から情報を流したようである。

 秀星は自分でそう言うことをやらないので、大体情報に何か追加情報がある場合はアトムが原因だ。


 映像として判断できる範囲では、『意味不明』ということだろう。

 一瞬で上空に転移してきたことも、そしてそれを地面に戻したことも、一瞬で砲台を百個も出したことも、最後の一撃で全て終わったことも、何もかもが『意味不明』である。


 しかも、攻撃の一発一発に何かを混ぜているのが分かる。

 ついでに言えば、亀の攻撃は炎の玉が主なものだったが、そこにも大量の情報が含まれているうえに、異常な速度がある。

 そして、最後、明らかに秀星の雰囲気が変わった。

 何をしたのかさっぱりわからないが、そこから放たれた一撃は、『自分にできるかどうか』と言われると、首を縦に振るにはとてつもない勇気が必要だろう。

 神器使いたちも、ここまで差があるとは思っていなかった。


 彼らにわかったのは一つだけ。

 『神獣とソロでやりあうとき』は、これくらいのことを常にやり続けなければならない。と言うことくらいである。


「……で、結局世界樹は俺のものになったか」


 黄色の世界樹も、結局秀星が管理することになった。

 秀星がどれほど『常識外』なのかを目にしてしまった今、世界樹をどのような方法で管理しているのか、そこにも自分には理解すらできないほどのスケールがあるのではないか。

 一応、戦いの場にいた『ブラックプラネット』だが、そのリーダーが管理することを降りたことで、それらを悟った。


「しっかし、あのブラックプラネットのリーダー。どこからどう見ても化け物を見るような目だったな」


 そりゃそうだけどなぁ。と思いながら、秀星は世界樹転移により発生する地震警報をした後で、リビングでダラッとしている。


「黒、白、緑、赤、シアン、黄色……あと二つか」

「嫌なカウントダウンですね」

「ですねー……」


 ちなみにぐったりしているのは、『ジーニアス・リフレクト』を使った反動である。

 シアンの世界樹を手にいれるときに使った反動がまた襲っているのだ。


「神獣の親。出てきたときには『切り札』を使うのですか?」

「つかうよそりゃ……ていうか、親の対策メンバーを本気で考えないと」


 とりあえず、元魔王である基樹と、元勇者である天理は確定だ。

 神器は持っていないが、おそらく人工神器でも何とかやってのけるだろう。

 あとは、神器使いをどれほど集められるか。


「一人の神器使いを、神獣クラスを相手に十分なレベルで運用するために、周辺メンバーも必要か……影葉たち三人も召喚獣対策にまわした方がいいかな……後、俺がコンタクトをとれそうな相手で、めちゃくちゃ強そうなのって……まあ、決まってるか」

「?」


 セフィアは分かっていないようだ。

 それを見て、秀星は微笑む。


「わからないか?まあ決まってるんだよ」


 そして、その人物の名前をいう秀星。

 確かに、という反応とともに、何故思考の外にいたのかと疑問に思ったセフィアである。


「近いうちにあっておいた方がいいかな……いや、いいか。どうせくるとなったら勝手に来るだろ」


 そんなことを言って再びぐったりする秀星。

 そんな秀星を見て、セフィアは溜息を吐いた。


「言っても無駄だと思いますが、体調には気を付けてください。『ジーニアス・リフレクト』は、エリクサーブラッドが全力で取り組まなければ元の状態に戻せないほどエネルギーが必要です……周りから見れば、あまりたいしたことをしているようには見えないというのが最大の弱点ですが」

「わかってるよ……ただ、『何をしているのか外からでもわかる』くらいじゃ、神獣には通用しないっていうのがな……」


 最初から『ジーニアス・リフレクト』を使わない理由は、神獣側の警戒レベルが最大まで上がるからだ。

 前座で攻撃を叩きこんで、その時に打ち込んだ付与により、ジーニアス・リフレクトによる能力上昇の認識を鈍らせている。

 そのため、カメラ越しの野次馬からは何か変わったように見えるのだが、その反応が神獣は薄いのだ。


「それでもです」

「……わかってるよ」


 答えになっていないような答え方で、秀星は頷いた。

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