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第三百五十六話

「お~やってるやってる」


 秀星は楽しそうな声を出した。

 広場では、天使族の男性と少女が、リングのような光の線の中で戦っている。

 男性の方は両手剣。少女の方は片手剣を持って戦っている。


(……演武。と言うには鮮やかだなぁ。まあ、見せるだけの動きなんて、やりすぎても滑稽なだけか。田舎の素人活劇じゃあるまいし)


 剣を振る二人を見ながら、秀星はそんなことを考えた。

 二人が持っている剣には、斬撃属性を消去する付与魔法がかけられているようだ。

 少なくとも怪我をする心配はないだろう。

 もっとも、斬撃属性がないだけで剣は存在するので、打撃的な部分は残るわけだが。


「あ……」


 少女が振った剣が、男性の両手剣を根本で破壊。

 そのまま片手剣を眉間に突きつける。


「……こ、降参だ」


 男性は剣の柄を捨てて、両手を上げる。

 少女は剣を引っ込めた。

 拍手が聞こえるので、秀星もすることにした。


 そして、明らかに少し離れたところから聞こえた拍手に、何人かがこちらを向いた。


「あの、あなたは……」


 野次馬の一人が聞いてきた。


「ん?ああ、俺は朝森秀星だ」

「メイドのセフィアです」


 その名前を聞いた天使たちの反応だが……。


「朝森秀星って……白の世界樹の主人か?」

「そうだよ。天使族が白の世界樹に来たって聞いたからな。どんな様子かなって見に来たんだ。思っていたより発展してて驚いたよ」


 秀星のセリフに、先程剣を打ち合っていた天使族の男が答える。

 ……剣を根本から砕かれたせいか、若干手がしびれているようだが。


「昔は伝統文化優先の建築だったけど、今は違うな。より効率的に時間を短縮し、有意義な時間を増やすために道具が生まれ、文明は発展する。『文化』は大切だが、『文明』が進化しないと『文化』も発達しないだろ?」

「そうだな」

「確かに文化には歴史が必要だよ。だがね。骨董品に目を向ける者は、少なくはないが多くはない。そして、興味が長続きするものはもっと少ない。だから、文明を発達させ、文化を成長させることにしたのさ」

「なるほど」


 文化の成長の裏には文明の進化がある。ということは秀星も認める。

 というより、文化というのは大きな枠で言えば優先順位は文明の進化より下だろう。

 どれほど絵をうまく書いたとしても、戦時中は紙切れである。


「状況はわかった。で、さっきやってたのは演武か?」

「ああ。そうだよ。彼女は僕たちの中では最強でね。でもまだまだ乙女な部分が抜けてないから、自分より強い男としか結婚しないとかいいだsうわっ!ゴメンゴメン!ちょっと待って」


 顔を真っ赤にした少女に追いかけられる男性。

 初心を盛大にこじらせているというか、少女は男性を追いかけ続ける。

 すぐに見えなくなった。


「平和だな」


 喧嘩するほど仲がいい。とはよく言ったものだ。

 野次馬のおばちゃんが説明してくる。


「実際、あの子はさっき打ち合ってた男のことが好きなんだけどね。自分が言ったことを撤回するわけにはいかないからって、こんな演舞をやってるのさ」

「へぇ……で、周りはそれを全員が察しているわけか」

「そういうことだよ」

「……ていうか、あの男も実力を若干隠してるよな。接待が上手いっていうか……」

「アンタ。そんなこともわかるのかい?」

「まあ大体」


 ギリギリのところで負けるように調節しているところは秀星にもわかった。


「女の子の方は気がついてないっぽいな。腹芸が大好きなお兄さんにとっては、才能溢れる初心な女の子はいじめ甲斐がありすぎて仕方がないって感じか」

「まっ、そんなとこだね」


 罪なものである。


「……まあ、俺には関係ないや。さて、そろそろ町の探検を再開しようか」

「食べ物も娯楽もいっぱいあるからね。楽しんできな」

「わかった」


 というわけで、探検再開。

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