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第三百五十五話

 妖精や精霊にとっての母親はすべて『自然』である。

 勝手に増えていくが、基本的に親から生まれるということはない。

 そして、自然とは違うが、親から産まれるというわけではない種族が『天使』である。

 神々の使いがどうのと言っているパターンもあるが、ここではそんなことは関係なく、翼があり、戦闘時になれば光輪も出せる外見からそう呼ばれている。


 天からの使いということで傲慢だったり、幸福を呼ぶ清き存在だったりと異なるが、秀星が把握している限りは後者である。

 平和なことだ。

 仮に傲慢だったら遊んであげる(強制)だけなので、秀星にとって大した差はない。


 そんな様子だが、翼があるということで、この浮遊島にやって来て生活圏を築いている。

 もともと秀星に対して接触してこなかったが、秀星はそこを責めたりはしない。

 とりあえず周りの邪魔になっていないのなら管轄外である。

 常識も文化も知らずに土足で踏み込むのはマナー違反というものだ。


「……さて、次は天使たちか」


 大量のメイドを交代で妖精たちのところに送り込んでおいて、秀星とセフィアは脱出した。

 もちろん転移魔法を使えば一瞬だが、『次来るときに面倒になる』という状況になるとなんだか負けた気がするのでそういうことはしない。


「不死鳥族と妖精たちはアポなしで行っても問題なかったけど、天使って聞くとなんか通らなそうな気がするのはなんでだろうな」

「それは偏見というものですよ。天使も、世界樹の主人が誰なのかくらいはわかります」

「エルフにはわからなかったことでも他の種族がわかっていることっていろいろあるな。まあ、それはおいておくけど……おっ、なんか見えてきた」


 オープンカーに乗っているが、目当てのものが見えた。


「なんか立派な城塞都市になってるように見えるんだけど」

「竜人族並の文明水準ですね」


 高い壁は真っ白で、傷一つ付いておらず、なんだか光沢を感じる。まあ単に新築なだけだろうが。

 門には全身甲冑の男性が二人いる。

 翼があるので天使族だろう。

 オープンカーで近づいて、降りてから収納。

 門まで歩いた。

 門番が来て、こちらに水晶を見せてくる。


「すまないが、この都市の決まりでな。名前と顔を認識する水晶を使って、人の出入りを記録することにしているんだ」

「外から人来るの?」

「竜人族がよく来る」

「黒の世界樹って、白の世界樹の真反対の位置にあるのに……元気だなぁ」


 そう言いながら、秀星は水晶に触れる。


「朝森秀星で間違いないな」

「もちろん」

「では私も」


 セフィアが水晶に触れる。


「セフィアで間違いないな」

「はい」

「うむ、二人とも通ってよし」


 門番はそう言うと、水晶を門に掲げる。

 すると、門が自動で開いた。


「それでは、天使族が作った城塞都市だ。名前はまだないが、楽しんでくれ」

「どうも。行ってくる」


 というわけで、中に入る秀星とセフィア。

 門の中は、『商業的な機能美』といった感じになっている。

 しっかりと整備された白い都市であり、神聖な雰囲気だ。


「なかなかきれいな街だな」

「エルフが作った街もきれいだったのですが、こちらは神聖さがありますね」

「ちょっと鑑定してみればわかるけど、腐食耐性がおっそろしいほど付いてるな。コンクリで作られてるけど、千年くらいは補修無しで行けそうだぞ」

「維持するということは大変ですからね……」


 そこまで話したあと、秀星は気になることがあったので聞いてみた。


「そう言えば、セフィアって名前を鑑定したとき、『セフィア』って出るっけ」

「出ませんね。本来は」


 あくまでも『セフィア』というのは、メイドのシステムのことである。

 主人印に従うシステムであり、確かに秀星は目の前にいるメイドを『セフィア』と呼ぶが、別にセフィアという名前ではないのだ。最高端末である。


「ちなみに本来の名前は千文字を超えますから、水晶が面倒になってセフィアとしたのでしょう。それで誰も困りませんし」

「まあ、そんなもんか」


 水晶が行う鑑定に面倒とかあるのだろうか。

 秀星はそんなことを一瞬考えたが、最終的には『メイドですから』の一点張りになるのは目に見えているので、追求はしない。


「さて、とりあえず探索するか。なんか人が少ないけど」

「広場の方に集まっているみたいですね」

「なんか斬撃音が聞こえるな。緊迫感はあまり感じられないし……演武か?行ってみよう」


 実力が見られると思いながら、ウキウキして歩いていく秀星。

 セフィアは呆れながら、そんな秀星に付いていった。

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