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第三百五十二話

 赤い木材で作られた不死鳥族の里。

 家の数が少なく、さらに、中に誰もいない家がいくつかあるほどだ。


「……なんだか、本当に少ないんだな」

「売店が一つだけありますが小さいですね。しかもとても安い」

「基本的に消費量が少ない種族だから、こんな感じでも普通にやっている。人族の方が多いだけ」

「否定できんな……」

「もっとも、動物と比べると人間もそう数が多いというわけではありませんが……」

「いやあれは別格だろ……」


 秀星はセフィアの指摘に苦笑する。

 魚を例にすると分かりやすいが、魚は基本的に大量の卵を産むのだが、その中でも生まれる数は多くはないのだ。

 大量に産むことで、数が減ったとしても絶滅しないようにしている。

 人間は真反対で、一人を産むために時間とエネルギーを使って育てているのだ。動物と比べて数が少ない理由の一つだろう。


「しかし……家の数が少ないし、人もほとんどいないな」

「何より『時間がある』という種族だから、のんびりしていたり、単純にそのあたりを意味もなくふらふらしてることが多い。私がこの里にいたのも偶然」

「俺の気配を察知して出てきたんだよな」

「悪意がないのは分かっていたけど、里に人が来るのは珍しいことじゃない。世界樹のそばに里を作ったから、人が来るのは別に不思議なことじゃないっていうのが共通認識」


 少女の名はフレイヤというらしい。

 で、フレイヤが言う『珍しい』という部分を判断する物差しは一体どうなっているのかわからないが、おそらく人間とはまた違うだろう。


 エルフも長命種だが、不死鳥族はその比ではない。

 その圧倒的な数の少なさがそれを物語っている。


「なんだろ。スローライフの極致だな」

「不死鳥族は死んでも死なないのでそうなるでしょうね」


 死んでも死なない。というメカニズムだが……高温状態が常に維持されている不死鳥族は、厳密には生きていない。

 生きていないので死なない。そんな感じなのである。

 厳密に説明するとめちゃくちゃめんどくさいのでそう言うものだと思ってほしい。

 ただし封印することはもちろんできる。死なないだけだ。


「いやー……なんていうか、行くところないな」

「世界樹にしか用がない人が多いから気にしてない」

「なるほど」


 どのようにコメントすればいいのかわからん。


「なんだか触れ合いが薄いが、そこは問題ないのか?」

「一応感情はあるから会いたいなって思うときはあるけど、そう思う周期が他の種族とは違う」


 一応感情はあるらしい。焼ききれていないようで何よりだ。


「俺さ。この後精霊たちがいる緑の世界樹に行く予定なんだけど……」

「私たちがぼんやりだとするなら、精霊はそこそこしっかりしてるけど、妖精はアホだね」


 概ね予想通りである。


「まあでも……うん。たぶんまたここに来るよ」

「いつでも静かだから、まったりしたいときは来るといい。何もないし、通信器具すらそろってないけど、みんな基本的にボーっとしてるから」

「そうするとしよう。で、フレイヤって何歳?」

「六十桁くらい」

「分かった。それじゃあ。また会おうな」

「待っている」


 フレイヤが右手を出してきたので、秀星も握り返した。

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