第三百五十話
「セフィア。遊びというものは進化していくということを知っているか?」
「遊び場所が公園の遊具から家のゲーム機に変わったのがその典型例ですね」
「……思うんだけど、ぶっちゃけ終戦してからすごい勢いだよな。異世界の連中ってあまり頭がおかしくないんだなってことがよくわかるよ」
「同意しますが、話を戻してください」
「そうしようか。まあ要するに、『これまでの遊びに何らかの付与価値を付けれたらいいな』ということなんだ」
襲撃されまくっている秀星。
それを利用して遊んでいるわけだが、大体の反応に見慣れてくると面白くないのだ。
遊んでいて楽しくない遊戯など意味がない。
というわけで、何かないかなと考えていたのだ。
「何か見つかったのですか?」
「一応まず来夏に電話したんだよ。『悪乗り同盟』の団長だからな」
本人に言ったところで自慢しはじめるだけな役職である。
「何を言っていたのですか?」
「『Y字型の柱に逆さ吊りにして股間に角材を振り下ろすところをライブ発信する』って言ってたな」
「残酷ですね」
「当然却下だ。俺はサディストじゃないからな」
「いえ、サディストだとは思いますが……」
「……話を戻すが、俺は考えたのは、『襲撃してきたやつが所属してる組織の黒い部分を証拠付きで丁寧に資料にまとめて、その組織宛に郵送する』というものだ」
「胃に穴が空きますね」
「胃薬つけておいたほうがいいかな」
「そのほうがいいでしょう」
「どうせだから幹部連中の悩み解決でもやっておくか?この前襲撃してきたスナイパーの直属の上司なんて、ペースメイカーつけてないと生きていけないような人だったし」
「そこまで知られていたら逆にショック死しそうですね」
「人を殺すつもりはないからそれはやめておくか」
というわけで。そんな感じですすめることに。
「しかし、なぜその方向にシフトしているのですか?」
「最近、闇金に乗せられて莫大な借金を抱えてたり、大切な人を人質に取られてたりとか、そういう本人にはどうしようもない状況にさせられて襲撃してくるやつが最近多いんだよね。まあ、そいつに付与されてた呪いとかそういうのは全部叩き潰した上で、借金を肩代わりしたり、人質を救出したりしてるけど。それだと、襲撃者本人をいじめても仕方ないだろ」
「襲撃者もまた被害者ですからね」
「だからさ、組織あてに何かないかなって思って考えてたんだよ」
「その結果思いついたのが『闇書類郵送』ですか」
「そういうことだ」
秀星は『部下をこき使う』ところまでは別に何も言わないが、関係のないものを巻き込むことは黙認しないのである。
そのため、そういったことを狙っているのであれば、組織を狙う。
「しかし、すごいところにはすごいのがいるっていうか……産まれたときから暗殺しか叩き込まれてない女の子とかいたな」
「どうしたのですか?」
「エリクサーブラッドのセラピーを放出しながら抱きついて頭撫でたら即落ちした」
そりゃそうだと思うセフィア。
常に余裕がある秀星の雰囲気は頼りがいがあるもので、さらに、エリクサーブラッドはベストコンディションにする一環として含まれるセラピーが圧倒的な性質を保持する。
そして大変気持ちがいいのだ。
人は大樹に悪意などわかない。
毎日毎日飽きもせず世界樹の化身たちが寝るときに抱きついているのはそういう理由である。
「その少女たちはどうしたのですか?」
「すでに複数いる前提かよ……今はアトムに連絡して審議中だ。まあ多分俺が抱えることになると思うけどな」
「それは安心しました」
「まあとりあえずそんな感じだな。というわけでセフィア、組織の闇、調べておいてくれない?」
「主要な部分はすでに調べてあります」
「うーん。俺の胃にも穴があきそうだなぁ」
かなり軽いが、いつもどおり。
そんな感じで、秀星は遊びを考えていた。
「遊びはもうほとんど飽きたし、もう一回浮遊島に行くか」
一応予定も決めた。




