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第三百三十四話

 ゴミが山のように積まれているが、穴を開けてそこから排出している以上、ゴミが存在しない場所はある。

 突っ込むならそこである。

 ということらしいリーダーの頭の悪い説明のあと、キャンピングカーは爆走する。

 もちろん、中はそれほど揺れない。


「行くぜえええええ!」


 来夏は思いっきりキャンピングカーを壁にぶつける。

 衝撃はほとんどないが、壁の方はもう悲惨なことになっている。

 マジで『バギッ!』となった。

 まあ、そうしようとして突っ込んでいるのだからそうなるのは当然。


 ちなみにブレーキは一度も踏んでいない。

 マスター権限は秀星にあるので、秀星が止まれといえば止まるからだ。


 厚さが何メートルもありそうな鋼鉄の壁だが、キャンピングカーには無力(謎)。

 壁がめちゃくちゃ硬い金属なので、ぶっちゃけ突っ込んだりすると本当にヒビが広がりまくるのだが、来夏はそんなことを考えるほど常識のある大人ではない。

 それでもちょっと無理なときがあるので、レーザーで焼いたりとかもするが、基本的には止まることなく前進する。

 数秒で壁をぶち抜いてエルフの里の中に突入した。


 そして、来夏以外の全員が思う。

『さて、エルフと来夏。一体どっちが常識知らずなのだろうか』と。

 エルフという存在が『人の範囲で常識知らず』であり、来夏は『人外の領域で常識知らず』といった感じがしなくもない。

 どうやら、エルフたちの唯一の要素である『常識知らず』という点ですら、来夏には及ばないようだ。ここまで来るとちょっと惨めである。


「ミッションクリアだぜ!」


 一体いつそのミッションが発令したのか小一時間問い質したいところだが、それは言っても仕方がないので後回しだ。


「な……何だ貴様らは!」


 里の中にいたエルフの老人が腰を抜かしながら絶叫する。

 気持ちはわかる。


 来夏は少し考えたあと、秀星たちの方を見る。


「なあ……オレ達って何者なんだろうな」

「「「知るか!」」」


 全員から突っ込まれる来夏。


「あえて言えば……『自由』なのさ」


 ドヤ顔でそういう来夏だが、剣の精鋭メンバーからの視線は冷たい。

 そんなことは無視して、来夏はキャンピングカーから降りた。


「さてと……オレ達は何しに来たんだったかな」


 決めてないのに突っ込んだのか。

 いきあたりばったりにも程がある。


「まああれだな。壁の外にゴミを捨てるってどういうことだ。世間の常識ってもんを知らねえのかお前らは」


 ゴミに関してはアレだが、世間の常識を人に要求する資格などあるのだろうか。

 多分ないだろうな。と思いつつも、秀星たちも諦めてキャンピングカーを降りた。


「な……そんな車で壁をぶち破ってくるようなやつに言われたくないわ!」


 ド正論である。

 どうやらエルフよりも来夏の方が頭がおかしいようで、何か説教するにしても向こうの主張が正しく聞こえてしまうような気がする。


「オレはゴミの話をしてんだよ!」

「ば、馬鹿なことを言うな!世界樹があり、エルフが住まう地にゴミを捨てるだと!?恥をしれ恥を!やはり人間は自分のことしか考えない愚かな種族だ」


 すべての人間が来夏みたいな奴だったら地球が終わるのでそういう勘違いはやめてほしい。

 自分のことしか考えないのはお互いのセリフだ。


「ゴチャゴチャぬかすな!お前らは世界樹を独占したいだけだろうが!第一、壁の外に世界樹の魔力が漏れまくってるから意味なんてねえんだよ!……漏れまくってたよな」

「ああ。そうだぞ」


 自信がなかったのか来夏が秀星に聞いてくるが、確かに漏れまくっている。

 膨大な魔力を放出する世界樹であり、全体から魔力を放出する世界樹だが、実はコアが存在し、そこからほとんどの魔力が放出されている。

 そのため、『オールハンターの保存箱』の子機をコアの周辺に置いておけば、ほぼすべての魔力が保存箱の中に集約される。

 あとは緑の世界樹の化身が、壁の外で好きなところに別の子機をおいておけば、ほぼすべての魔力が壁の外で放出されるのだ。

 来夏に自信がなかったのは、白と黒と同質の魔力が大量に感じられるのに、壁の内側から出てきている感じがしなかったからだろう。


「そ、そんなバカな。我々は、前の里と同じ魔力消費量で今も生きているんだぞ!貴様の言い分は間違っている!」


 騒ぐ老人。

 とはいえ、世界樹がかなり弱っていたのは、言い換えるならコアが弱っていたということだ。

 もともと全体から放出される魔力もかなり多いので、コアのことを考えなくても十分量は多い。

 コアのことすら知らないものが多いだろうから、指摘しても無駄だし、授業などするつもりもない。


「まあここで止まってても仕方ねえや。ちょっと探検しようぜ」


 鬼みたいな精神である。

 ちなみに、エルフの里はきれいだ。

 ただ、建築方法に関しては化石みたいなものを使っていて、きれいな町並みの正体はただの幻惑魔法だ。来夏の瞳には失望の色が混じっている。


「おい!ここを探検するだと?一体何の権利があって……」

「お前らの常識なんざ知らねえよ」


 一刀両断する来夏。

 エルフよりも酷い。


「というわけで、探検開始だぜ!」


 いい笑顔でそういう来夏に、『ああ、またこのゴリラは馬鹿なことをするんだろうな』と剣の精鋭メンバーは思うのだった。

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