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第三百三十三話

「なんじゃありゃ!?」


 来夏が愕然。

 とはいえ、これは思ったことがすぐ顔と口に出る来夏が誰よりも速く言っただけで、全員が思うことだろう。

 世界樹が巨大であることは何度も言ってきた。

 樹高が千メートルもある大樹など、まず普通では考えられないだろう。

 そして、その下から見上げるだけで、光る果実たちがプラネタリウムのようにみえるほど広いのだ。


 だが、エルフたちの気合いと本気が見えるというか、本当に、世界樹のすべてを覆い尽くすほどの壁を作り上げてしまった。

 世界樹の近くであれば、彼らが強者であることは間違いない。

 恩恵を受け続けてきた彼らは、体の外の魔力を操作する能力に長けている。

 世界樹から放出される膨大な魔力を使って、それをそのまま壁を作るための魔法の運用に当てたのである。

 しかもご丁寧に、物理的、魔法的、電子的な視点で見てもなかなか高性能なものだ。


(まだそんなに時間が経過してるわけじゃないのに……そこまで世界樹が自分たちのものだと言い張りたいわけか。ここまで来るともう訳がわからん)


 ふとここで、来夏が呟く。


「なあ、なんか壁の下の方に何かあるぞ」


 秀星は壁の下の方を見る。

 そこにあったのは……。


「……ゴミの山だな」


 基樹も見えたようで呟く。

 壁にはいくつか穴が空いており、そこからゴミを外に放り出しているようだ。

 というか、その作業が見えた。


「……一体どういうことだ?」

「人が生活するならゴミくらいは出るだろ。資源が無限に溢れてると思ってる奴らがリサイクルなんて考えないから、使ったものは再利用されずに処分されるはずだ。そうして溜まったものを、あんな感じで外に出してるんだろうな」


 普通なら、外部との関係が絶たれそうなことはやらない。

 文明種は基本的に、人族以外は得手不得手がモロに出てくるものだ。

 種族間で分業し、役割分担をすることでお互いに発展する。

 だが、世界樹を抱えている場合、資源が溢れてくる。

 内側から溢れているのだから、周りと連携を取る必要がないというわけだ。

 世界樹というのは、今の文明種が持っている技術水準と比べると圧倒的に優れた存在であり、周りとの連携は基本必要ない。

 もちろん。外部でなにかエルフに有用だと判断できるものが生まれた場合、圧迫外交で安く買って、それを独占しようとするわけだが。


「明らかにやばいよね……あれ、竜人族のところのゴミってどうなってるの?」

「竜王が住んでる宮殿にすべて運び込まれると話していたな。ゴミが主食のドラゴンがいるとか、そんな話を聞いたぞ」

「変わった食生活だな……」


 人が捨てたものを貪り食う生物もいるということだ。

 一部の微生物はだいたいそんなものなのでは?と思わなくもないが。


「しかし、こりゃニオイがヤベえだろうな。近づいても降りられねえぞ」

「何故こんなことができるのでしょうか」

「さあ?世界樹という神聖な場所でゴミを埋めたり燃やしたり、なんてことが認められないとかそんな感じだろ」


 基樹がつぶやくが、秀星の意見も同じようなものである。

 貴族だの、ハイソサエティだの、一体何が素晴らしいんだか。

 秀星からすれば、国なんて滅ぼすのは簡単である。


「しかし、これは末期症状だぜ……」

「で、どうする?一応このキャンピングカーは飛べるから、空からでも乗り込めるけど」

「え、これ飛べるの?」

「飛べる」

「なら、乗り込むか。だって出入り口が見つからねえし」

「まあ、あの程度の壁ならキャンピングカーで突っ込んでもぶっ壊せるんだけどな」

「あ、そうなのか。じゃあそっちで!」


 アクセルを思いっきり踏み込む来夏。

 周りの意見を聞くし採用するが、都合のいいものだけ、ということがよくわかる女である。

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