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第三十話

『評議会の仮設本部に魔竜が三体出てきた。はっきり言ってオレたちの手には負えないから、とりあえずよろしく!』


 という来夏からの一方的な要請を受けて、行くことにした秀星。

 仮設本部がどこなのか、だとか、魔竜が三体というのはどういうことなのか、とか、いろいろ言いたいことはあったのだが、そんな雰囲気ではなさそうだったのでセフィアに聞いて、早速向かうことにした。

 ワールドレコード・スタッフで検索して、転移魔法ですぐに行ける。

 大雑把な説明でも、こちらで何とか補完できるのが神器。

 この使い方は宝の持ち腐れのような気がしなくもないが、できるのだから問題はない。


「あれがデモンストレーションの魔竜ってことか」


 転移魔法は目立つので海を走ってきた秀星。

 どっちでも目立つものは目立つが、転移魔法よりも、身体強化魔法を使えば出来るものが何人かいることを考えると、別に海を走るのはいろいろな意味で許容範囲内なのだ。


「ああ。そう言うわけで、よろしく頼むぜ」

「はっきり言いますが、私と来夏の手には負えませんから」

「まあそれはいいんだけどさ。来夏とアレシアはどうするんだ?」


 ひとまず合流して詳しい話を聞くことにしたのはいい。

 わざわざ海を走っていたので、途中はずっと圏外だった。

 仮に通話が出来たとしても、走っている音が五月蝿くて、アルテマセンスでこちらは聞きとることが出来ても、向こうはこちらの声を聞きとれない可能性があったので、現地確認である。


「オレとアレシアは評議会の仮設本部でいろいろやることがあるんだよ。プラチナランクチームだからな。評議会を抜けた後でも、そこまでのランクになるとちょっとばかし義務が残るんだ」

「……実質的に壊滅していても、続いていると言い続けていた理由はそれか」

「そういうこった。というわけで、頼んだぜ」

「頼みましたよ。秀星さん」


 二人は地下通路を使うことにしたようで、近くの建物に向かって走って行った。


「……義務ねぇ。まあ、俺も一応チームなんだし、それくらいはやるか」


 秀星は魔竜に向かって威圧した。

 まだ少なくとも一キロメートルは離れている。

 だが、魔竜たちは反応した。

 戦闘関連の神器を多数持っているので、その殺意を読み取れないものは何もできずに終わるだけだ。

 魔竜と言われるだけあって、そう言う部分は可能らしい。


「さて、かかって来いよ」


 星王剣、漆黒外套、魔法端末、マシニクルを同時に展開する。

 三体が同時に秀星のところに向かって飛んできた。

 そして、すぐ手前に陣取った後、ブレスを吐いて来る。


「小細工が通用しないと分かっていないみたいだな」


 秀星は星王剣を真横に一閃する。

 すると斬撃が飛翔して、その勢いに負けたブレスは全て霧散した。

 魔竜たちは驚いている。

 当然といえば当然だが、遠くからでは秀星の脅威度を測ることはできなかったのだ。


「どうした?もっとかかって来い!」


 魔竜たちは、ブレスだけではなく、様々な属性の遠距離攻撃を行ってきた。

 炎の玉。滝。雷、刃の風、氷の槍……一体いくつ同時に行使できるのかわからないが、とにかくたくさんだ。


「そんなもんか?『デモリッション・ディーヴァ』!」


 オールマジック・タブレットが輝くと、魔法陣が出現する。

 そして、そこから放たれた閃光が、全ての魔法を無効化していく。

 魔竜たちは、自分たちの魔法が無効化されたことに驚き、魔法陣が出現していることに疑問を持ったが、何かをしなければ倒されることは明白。

 今は、数の暴力で押しきるしかない。という思いで、魔竜たちは攻撃を続ける。


 一体が口の中にエネルギーを溜め込んだ。

 そして、レーザーのようにエネルギーが纏まったブレスを放射してくる。


「ほう……やるじゃないか。『レーザーモード』」


『Laser Mode』


 マシニクルを向けて引き金を引く。

 そこから放たれたレーザーは、魔竜のレーザーをぶち破って、そのまま魔竜に直撃する。


「ギッ。ギャアアアアアアア!」


 魔竜があまりにも大きいダメージに悶絶する。

 今までは比較的殺傷力の低い攻撃しか行っていない秀星だが、このマシニクルのレーザーはそんじょそこらのものでは比べることすらできない威力を持っている。


「ん?傷が回復しているな」


 自動回復のスキルがあるのか、それとも魔法を使ったのか。

 地球の魔法は魔法陣が出ないので、魔力の動きだけで察知する必要があって面倒だ。

 スキルがあろうと魔法であったとしても秀星の行動に差異はないが、戦闘時間が若干長引くことは間違いない。


「さてと、人が真面目にやる前にさっさと奥の手でも出してほしいもんだがな」


 神器十個を保有する秀星の『真面目』というのは驚異的だ。

 付き合ってくれる相手がなかなかいないし、いてもすぐに終わることが多い。

 秀星は戦闘狂とはまた違うが、それでも、もうちょっと遊びたいのだ。

 とはいえ、秀星が真面目になって相手しなければならないような敵が現れた場合、秀星だって勘で気が付くだろうし、そもそも立っている島が原型を留めない可能性もあるのだが。


「む?あれは……」


 秀星は空を見上げる。

 隕石が降ってきていた。

 魔力的な痕が残っているので、魔竜の誰かが魔法で呼びよせたのだろう。

 位置エネルギーも相当なものになるので、呼び寄せて重力にひっかければなんとかなることも多い手段だ。

 しかも、秀星に向かって真っすぐ飛んでいる。

 確率からしても自然ではない。


「……」


 秀星の表情には、若干の呆れが混じっていた。

 そして、漆黒外套に包まれた腕を前に出す。

 隕石が直撃した。

 しかしそれらは、急に止まった。


「「「!?」」」


 魔竜たちは驚いているが、その間に隕石は壮絶な音を立てて地面に落ちる。


「情報的にエネルギーがなくなっただけなんだがな……」


 情報的反射の際、方向の情報を『×マイナス1』をすることでそれに影響される攻撃そのものが進む方向を変えるというのは説明した。

 漆黒外套の場合、エネルギーそのものを『×0』にできる。

 そうなってしまえば、その情報介入を突破できない限り、攻撃が通らないことは愚か、ノックバックすら発生しない。


「さて、準備運動はすんだか?俺はまだそんな感じじゃねえけどな。ま、折角なんだし、気長にやろうか」


 魔竜たちからは『勘弁してくれ』と言う雰囲気が流れていた。

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