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第二百九十九話

 世界樹とはいえ、光合成は行っている。

 というより、もともと太陽というのは、適した距離感に存在し、地球が今の自転周期を維持する限り、地球に存在するすべての者にとって平等である。

 世界樹には、その光合成を最大効率で行う機能が備わっている。

 ……圧倒的な生産者であり、魔法的に維持している部分が露骨に出ているほどの存在である世界樹にとって、デンプンというものは何なのか。

 少し確認したい気分だが、それはいいとしよう。


「さてと、学校に行くからぱっぱと済ませるか」


 秀星が取り出したのは……星王剣プレシャスである。

 別にぶった切るつもりはない。

 邪魔な部分。というより、世界樹が自らしっかり育つために、嫌だがあえて作っている部分がある。

 もちろん、すでにしっかりと育ったので、その部分はいらなくなったわけだ。

 それを取り除いておかないと、実はストレスがたまり続ける。

 あえてストレスを与えることで木としての性能を良くする。ということが主に果樹園では行われたりするが、世界樹にそんな常識はいらない。

 ストレスになりそうなものは徹底除去である。


 そのストレスを与えることが無意味と言いたいのではない。

 しかし秀星であっても、今の世界樹を上位の何かにさせる。となった場合、イメージがないのだ。

 かなり踏み込んだ思考実験を繰り返し、そして検証を行う秀星の知識は、深くはあるが細かくはない。

 世界樹にとって適した条件はわかっても、それ以上はわからない。


 もちろん、時間を越えて移動できる秀星は、世界樹が上の存在になるまで実験し続けることは可能だろう。

 だが、秀星がざっと見積もりを出した結果、実験回数は最低でも四千兆回を超える上に、その一回が三十億年以上かかるという計算である。

 かかりきりになる。どころの騒ぎではない。

 もちろん、かかりきりになってもいいほどの価値はあるのだが、それはあまりにも無理がある。

 なので、それを模索するのは神に会えたときくらいだ。


「お。いい感じだな」


 かなり細かく切り落とされている部分が多くなった世界樹。

 だが、薄っすらと輝いていたそれは増したような気がする。


「……まあこんなもんだな」


 こんなもんだ。とは言うが、これ以上はわからないとも言える。

 そんなニュアンスで、秀星は世界樹を後にした。


 ★


 白も黒も、上機嫌だった。

 先程までなんというか、もやもやする原因が体に張り付いていたというか、髪が無駄に長過ぎたというか、そんなストレスが貯まる原因があったのに、いまはそれが全く消えているからである。

 とはいえ、元気そうなのは白だけで、黒はボーッとしているのに変わりはない。


 白は世界樹の周りを走り回って、黒はボーッとそれを眺めている。

 生まれたばかりではあるが、もともと自我の確立が早いのが世界樹という存在なので、ボーッとしているのが黒の標準だということになる。


『……?』


 白は走り回っているとき、何かに気がついた。

 ご主人様の家の影から、誰かがこちらを見ているのだ。

 白は走って行って確認する。


『……!?』


 見た目は、ほとんど自分と同じ。

 ワンピースの色と、髪と瞳の色が違うだけだ。

 要するに、これは白と黒の同類である。

 それを前提とすれば、彼女は『緑』だろう。


 しかし、散々だった。

 ワンピースも、肌も髪も汚れており、かなりやつれて元気などない。

 髪は乱雑に切られたように統一性のないもので、ワンピースはところどころ破れている。

 しかも、肌には若干の切り傷も見えている。

 極めつけは……左腕は、肘から先がなかった。


 もちろん。言ってしまえば彼女たちは世界樹が生み出した化身のような存在であり、明確な痛覚など存在しない。

 しかし、化身という存在故に、偽りが混じらないのだ。


『〜〜!』


 白は緑を抱きしめる。

 もちろん、それをしたほうがいいと思った。ということもあるが、こうすれば、緑の世界樹がどこにいるのかがわかる。


 そして、その位置はわかった。

 だが、遠すぎる。

 今のままではどれほど力を振り絞っても全く届かないだろう。


「大丈夫ですよ」


 白と緑は、その声に振り返る。

 そこにはセフィアがいた。


「秀星様ならなんとかすることができます。今日でもう、悪夢は終わりですよ。これからは楽しい時間です」


 セフィアには秀星から様々なものが与えられていて、そしてそれ相応に広い裁量権が与えられている。

 だが間違えてはいけないのは、アルテマセンスとエリクサーブラッドを持ち、レシピブック、タブレット、マシニクルに使用制限がない秀星は、何をするにしてもセフィアよりもクオリティが上なのだ。

 それは家事においても例外ではない。

 そして、彼女が保有する技術では、この場で緑の世界樹を助けることは出来ない。

 彼女にできるのは、安心させることである。


 緑はそれを聞いて、白の世界樹と黒の世界樹を見る。

 輝いている世界樹を見て、納得したようだ。

 それとともに、羨ましいと考えているようだが。それはいいとしよう。

 緑はギュッとセフィアに抱きついた。

 セフィアも抱きしめる。


(ああ〜いいですねぇ〜)


 セフィアはロリコンというわけではない。

 だがまああれだ。

 ロリコンでなくとも、やっぱり幼女は可愛いのだ。うん。

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