第二百九十六話
もうそろそろ期限がくるので、沖野宮高校の生徒達は帰ることになる。
しかし、あまり悲観するものはいない。
もともと、このメイガスフロントと本州には、抜群の速度を持つ交通機関が存在する。
さらに、『イリーガル・ドラゴン』によって全体的に高い水準でモンスターを倒せる沖野宮高校の生徒達なので、調査をして問題ないと分かれば、一部の人間にはフリーパスを渡すことも考えられているほどだ。
メイガスフロントとしても、素材の確保はそのほとんどが学生の貢献によって成り立つので、『優秀な生徒が集まる学校にパスを渡す』というのは、実はこれが初めてではない。
思っているより、メイガスフロントと沖野宮高校は遠くないとみんなが思うのだ。
そうなると、ちょっとだけ会うのが面倒になったというだけで、別に根本的に考えればたいしたものではないと考えるものは多かった。
転移魔法を使える秀星に関してはもうどうしようもないといえるだろう。
正直反則級の力である。
圧倒的な速度の電車。
少人数しか乗りこめないものだが、だからこそ、利用者も多い。
第一、そもそもアレシア、優奈、美咲、千春の四人は、メイガスフロントからその電車で移動してきて、本州で活動していて、これが『普通』なのだ。
今更とかそれ以前の問題だろう。
ただし、距離が思ったより近いとはいえ、当然ながら近所感覚で行くことはできない。
話しておきたい場合は話すし、電話番号だって交換する。
この学校での物語は、雑に言えば、特筆すべきくらいのことをやったのはほとんど秀星だ。
だが、物語はそうであっても、現実と言うものはそれぞれにある。
一体何があったのか。
無難に生きるものもいるが、中にはそう言ったわけの分からないものに引っかかる者は少なくない。
特にこのメイガスフロントでは、ほぼ全員が自分だけの常識を持っているに等しい。
人がかかわればかかわるだけ、それに応じて様々なものが広がっていく。
そうして生まれた意見を否定しないことにより、メイガスフロントは栄えてきた。
個人がもっている力など、言うほどたいしたことないものだということを知っている。
だから、つながることを否定しない。
そんな事情もあるわけだから、飛行機に乗りこむ彼らの表情は悪くはない。
楽しかったし、そしてこれからも、会おうと思えば会えるからだ。
ただし、一部は締まらない部分もある。
今回沖野宮高校から来た中で、唯一の高所恐怖症持ちである雫は、顔面蒼白であった。




