第二百八十九話
専用のタワーが設けられており、その最上階に、最高会議の五人が入ることが出来る会議室がある。
入ることが出来るメンバーがかなり限られており、かなり厳重になっている。
神器によってセキュリティが万全になっているようだ。
秀星も入ることはできるが、確実にセンサーをごまかしきれないので侵入したことがばれる可能性が非常に高い。
きちんと相乗効果を考えた最高神の神器をつかったセンサーやらバリケードやら、挑むにしても本気で相手にする必要がある。
もちろん、元々そこまで興味があるわけではないし、秀星だってそこまで面倒なことは嫌である。
「……最上階の一歩手前で止まったな」
エレベーターのランプを見ながらそんなことを呟く秀星。
隣にいたアトムが笑う。
「一応、規定上の問題で最上階が使えないからね」
「それくらいは納得するさ」
秀星は面白いシステムだと思ったことがある。
「エレベーターのランプに変な細工をしてるみたいだな」
「というと?」
「分からんと思ったのか?ここは最上階の一個下の階じゃないし、そもそも、あのランプで表示されていた階数と、実際の階数は違うだろ」
「お、やはりわかるんだね」
秀星は頷く。
「操作パネルにジャックがあったな。本来、特殊な電子機器を使ってエレベーターを操作するんだろ」
「そうだね。いろいろな意味で使う人が多いんだよ」
「窓はすべてはめ殺しの強化ガラスで、階段が一つもない。天井を壊すことを考えない限り、いかなる侵入者もエレベーターを使う必要があるわけだ」
しかも、と秀星は続ける。
「ここ、ヘリポートないんだろ」
「ないね」
総論。
「……不便だな」
「実は時々、私もそう思うことがある」
使い勝手が悪すぎるだろう。
しかも、だからと言ってエレベーターがそこまで多いわけではない。
とはいえ、使用頻度がそこまで多くないということなのだろう。
様々な資料があるはずだが、それを奪われないことが一番重要。しかし、奪われた時のためにどうにかするリカバリーも考えられているはずだ。
「なんていうか、めちゃくちゃ面倒な設計になってるな。すごくぶっ飛んだことを考えないと無理だろ」
「仮に君ならどうするんだい?」
「俺か?タワーの天辺に爆弾を落として、ある程度爆破してから乗りこむだろうな。重要なデータは天辺にあるだろうけど、バックアップは一つじゃないだろうし」
「……」
「天辺になんか砲台が見えるが、あんな大砲じゃ俺には通用しないからな」
「……なるほど」
「電子的な記録データは確かに抹消されるだろうけど、紙の資料を焼く設定ってあまりやりたがらないもんだからな。ん?どうしたアトム」
「いや、やはり君は常識で物を見ないな。と思っただけだよ」
「まあ、俺のこれはあくまでも最高会議と言う存在がちょっとでもその機能を落とせば、という考えだからな。俺個人としてはデータなんて興味ないし」
いずれにせよ、無駄な話だ。
「さて、既にほかの四人と、今回の会議に必要なメンバーはそろっている。準備はいいかな?」
「大丈夫。俺の神経は太いからな」
アトムは溜息を吐いて、扉の方に向かって歩いていく。
(さて、どんな感じになるんだろうか……)
秀星はいろいろ予想している。具体的には六桁くらい。
可能性が七割を超えそうなのはその中でも百分の一くらいである。
(ま、なんとかなるか)
秀星を席に座らせる時点で、そこまで重要度としては高いものではないはずだ。
ある程度まじめにやるが、気楽に行くくらいがちょうどいい。




