第二百八十七話
三日間の文化祭期間。
その間にどれくらい稼ぐことができたのか。そこも重要視するものも多い。
ただし、剣の精鋭のような少数精鋭でダンジョンに潜るようなチームの場合は、メイド喫茶などを開くよりも、ダンジョンに潜ったほうが確実に稼ぐことができる。
正直、メイド喫茶は遊びの範囲なのだ。
もちろん、実際やるとなればすごく面倒だ。
メイド服の用意、食材などの買い出し、実際に料理も作り、お客がどういうものを求めているのかを正確に把握……とまぁ、クッソ面倒だ。
しかし、剣の精鋭と美奈がやったメイド喫茶は、ある意味どれほど反則でチートである。
メイド服は秀星が作った。
好きなメニューを考えて、3Dモデル作成すれば、食材を放り込むことなくいくらでも料理が出続ける機械が手に入った。
さらに、誰がどんなサービスを頼んでいたのかは、彼女たちが付けていたチョーカーが装着者だけに見られるように設定されたホログラムテロップによって確認可能。
これを反則と言わずしてなんという。
こういう事情があるので、剣の精鋭は稼ぎなど考えていない。
一部慣れていないものもいたが、概ねはっちゃけただけなのだ。
そして、メイド喫茶の運営にほぼほぼ関わっていない秀星と来夏に関しては、来夏はバスケットボールで日に五回はゴールを壊し、秀星は自前のメイドに全店舗の偵察をさせるという意味不明さである。
いずれにせよ、楽しむためにやったのだからそれで満足である。
……ちなみに、メイガスフロントは広い。
メイド喫茶をしていたのは剣の精鋭だけではない。
もちろん、表にも裏にも人を多数配置し、同時進行のためのチームワークをしっかり組んで運営している。
普段はモンスターと戦っているか、魔法具を作っているか、魔法の研究をしているものしかいないし、『運営することを学ぶ』点において強烈な『八大学校』もあるのだが、本格的な経験というものはほぼ皆無である。
そんな中でメイド喫茶をやっていた者たちは、『八人しかいないのにその回転率はおかしい』と口を揃えて言うが、『秀星がいろいろと』みたいなことを言うと納得できるものが中にはいるのだから世の中わからない。
メイド喫茶という点に関して言えば確かに剣の精鋭は頑張ったが、根本的に稼ぐことを考えていない上に元手が全然かからなかったので価格設定は低く、プラスという点に関して言えばそうでもない。
ただし、顧客満足度は抜群に高い。
それはアトムも感じたようだ。
アトム曰く『諸星来夏という魔戦士が集めた素質あるものたちが、秀星によって環境を整えられた結果発生した相乗効果だね』とのこと。
さすがに来夏にメイド喫茶のことを聞いたとしても場が凍るだけである。
秀星ならまず、そのような人物を集めようと考えないのだ。
ちなみに、サービス店で最も多くの金額を叩き出したのは、最後の一日のラスト三時間だけ、ジュピター・スクールとは別の学校のライブステージに出てきた紫雲刹那である。
ドリーミィ・フロント所属の彼女だが、糸瀬竜一がセットをすべて作成し、さらに茅宮道也が料理を作りまくってアホみたいに稼いだようだ。
歴代最高を大きく引き剥がしたとも聞く。
秀星としてはそっちのほうが意味不明である。
ちなみに、トラブルの少なさも今年が一番上。
セフィアに丸投げだったが、対応方法を正確に理解しているので適任である。
騒いでいる人の関節をきめたり、良からぬことを考えている人を文字通りボコボコにしたりと武力行使も多かったようだが。
結果的には、多くの人間にとって満足できる結果となった。
そして、秀星がアトムに呼ばれた『会議』の内容。
秀星の予想では、今回の文化祭で、研究会から発表されたものの取り扱いだろうと考えている。
勝人の『意思力』の概念は、さすがに最高会議の五人は分かっていたとしても、他の出席権利を得ている者たちの中にはわからないものもいる可能性が高い。
そういった者たちを納得させてやってくれ。ということなのだ。
正直、面倒である。




