第二百六十七話
途中経過を報告する部隊と言うものはいくつか存在する。
実動部隊の装備にカメラをとりつけるという方法はあるのだが、実際の映像も含めて、本人の報告と言うものは、状況を把握するために必要だ。
報告と言うのは状況を要約したものであり、一見映像だけでは分からない人も、ある程度状況を察することが出来る。
もちろん、映像だけでも十分理解できてしまうほど絶望的な場合もある。
今回、FTRにとって、該当するのはまさしくそれと言うことである。
要約された報告は、言ってしまえば『戦勝はゼロ』『捕らえられたもの達が多数』『戦車や召喚魔術などの装備は多数破損、または通用しない』というものだ。
絶望的だとかそう言うレベルをはるかに超えている。
フィクションにおいて悪が壊滅する場合というのはそういう場合がほとんどだろうが、ここまでひどいのはなかなかつらいだろう。
しかも映像の中にも映っているうえに、要約された報告にもあったことの中に、『敵はまだまだ余裕である』ということが含まれている。
ここまで来ると、成功すると確信していた老害たちの中には発狂する者も多数出てきた。
「ば、バカな。あれほどの装備に加え、神器持ちすら大量に投入したはずだ。なぜ、アイツらに通用しない!」
議長は咆える。
今回の一件、多額の予算に加えて、FTRの中でも才能があるメンバーを多数選出している。
最近は秀星の影響で人体実験が出来ていないとはいえ、何も人体実験だけが活動と言うわけではない。
ダンジョンに入って、普通の魔戦士と同じように稼いでいる下っ端は多いのだ。
最も、今回動かしたような才能のある人材と言うのは、その才能によって天狗になっているものも多かったのだが、最重要プロジェクトとして引っ張りだせた。といっても、彼らの上司を説得しただけである。
『ブランク・アームズ』に関していえば無償提供だったので、失ったところでマイナスにはならない。
しかし、才能のある若いもの達や、経験を積んだベテランがこのままでは根こそぎいなくなる。
ジュピター・スクール……いや、メイガスフロントには、今回襲撃させた程度の人数を収容するくらい容易にできるほどの大監獄がある。
確実に、『全員が帰ってこない』のだ。
そうなれば、このプロジェクトの責任者である自分は死に方すら選べないだろう。
この段階で、既に『このプロジェクトへの参加に賛同したか否か』で、これからFTR内部で生き残れるかが決まったようなものだ。
それを理解した参加者たちは滝のような汗を流しているし、参加しなかった者それは同じだ。
そもそも、今回のプロジェクトは散々欲張ったものである。
目の上のたんこぶである秀星に加えて、魔法社会を決める最高会議の五人を抹殺する。
成功すれば、あとは、その成果が全て上司たちに回るようにコントロールすれば、今以上の地位にも行ける。
だが、これほどの失態だ。
しかも、FTRの中では上位のものが過半数参加である。
才能や経験がある優秀な人材を五割以上一気に失う。
どう評価したとしても、明らかに組織としてはほぼ壊滅だ。
「だが、おかしいだろう。なぜあれほどの実力を持ちながら、魔法社会を『統治』する。『支配』でいいではないか!」
自分の失態の大きさ。
自分にかかる責任が抑えきれなくなった議長は、その責任を敵に求めはじめた。
今よりもっと上に駆け上がって、そして下のものを見下すことしか考えない議長に取って、『統治する存在が多数にとって都合が悪い』と言うことがどういうことなのかが分かるはずもない。
そんなもの、第三者が武器を与えるだけでクーデターだ。
上がどんなに強かろうと、その強さが末端まで及ぶことはないのだから、警察組織を超える武装があるだけで、クーデターの決行理由には十分なのである。
あとは支配層の数を減らしておいて力を落とせば、あとは単純に逃げればいい。
支配者は都心部にいるものだが、都市など、周りからものが入ってこなければ簡単につぶれるものである。
まあそんなことを議長が考える余裕がないことは事実である。
自室に入って物を漁り始めているところを見ると、逃げようとしているのはよくわかる。
まあもちろん。
本当にそれができるほど、『裏』と言う世界は『失態を犯した個人』に優しくはない。




