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第二百四十九話

「それにしても、あんなドラゴンまで送り込んでくるとは……FTRは失態の罰が重いと聞いたことがあるが、暇なのかあいつら」

「そういうな。技術そのものはしっかり進歩してるから」

「とはいえ……弱かったぞ」

「それは仮想敵が俺たちだからであって、普通に投入すれば勝てる場所は多いよ」

「そういうものか?」


 そういうものだ。


「仮想敵が強いだけならそうでもないんだが、研究職を多く抱えてると何をするかわからんからな」

「そうか?」

「頭のおかしい人が集まると『王道』だとか『定番』とか、そんな普通にならないからな」

「無視しただけで帰って行ったもんな」

「それはあのドラゴンの沽券にかかわるからやめておいたほうがいいぞ」


 秀星は止めた。

 もちろん、あれで本当に帰っていくとは思わなかったのだが、帰ってしまったのだから仕方がない。


「で、今日って何かあるっけ?」

「課題テストの日のようだ」


 基樹がスマホをみて確認しながら言った。


「新学期始まってから編入してきたのに課題テストやるの?」

「やるらしい」

「……まあ、別にいいけどさ」

「というわけで、行ってくる」


 基樹が歩いて行った。

 その時、秀星のスマホにメールが来た。


「アトムからか。珍しい」


 内容は『基樹君の試験をやってくれないかい?』といったものだった。


「……セフィア」

「はい」


 セフィア出現。


「この学校の試験官が見ておく必要があるポイントって知ってる?」

「秀星様に依頼するとなると戦闘試験なので、自然と出てくると思いますが」

「まあそれもそうか……教師足りるの?」

「そのために外部から呼んだりするのですよ」

「ほう……なるほど」


 言いたいことは分かった。


「ちなみに、試験官との戦闘試験があるのは一部の生徒だけのようですね」

「まあさすがに全員相手をするのは無理か」

「時間がさすがに足りません」

「ふーむ……どこまでやればいいのかね?」

「制限時間は三十分です」

「基樹。最初から本気で来るんじゃないのか?」

「そこは私もわかりません」

「そりゃそうだ」


 さてと……どこまでやるかな。


 ★


「……で、お前が出ることになったわけか」

「結局話がまとまらなかったから、俺がお前と戦って、実際にそれを評価するのはこの学校の教師ってことになったけどな」

「まあ、それはいいだろ」

「もちろん」


 秀星と基樹は試験会場に来ていた。


「で、俺はどこまでやればいいんだ?」


 基樹が聞いてきた。


「試験なんだ。満点以上だろうと満点だし、ご自由に」

「なら、それはそれなりにやらせてもらおうか」

「良い笑顔で言うな。負けず嫌い」


 その時、ブザーが鳴った。


「さて、三十分だ。かかってこい」

「ああ。行くぞ!」


 基樹の頭上に、青い炎の玉が出現する。


「なるほど」


 真の上級魔法だろう。


理解した(・・・・)のか?」

「ああ。お前の言う『完成』するとどうなるのか、それが分かっただけだ」


 炎の玉がこちらに向かってきた。

 秀星が手を前に出すと、障壁が発生。

 それだけで、炎の玉が反射して基樹のほうに向かう。


「チッ!」


 基樹は舌打ちすると、そのまま回避して青い熱線を飛ばしてきた。

 だが、それも同様に反射する。


「貫通しない……なら、これだ!」


 基樹は拳に青い炎を纏わせる。

 そして、そのまま突撃してきた。

 それに対して秀星は……白い炎を右手に纏わせる。


「何!?」


 激突する拳。

 いとも簡単に、秀星が押し勝った。

 そのまま吹っ飛んで、受け身をとって立ち上がる基樹。


「ど、どういうことだ?それ」

「多分心の奥ではわかっていると思うが、基樹がやったことの延長線上だ。上には上がある。基樹が考えている程度の限界を超える手段なんて、いくらでもあるんだ」

「なるほどな。なら、もっと見せてくれよ!」


 今度は、基樹が両腕に白い炎を纏わせる。


「それはそれで反則だといいたいがな……」


 秀星も白い炎を両腕に纏わせる。


「……なんだ。もう上はないのか?」

「だと思うなら視野が狭いと俺なら備考欄に書かせてもらうぞ」

「なら、見せてもらうぜ!」


 基樹は突撃してくる。

 それに対して秀星も構える。

 そして……少し、ビリッと禍々しい色の雷が走った。

 秀星が拳を振りかぶる。

 基樹は何かと感じ取ったのだろう。両腕を交差させた。

 秀星はあえて、そこに叩き込む。

 基樹は壁に激突した。


「おふっ!……なんだそれは」

「完成が『(しん)』で、それを超えると『(きわみ)』となる。別にこれには名前はないさ。付属技術としていじっただけだからな」

「いじった?」

「あえてここまでやった後で、原形をとどめる範囲で乱数をぶち込みまくるっていうのか?とにかく、そうするとこうなって、解析が困難になる。ただ、その乱数に指向を持たせておけば、すべての乱数が普通よりも強くなる」

「要するに、普通よりも高い威力になってたってことか」

「わかりやすく言えばな。ただ……さっき必要項目を見てきたが、もうすでに満点だぞ」

「何言ってんだ。途中で終わらせる権利は試験官にはないんだろ?」

「もちろん」

「なら、まだ続けるに決まってんだろ!」


 基樹が手を前に出すと、魔力が集まって、それは黄金の剣になった。


「……なるほど」


 秀星も手を前に出して、黄金の剣を作り出した。

 しかし、装飾に関していっても秀星のほうが多く、あふれているオーラもすさまじい。

 そしてそれに対して、基樹は本気で驚いていたようだった。


「どういうことだ……」

「ん?ああ、この剣を基樹はスキルで出したのか。知らんのか?神が与えようと、精霊が作り出そうと、魔法も超能力もスキルも、広義の上では全部一緒だ」

「……」


 苦い顔をする基樹。


「要するに、魔法もスキルも元は同じ。技術に差があるのなら、基樹にできて俺にできないことはない」

「なるほどな。ここまで来るといろいろとばかばかしくなってくるが……」

「あの時、俺に惨敗したお前が何を言う」

「それもそうだな。なら、続けるぞ!」


 激突する剣。

 一撃が重く、いとも簡単に試験会場を揺らし、そしてその衝撃は、ほかの試験会場にすらも響いていた。

 誰もが一度は剣を、魔法を止めて、秀星と基樹を見る。

 魅了し、恐怖を与え、震え上がらせ、差を見せる。

 しかし、括目していた。ということに関しては全員がそうだ。


 ただ、絶望はなかった。

 時折入る秀星の説明と、鮮やかな技術。


 それを聞いて、ほかの生徒たちは思うのだ。


『俺たちもできる』


『私たちもやりたい』


 『憧れ』だろう。

 頭から離れない『自分もできる』という感情は、人を魅了する。

 今、この場で聞いたものしか、この言葉を、技術を知らない。

 だから、それをできるようになりたい。


 人であれば誰もが持つ麻薬のようなそれは、時間いっぱいまで続いた。

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― 新着の感想 ―
白い炎(6500度)って、青い炎(10000度以上)より低温じゃありませんでしたっけ? (魔法的には分かりませんが・・・)
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