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第二百三十九話

 一時間目が終了した時だった。


「この学校に編入生が来たみたいだ」

「時期おかしくね?」


 なんで二学期になって一週間しないうちに来るのだろうか。はっきり言って秀星はさっぱり意味が分からない。

 羽計からその話を聞いている秀星だが、はっきり言って意味不明である。


「しかも、編入試験の成績は断トツのようだな。ジュピター・スクールが獲得することが出来たことも奇跡だと聞いたぞ」

「最近この学校物騒なのによく来るなぁ……」


 褒めればいいのか呆れたらいいのかわからない秀星。


「……ところで、この学校って編入生って珍しいのか?」

「編入生も転校生も普通はいないな」

「どんな理由だ?」

「まず、メイガスフロントの学校に入学できるレベルであっても、普通科高校に通っているものは多い」

「経済的な感じか」

「そうだ。この学校、入学金もそうだが、その他にもいろいろと出費がかさむからな。一応ダンジョンに潜って稼ぐことはできるが、高ランクになるというのならまだしも、低ランクだと潜って得られるものは変わって来る。しかも、この学校の試験は言うほど努力を評価しない主義でな」

「ほう……要するに才能・成果主義ってことか」

「そうだ」

「まあ、そこは別にいいだろ」

「……何か思わないのか?」

「いや別に」


 秀星としては、別に才能や成果しか重視しないルールでも構わない。

 強く、そして教えることにもたけているものは少ない。

 例外としてはしっかりとマニュアル化しているアメリカの『イリーガル・ドラゴン』くらいだろう。

 それに、これほど大きな学校でランクわけがあるのは確かだが、別に学校のルールとしては低ランクを明確に拒絶するというルールはない。

 さらに言えば、教師の数が不足しているうえに組織(うえ)が学校に求める生徒は限られているのだから、どうしても成果を求めるのは必然だ。

 教育機関の方が余裕がないのに、学生の意見が全て届くわけがない。


「俺が言うのは、その才能に胡坐をかいて成長しないやつがだめだっていってるんだ。才能があって、しっかり努力してるって言うのなら、そりゃ傲慢になるくらいの権利はあるだろ。慢心したらそこで終わりだけどな」


 第一、神器持ちからすれば鍛錬を積んでいない才能などただの個性。

 だからこそ、努力せずに威張っているのならそれはどうなんだと思うわけである。


「で、金銭的な理由で入ってこないわけか」

「そうだ」

「だが、何らかの高収入が舞い込んでくることだってあるぞ?」


 よく言う『主人公』というのは、それまでの自分の人生に対して、脈絡も何もなく『大きな何か』に遭遇するものだ。

 そして、必要な分の才能を持っている。

 だからこそ、壮大な物語の中に入ることが出来るのだ。

 ……まあ、異世界転生に関していえば、作品が多すぎて宝くじで一等が当たるよりも確率が高そうだが。


「メイガスフロントにはよくなことを考えている奴が多いからな」

「世知辛い……」


 要するに、搾り取られて終わるということか。

 物語のように、難易度が低い方から敵が来るとは限らないということだろう。


「で、経済的な部分で無理な奴は本当に無理と言うことだな」

「昔はそうではなかったがな」

「そうなのか?」

「八つある学校。昔はすべて国営だったが、今では国営なのは一つだけだ」


 秀星は察した。


「なるほど、で、呼ばれることもほとんどないわけか」

「基本的に金があって実力もある。と言う者達が集まっているからな。努力を全く考慮しないわけはないが、直接評価に影響することは少ないということだ」

「よくわかった。それほど実力があって、経済力もある……か。ほとんどの生徒はもともと勝ち組ってことになる気がする」

「地元では、と言う条件付きだがな」

「悲しい……」


 とても切ない問題である。


「それにしても、そんな転校生が二人もねぇ……」


 秀星がそうつぶやいた時、ドアが開いた。

 全員がそっちを向いた。

 いたのは女子生徒である。

 黒い髪に白いメッシュが入ったショートボブで、Dくらいの胸をした女子生徒だ。

 とてつもないほど『妹雰囲気』が出ている女子生徒である。

 女子生徒はきょろきょろと見まわした後、秀星の方を向いてそのまま走ってきた。

 そして、こんなことを言った。


「初めまして。お兄ちゃん!」

「……え?」

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