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第二百三十五話

 秀星が大暴れをして、ジュピター・スクールの運営陣が極秘裏に会議をしている中。

 ジュピター・スクールのそばにあるタワーの最上階でも、人が集まっていた。

 むしろ明るい雰囲気がある調度品が並べられており、カフェテラスと呼ばれても不思議ではない空間。

 しかし、元から存在する機能に加えて、集まっている中の誰かが使用している技術によって、機密性は高まっている。


「さて、どうやら彼は盛大にやらかしたようだね」


 その中の一つに座るのは、パーティー『ドリーミィ・フロント』リーダー。頤核(おとがいアトム)だった。

 彼が来ることが決まったのはギリギリだったのか、リクルートスーツである。


「アトム。こうなることが予測できていたのかい?」


 楽しそうに微笑むアトムに目を向けるのは、スーツ姿を男性。

 アトムと雰囲気は似ているが、彼よりも少し年上で、着ている服も豪華である。

 魔法社会最大の財閥『新川グループ』の総帥、新川修(しんかわおさむ)

 アトムという存在が『才能』であるとするなら、修という存在は『強運』である。

 魔法社会に存在するすべての財の内、六割は彼が持っているといわれる男。

 要するに、財力で彼に勝てるものはこの世界にはいないということになる。

 さらに言えば、新川グループは表の社会でも大量の財力を持っているほどで、様々な債権を彼が買い支えているほどだ。


「彼はいろいろな意味で規格外なので」

「そうみたいですね。さすが、朝森さんの息子さんです」


 微笑んでいるのは、着物の生徒だ。

 ジュピター・スクール生徒会長、黒瀬聡子(くろせさとこ)

 常に微笑んでいるからなのか糸目であり、腹黒いのか純粋なのかわかりにくい。

 とはいえ、この部屋にいるものが彼女を評価するとき、その多くは『オカン』となる。

 水色の着物で身を包んでいるが、胸もお尻も大きく、微笑んでいる顔は本当に母親のようだ。

 あと、なぜか来夏の娘である沙耶を胸に抱いている。

 本当の母親のそばにいるよりもぐっすり寝ていた。


「……君の娘ではないよな」

「もちろん。ですが、私はみんなのお母さんですからね~」


 ぎゅーっと沙耶を抱きしめる聡子。

 このままでは本当に愛情が移動するような気がしなくもないが、抱擁という意味で来夏は強烈にやばい上に汗臭いので、聡子のことが頭に残らないのだ。


「フン!あの家出娘の娘など見たくもないわ」


 不機嫌そうな顔でそういうのは、中年男性だ。

 来夏の父親だということを予測できる赤い髪の男性で、不機嫌そうな顔を隠そうともしない。

 日本の魔法社会の名家筆頭、諸星家の当主、諸星聡明(もろぼしそうめい)

 聡子に関しては何も思っていないようだが、沙耶に関しては嫌悪感があるようだ。


「フフフ。生まれた子供に罪はありませんよ。こんなにかわいらしいではありませんか」


 かわいらしいのは赤ん坊なのでそりゃそうなのだが、生まれたてのくせに父親のメンタルをゴリゴリ削っているのだからいまいち納得できない。


「……話をもどそうか。朝森秀星を呼び、その間に議題を解決する。というのが今回の趣旨だったな」


 初老の男性だ。

 すでに髪は真っ白になっているが、力強い目をしている。

 厳格な雰囲気を持っているが、キャラの濃そうなメンバーの私情を気にしていないようなので、器が広いほうなのだろう。変態慣れしているともいえるが。

 日本魔法社会意思決定会議議長、会堂蓮(かいどうれん)


「ただ、このままでは議題が増えそうだが」


 会堂の言葉に全員が苦笑する。

 彼らは魔法社会の中でも重鎮だ。


 日本魔法社会意思決定会議議長。

 日本政府直下特殊精鋭チーム『ドリーミィ・フロント』リーダー。

 日本最高学府、ジュピター・スクール生徒会長。

 日本魔法社会名家筆頭。

 日本魔法社会最大財閥会長。


 彼ら五人の中で、過半数の同意があれば、日本における魔法社会のシステムが変わるといわれるほど重要なものだ。

 当然、意思決定会議長は東京の本部に議員が待っているし、ドリーミィ・フロントはそもそも会議に出席するようなチームではないし、ジュピター・スクール生徒会長はもちろん生徒会という部下を持っている。

 名家筆頭ならば、当然、彼が選んだ名家による議会が存在するし、財閥会長ならもちろん社員を抱えている。

 それらが一度に集まることは一年に一度で、それも数時間の場合もあり、通常は暗号メールでやり取りする。

 だが、今回の場合は少し違った。


「朝森秀星。確かに実力は確かだがかなり爆弾を抱えているな」

「技術一つを見せただけで、そしてその情報が広まるだけで勢力図がひっくり返る。前々から思っていたけど、すさまじいね」


 修とアトムはまず、強さについていろいろ思うことがあった。


「ですが、納得できるほどですね。どのような神器を持っているのでしょう」

「知らんな。ただ、それをあのじゃじゃ馬が制御できているとは思えん」

「だからと言って下手に刺激しても仕方がないからな」


 神器という存在を知り、中には所持している彼らにとっては、『触らぬ神に祟りなし』とはよく言ったものなのだ。


「ただ、あれほど強敵だと、この学校の首脳陣では手におえないだろう。私からも少しくぎを刺しておけば問題はない」


 アトムがそういうので、一応ほかの面々は納得しておくことにした。


「制御できる方法があるのですか?」

「まあそもそも、彼は自分の影響力が分かったうえで行動しているからね」


 技術一つでひっくり返されるのはさすがに予想以上だが、それだけである。

 彼だって敵に回したくない人間はいるだろうから、それを利用するだけだ。


「なら、アトムにそこは任せよう。本来の議題に戻ろうか」


 会堂がそういうと、全員の表情が真剣なものになる。

 秀星のくだりは、ほぼ遊び。

 ここからはそうではないのだ。

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