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第二百三十三話

 秀星の影響で『才能で決まる場所』から『努力で決まる場所』に変わった。

 変わってしまった。とも言えるが、影響は大きいのだ。


「かなり、雰囲気が変わったような気がします」


 三日目の夜。

 秀星が使っている学生寮の部屋に、秀星、雫、風香、羽計、エイミーが集まっていた。

 ただ、一人部屋なので五人も集まると若干狭く感じるのだが、新しく部屋を借りるのも面倒なので我慢である。


「ああ。やはり、努力すれば成果が出ると思うことが出来れば、人は頑張れるということだろう」


 エイミーが呟いた雰囲気の違い。

 それに対して、羽計は若干嬉しそうに言う。


「ふーむ……でも、秀星君のことだし、それだけのことであの魔法を使ったとは思えないね」

「雫は俺をどんな奴だと思ってるんだ」

「なら、実際はどうなの?」


 風香がいたずらっ子のような表情で聞いて来る。

 秀星は溜息を吐いた。


「ま、実際、それだけ考えていたわけじゃないさ」

「実際にやってみると分かるんだよね。確かにあの時、秀星君が使っていたのは基礎魔法を完成させたものだった。でもちょっと違う。例えばファイア・ボールなら、あくまでも『ファイア・ボール』を完成させたものであって、『基礎魔法』を完成させたものじゃないってことだね」


 雫は分かったようだ。

 一般教養に関してはからっきしだが、こう言う知恵的な部分で言うと若干他より多い。


「あの完成されたファイア・ボール。私はまだ使えないよ?でも練習していると、だんだん無駄が無くなっていくのが分かる。でも、あれを応用して他の魔法の無駄を落とすって言うことができないんだよね」


 お手上げとばかりに首を振る雫。

 そしてそれは、全員がそうだったようだ。


「その通りだ。あくまでもファイア・ボールはファイア・ボールだからな。そもそも、ファイア・ボールが使いやすいのは、球体って言う形だからだ。形を設定するとき、直方体ならそれぞれの辺の長さを設定する必要があるが、球体なら半径か直径か、そのどちらかを設定しておくだけで解決できる」

「だから情報量が少なくて、演算量が減るから簡単に使えるってことだね」

「そうだ。で、魔法は魔力と魔法陣がそろえば発動するが、魔力の量の方はともかく、魔方陣の方は別に完璧である必要はない」

「何で完璧でなくても使えるのは今は聞かないけど、その『完璧ではないから』余った部分を使ってアレンジしているのが、みんなが上級魔法って呼んでるものってことだね」


 雫が理解速度が速い。

 さっきから秀星の話に即座に答えている。


「ふむ……要するに、基礎魔法を極めることはできても、他の魔法が強化されることはあっても、完成させることはできないということか」

「でも、完成された魔法の方が圧倒的に強いのは秀星君の実演で分かってるから、完成された魔法をみんな身に付けようと躍起になってる」


 羽計と風香も、なんとなく分かって来たようだ。


「普段から魔法をほぼ自動で使っている人にはつらいでしょうね……」

「簡単に言えば『慣れを矯正する』ことに似ているな」


 ほぼ自動で使っているということは要するに、無意識の部分の演算領域でほとんど魔法を使っているということ。

 いきなりそれを手動に切り替えていくのは難しい。


「それにしても、基礎魔法を完成させたとしても、他に活かせる部分は少ない。となれば、才能がある者たちがそれらの上級魔法を完成させようとしても、うまくいかないのは当然か」


 要するに。


「これからは、基礎魔法の撃ち合いになる。そうなると、これからの戦いは、その基礎魔法をどれだけ活かせるかと言うものになる」

「単純に、強い魔法を使えば勝てていた人にはツライね……」


 もっとも、そこまで考えることができるものはそれほど多いとは思えない。

 とはいえ、上のものにとっては無視できないものになる。


「たぶん、どこかのタイミングで『基礎魔法の使用禁止』なんてものが出て来るだろうな」


 秀星はそう思った。

 人と言うのは、自分がルールを決めることができる場合、自分に不都合なものを禁止にしたがるのだ。その上で自分が使うというものである。


「さて、荒れるぞこれから」


 わざわざ荒れさせた秀星は、楽しそうに笑った。

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