第二百三十二話
槙野良樹がすごく丸くなったが、沖野宮高校の生徒からすれば『……テンプレ?』みたいな感じである。
だんだんいろいろな部分がバカらしくなってきたということだ。
沖野宮高校の生徒達に関していえば、剣の精鋭のメンバーは明らかにやばいし、秀星や宗一郎などを自分を比べてしまうと、『なんかこう……身の丈にあったことをやって行こう』と言う気持ちになれるものである。
技術的にすごいものを見て、目に見える数字を叩きだした場合、人は『憧れ』を持つものだ。
『自分もこんなことをやってみたい』と思うことが出来て、さらに、技術的に解明されていて努力すればできると分かっているのなら尚更である。
その技術が、今までの自分の常識を覆すというインパクトを与える。
自分に絶対の自信がある人間と言うのはどこにでも一定数いるものだが、それでも、意識しないようにしようとするということは、言いかえるなら影響されていることと同義である。
人間、興味がないものをいちいち思いだしたりはしないからだ。
秀星は良樹との決闘で、基礎魔法たちの『真』を見せた。
誰も彼もが、『基礎魔法だから既に極めた』と思っていたそれは、簡単に覆されていた。
簡単なことと言うのは確かに誰にでもできる。これは本当だ。
ある程度教えられて、見て、やってみて、そこから練習し始めるもの。
なので、ある程度作業そのものに慣れてしまうと伸びにくいのだ。
人間と言うのは次に進みたがるものだ。
誰もが持っている程度の力なら、すぐに手に入れたがるもの。
だからこそ、今やっていることを『合格』にしたがる。
もちろん、後は慣れるだけ、と言うラインもしっかり存在するので、あまり突き詰めても仕方がないのだが、これは教育者側が気を付けることである。
さて、『極める』だとか『合格』だとか、そう言った言葉で彼らは自分の駒を進める訳だが、基礎ができていないと応用も効かないというのはよくあること。
当然、きっちりとやっているわけではないのだから、そうなるのは当然。
基礎魔法を極める。
それだけで、秀星は良樹に勝ってしまった。
今まで、才能の差だと思っていたそれ。
だが、やっているのは基礎魔法だ。
あとは、限界まで挑めばいい。
秀星は、真の基礎魔法で、良樹の強大な魔法を完璧に封殺した。
その段階まで行けるかどうかはともかく、やってみたいと思うのは事実だ。
さらに言えば、真の基礎魔法を彼らは実際に見た。
青い炎。不純物のない水。隕石のような石。
衝撃を与えた。
自分もやりたいと思わせるほど、大きなものだった。
アップロードされた決闘の動画は、二日目にして既に閲覧回数が百万回を超えている。
それほどのものだった。
ただし、秀星からすればそうでもなかった。
魔力と言うものが分かっている秀星にとって、才能など所詮、個性の範囲である。
自分は、誰よりも魔力のことを知っている。
そこまでの領域に達すると、『才能で決まる世界』と『努力で決まる世界』に変えることは可能だ。
秀星はただ、それをやっただけである。




