第二百三十一話
秀星にとって、良樹との決闘はあくまでも遊びである。
神器を十個持っている秀星。
神器を持っていると、最低でも生成、変換される魔力は十倍に膨れ上がる。
それを十個もっていて、特殊な技術を用いることによって効果は重複する。
単純計算で、最低でも常人の百億倍の魔力を持っているのだ。
塵も積もれば山となるが、別に積もらせるのは塵でなくてもいい。
山だって積もれば山だろう。花束を何束集めようと、纏めてしまえば一束になる。
そんなわけで、『持久力』で秀星に勝てるとなれば、秀星がもっているような下位神の神器ではなく、最低でも百倍になる上位神、千倍になる最高神の神器が必要だ。
ただし、普通に持っていても倍率は重複せず、単体で機能する。
要するに、秀星がその技術を使っていないときは十倍が十個で百倍くらい。ということだ。それでも多いが。
さらに言えば、秀星は研究を重ねた結果、自分には上位神、及び最高神の神器を重複させて倍率に巻き込むことができないと判断している。
明美が持っていたような『神器無効化』すら可能な神器を簡単に手放すのはそれが理由である。
あと、秀星は魔力増加効率を上昇させる方法を知っているので、実際には百億倍よりはまだ上だ。
秀星のアルテマセンスをフル活用しても測定できない量なので、秀星は多く見積もらなければならない状況を除いて、全て百億倍で計算する。
多くのフィクションにおいて、魔力の量、そして魔力を扱って魔法を使う技術というのは誰もが認める才能として扱われることがおおい。
そして、秀星はその数値が呆れるほど高い。
確実に言えるのは、アンケートを取る場合のデータとしては呆れるほど不適切。ということである。
★
「……なあ。良樹。なんでこの学校。魔力量……いや、なんでもいいが、多くのランク分けの基準に『平均値』を使っているんだ?」
「ん?どういう事だ?」
闘争心を司るメンタルを一度バラバラにされた良樹だが、秀星だってあれだけやったし、良樹もちゃんと謝ったので、すでに遺恨は残らない。
なので、共同で使う食堂に行けば、話すときはある。
まあ、普段はランクが上の高級学食にいたようだが、二週間しかいない間は良樹も話しに来るのだ。
まだ二日目なので時間はある。
それはいいが、秀星にも疑問はあるのだ。
「どういう事だ?」
「この島ってダンジョンを保有してるだろ?生徒たちは保有ランクによって行ける階層が異なるんだから、午後から手に入る収入に大きく影響するわけだ」
「そこはわかる」
「そのランクを決めているシステムが気になって調べたんだが、なんで平均値なんだ?」
「ふむ……その方法で測定した結果、大した失敗にはつながらなかったのと、このメイガスフロントそのものが、急遽作られたものだと聞いたことがある」
「要するに付け焼き刃ってことか……測定機器が発達しすぎた弊害だな……」
秀星は観測機がたくさんおいてある実験施設を思い出した。
神器が絡んでいるからなのか、大量に並んでいるにしてはどれも高性能だった。
「平均値……それも、試験のたびに計測されて平均値が求められるのか」
「なにか悪いことがあるのか?」
「ダンジョンはクリアするのならともかく、素材を集めるっていうのならコツさえあればいい……んだが、この学校って基本的にゴリ押し的な部分があるだろ?」
「勝てる火力があれば負けない。と理事長室の掛け軸にかかれていたな」
頭が悪そう……。
「ただ、人数が多すぎて、計測機器に頼らなければ人の手では無理だという意見も多い」
「……」
秀星がこのとき考えていたのは、『【ハイエスト・ブレイン】を持ってるアースーがいれば楽なんだけどな』ということだったが、流石にいないものねだりなのでやめておいた。
「……個別に技能を見る時間がないから、『判断に必要不可欠な数値』を割り出すことに特化した。ということだな」
「実際、観測機器から得られたデータをまとめるだけで時間が精一杯だ。メイガスフロントの学生の能力情報となると、機密性が高い」
「データをまとめてもらうためのバイトすら呼べないってことか……」
「そうなる」
「事情はわかった。で、なんで平均値なんだろうな」
秀星が気になっているのは、『試験でどれほどの数値を出せるのか』というものを、数値ごとで範囲分けすることでランクを決めるのではなく、平均値を基準にして割り出していることである。
「?……平均値は、すべてのデータを参照した上で求めるものだろう。特徴を捉える上では使えるものだと思うのだが……」
「平均値の弱点は知ってるか?」
「それはもちろん、大きく違う数値が混ざると影響されて……そういうことか」
大きく違う数値。というものを良樹も把握したようだ。
「一定数いるからな」
特に神器持ちがいるとだめだ。
最低でも十倍ということは、文字通り『桁が違う』ということである。
どうしろというのだ。
「中央値を使うと普通が求められるということか」
「人数が多いんだから最頻値でいいと思うが……」
いずれにしても、イレギュラーが多そうな学校だ。
「そのあたりも考慮すれば、もうちょっとこの島全体の素材供給が変わると思う」
「ふむ、使うデータの違いか……」
良樹がうなりだした。
……まあ、そういうものである。
ついでにこんなことを話しているのは、秀星が良樹とダンジョンでばったり出くわしたからである。




