第二百二十一話
拠点を潰した後、エインズワース王国は本当に平和と言うか、いつも通りになった。
やらなければならないことがほとんどやったということになる。
というか……もうそろそろ夏休みが終わるからこれ以上延びるのは勘弁してほしい。
一応、生徒会長である宗一郎に話せば休みを延長させてもらえるかもしれないが、だからと言ってそれで解決させるのは無理があるだろう。
アースーは政務を通常通りできるようになるまで落ち着かせたし、魔石鉱山も、魔石を管理する部分も特に問題はない。
『戦闘員』としての秀星の役目は終わりだ。
「もうそろそろ秀星たちは帰る頃だね」
「ていうか夏休みの時間制限的にやばいんだが?」
「それもそうだね……宿題やったの?」
「夏休みが始まる前に終わらせた」
「最強だね」
「だろ?」
別にセフィアに押し付けてもよかったのだが、自由研究だとか人権ポスターだとか、ちょっと任せておくとどうなるかよくわからないものも多かったので、結局自分で全部やった。
一時間くらいで。
「お姉様も日本に行くのですか?」
「そうですね。一時的にと言うことでこの国に戻ってきましたから」
アリアナの確認にアレシアは答える。
別に、アレシアはこの国を無理矢理に離れようと思っているわけではない。
アレシアにはアレシアの『約束』がある。それだけのことだ。
「まあ、こうなることは分かってたし、僕としては問題はないかな」
「……なあ、思ったんだが、アレシアってこの国の政務にかかわれるけど、あれって王女だからだよな」
「そうですね」
「王女としていろいろなところに顔を出していたが、アレシアが日本に戻るってことはアリアナが代わりに外に出るってことか?」
「いや、たぶんそれはないと思うよ。魔法派閥の中には、自己主張の激しい人がいるからね。多分そっちの人達が出たがるんじゃないかな」
「そうですね。まだまだ私の出番はないです」
めちゃくちゃ笑顔なんだが。
まだまだ遊んでいたいお年頃なのだろう。
とはいえ、秀星も十四歳のころはそんな感じだったので別にいいのだが。
「……ならいいけど」
秀星としてはそう言うしかない。
「まあ、この国のことは僕が引っ張っていくよ。だって王様だからね」
フフンと胸を張るアースー。
正直、何も感じない。
(前の王が死んでから約一か月で、何も問題がないところまで戻るか……魔法と密接にかかわっていて、これは何とも珍しいな。異世界とは違うねぇ)
異世界だと、次の王が決まるのは早いが、全てが元に戻るまでにもっと時間がかかる。
地球だから、というと違うと思うので、これはエインズワース王国の空気の問題だろう。
(まあ、アーロンもいるし、何かあっても問題はないだろうな)
いざという時の優先順位として一番高いところにエインズワース王国はない。
だが、特別低いところにもいない。
気にかけることはするし、そもそも転移で即座に来れる。
帰るといっても、地球ならどこでも近いのと同じだ。
だから、感動だとか、そういう感情はない。
世界は広いが、地球は広くない。
(戦闘員としての役目は終わり。さて……これからどうなるかな)
日本に戻っても、たぶんまた問題がありそうだ。
それはもうそれで諦めているのでいいとする。
ただ、秀星からすればそれらは本気になるほどのものではなく、片手間の気持ちで、全てが終わる。




