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第二百十一話

 バカなことを考えるものはいくらでもいる。とはよく言ったもので、王都を離れて拠点制圧に出ているアースーがいない間にいろいろと引っ掻き回してやろうと考えているものは多い。

 魔法派閥では、最近はおとなしかったがいまだに考えているものが多いのだ。

 もちろん、アースーがいないからといって警備任務に当たっている人間の連携が変わるわけではなく、訓練通りにこなして普通に捕まえている。


 ……もっとも、バカなことを考える人間がいない方がいいのだが、当然ながらそんな優しい状況ではないし、少なくできてもゼロにはできない。


「よし、ここにこいつを仕掛けて、あとで爆破しちまえば……」


 路地裏と言うのは何かをたくらみやすいものだが、警察と言えどその全てを回り切れるほど少なくはない。

 結果的に取りこぼしができるのは必然であり、だからこそ、襲撃を考えている人間がいると被害が出る。

 そして、それを守るために動いている人間と言うのはいるのだ。

 魔法派閥とか超能力派閥とかそう言うものではなく、純粋に犯罪組織だって動いている。

 現在魔獣島に行っているアースーたちが殲滅中の拠点にいるもの達が撤退していない。拠点が近くにあればほぼ攻め放題なのはわかり切っている。


 だからこそ、上に立つものはそれ相応の人間を動かすために考えているのだ。


「フフフ。貴様の悪事はそこまでだ!」


 別に君ではないけどね。シュラウド君。


「……ガキが何言ってやがる」


 アースーはもちろん、ジークフリード、アレシア、アリアナたちは王族の中でも有名どころである。

 実は他にもいたりするのだがそれは置いておこう。

 ただ、それ以外の王族達となると若干影が薄い。

 秀才と言える才能はあるが、それは英才教育ゆえであり、特別何か突出しているわけではない。

 そもそも、熱心に学んでいないものも一定数いる。

 シュラウドもその一定数の一人。

 はっきり言って、知られていない場合もあるし忘れられている場合もある。

 とはいえ、王族に対して特別、何かを調べようと考えてる人間は少ないので仕方のないことだが。


「フン!この国で悪事を働こうというのなら、この僕を倒してからにするがいい」


 それは君を倒せば悪事を働いていいということになるのだが。


「ハッ!正義気取りの坊ちゃんか。痛い目にあってもらうぜ」


 少なくとも、シュラウドが着ているものは上質なものだ。

 下手に自己顕示欲が高いものは仕草がそれなりに適当だが服は妥協しない。


「ならば行くぞ。『ダーク・ウイング・バースト』!」


 魔力が背中に集まったかと思いきや、それは突如翼に変わる。

 ……そして、次の瞬間に消えた。


「え?」

「ん?」


 シュラウドもよく分かっていないようだ。

 失敗か?


「ば、バカな……『ダーク・ウイング・バースト』!」


 変わらない。

 背中に魔力が集まるのだが、それは簡単に霧散する。


「ええい!どうなっている!」

「……『パラライズ・ショット』」

「ギイヤアアアアアアア!」


 襲撃者が使った麻痺魔法でシュラウドは気絶してしまった。


「……何だったんだ一体、まあ、コイツでもとらえておけば人質にして身代金をふんだくれるだろ」


 一応王子なのでそれは可能だと思われる。

 だが、この男を邪魔するのはシュラウドだけではなかった。


「……すまないが、仕切り直しと言うか、第二ラウンドを申請しよう」


 襲撃者が視線を向けると、そこにいたのは鍛えられた肉体を誇るナイスミドルだ。

 ……別にもったいぶっても仕方がないので言わせてもらえばジークフリードである。


「あ?誰だテメェ」

「君たちを倒して颯爽と消えるものに名前など不要。というわけで、『パラライズ』」


 派手な部分は何一つなく、それでいて敵を一撃で沈めることができるほどの威力。

 実用性という言葉が好きそうなものが使うであろう魔法だ。


「はぁ、一時は『轟雷の騎士』などと言われた私も、今ではただのおっさんか」


 認知度の低下というものをしみじみと感じるジークフリードだった。

 ……そもそもの話をすれば、彼は痩せてからまだ外で活動していないので、若い連中からすれば分かるはずもないのだが、どこか抜けているジークフリードがそれに気が付くことはなかった。

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